見出し画像

愛する技術|愛されたい心を越える

人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。


[1] PROLOGUE|導入

テーマ概要

愛とは人類にとって永遠の命題であろう。
物語、歌、哲学、TV番組など、あらゆる場所で、そのたびに形を変えながら語られてきた。
現代では、恋愛のハウツー本といったものさえ存在する。

我々はこの世に生を受けてから、いつの間にか愛について考えるようになり、そして答えのないその命題に悩まされ続ける。

そんな中、近代においてフロムは、一つの精神性の形を提示した。
それは仏教にも似ており、哲学にも通じる、心の在り方である。

SNSの世界が一気に社会を狭くしたように、我々は今や、世界中の人々と瞬時につながり、容易に怒りが発生する環境の中に生きている。そのような社会を、これからも人類は生きていかなければならない。

だからこそ今回、その「愛」の精神性に迫っていく。

参考資料

愛するということ(原題 The art of loving)、エーリッヒ・フロム、紀伊國屋書店

[2] CORE|本編

思考回路 - 図解ツール

こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

愛する技術 図解

図の解説 - 紙芝居形式

図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全16枚


人はみな、ナルシシズムを持っている。自分を特別な存在だと感じたい心だ。それは利己的な心を生み出し、利己心をもとにした自己犠牲でさえ、自分に奉仕されてほしいという欲求へと変わる。こうして、人は他者に求める心を作り上げていく。

1/16

ナルシシズムは視野を狭くする。自分や周囲の出来事を表面的にしか見られなくなり、その表面ですら正しく捉えられなくなる。その結果、自分が勝手に描いたイメージを現実だと信じ込んでしまう。

2/16

自分が作り上げた屈折した幻影と釣り合うように、人は多くを求めてしまう。それが等価交換のように感じられ、心が満たされるからだ。その結果、自分にも他者にも、贔屓したり、依存したり、ひどくなると抑圧することさえ起こる。他者を自分の思い通りにしようと求めるようになる。

3/16

そして、その偽りの均衡が公平感を生み出し、心を一時的に静める。その静けさが、次のナルシシズムを再び生み出していく。

4/16

人はみな、この心の均衡を求める流れに、簡単に飲み込まれてしまう。

5/16

求める心は、神や仏に対しても、与えられることだけを期待する姿勢に変えてしまう。母性的なやさしさがほしい、父性的な安心感がほしいと、常に外側に満足を求め続けてしまう。

6/16

では、愛とは何だろうか。パートナーや家族に向けて与えるものだけなのだろうか。

7/16

愛することができるのであれば、その対象はパートナーや家族に限られないはずだ。自分自身はもちろん、仲間、社会、人類全体へと愛を向けることができる。

8/16

愛とは、対象に配慮できること、対象の思いに応答できること、そして対象の存在そのものを尊重し、肯定できることだとも言える。

9/16

それは、対象を深く知ることができなければ成し得ない。表面的な理解ではなく、その背後や奥にある感情や背景まで汲み取る視点が必要になる。

10/16

そして何よりも重要なのは、自分を信頼できることだ。自分を信頼できるからこそ他者を信頼でき、自分の心が満たされることで、他者に分け与えられる余剰が生まれる。豊かな人とは、多くを持つ人ではなく、誰かに分け与えられる人である。

11/16

そのためには、自分が積み重ねてきた人生経験、観察力、思考力、判断力が必要になる。それらが自分への信頼を育て、物事を知りたい、探究したいという気持ちを生み、メタ認知を促していく。

12/16

さらに、日々自分や周囲を意識し、修練を積み重ねていかなければならない。自制する心、相手と自分に集中する心、その集中を支える忍耐力を、日常の中で磨き続ける必要がある。

13/16

このように、愛することは技術である。そしてその技術は、人生をかけて磨き続けるものなのかもしれない。

14/16

愛することを理解し、実行しようとする意識が昇華されたとき、神や仏は、ただ欲する対象ではなくなる。神や仏、自分、周囲、すべてが世界の一員であると認識できるようになり、それは神や仏が象徴する真理や愛、正義と自分を重ね合わせ、常にそれらを目指そうとする自分を形作る。

15/16

以上のように、人はすぐに求める心へと流されてしまう。しかし、その心の存在を意識しながらも、他者へ与える心を探究し続けることこそが、人生を豊かにするのかもしれない。

16/16

ここまでお読みいただきありがとうございました。

図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「愛」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。

[3] INSIGHT|考察

図解をまとめての感想

愛を真面目に考える。そんなことを、これまでしてきただろうか。
思春期になり、誰かを好きになり、誰かと付き合い、別れ、大人になり、誰かと結婚する。子を持ち、老いていく。

愛の物語や映画に触れ、涙する。そこに描かれているのは愛の話である。男と女の絆、親子の絆。それらを愛と呼ぶのだろう。

しかし「愛する」とは何か。それは「自己犠牲」や「相手を大切にする」だけではない。人生をかけて考え続けたい命題だと思う。

優しくすること、思いやること。それが「特定の人だけ」に向けられている場合、自分が知らない誰かに対して、あまりにも邪険に、攻撃的になってしまう人もいる。その人は「愛すること」がそもそもできていないとも言えるのではないか。今回の書籍は、そう語っている。特定の人にだけ優しいという態度は、「贔屓している」だけであり、「愛すること」からは逸脱している。

SNSで、知らない人に激しい感情を乗せた言葉を投げ合ってしまう現代。子どもたちは幼いころからスマホに触れ、YouTubeやゲームに没頭し、他者との関係ではなく、自分だけへと視線が近視眼的になっていく時代でもある。

だからこそ、愛を真面目に議論する場があってもいいと思った。

そして、思春期の子どもたちこそ「愛する」ということを真面目に語り合う必要があるのではないか。娘には、そうした機会を将来持ってほしい。そう思わせてくれる一冊と出会えた。

[4] NAVIGATION|関連情報

過去の図解

フロムの「悪について」の図解


いいなと思ったら応援しよう!

図解の本棚 | Systems Visualism もしお気持ちをいただけるなら、図解ツールを広める活動に使わせていただきます。