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リベラルと保守|分断社会を読み解く6つの価値観

人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。 


[1] PROLOGUE|導入

注:本記事はイデオロギーに関する内容を扱いますが、いずれかの立場を支持・推奨する政治的意図はありません。参考とした書籍および本稿の内容は、イデオロギーの背後にある「道徳心」や「価値観の構造」を観察的・心理学的に捉えることを目的としています。


テーマ概要

20世紀の100年、21世紀の四半世紀、人類はさまざまな主義・思想を経て社会を築いてきました。資本主義の拡大、社会主義体制の終焉、北欧に見られる福祉国家の試みなど、異なるイデオロギーがそれぞれの時代に応じて採用されてきましたが、どれにも課題や限界があることが浮き彫りになってきました。これらの歴史を振り返ると、絶対的な「正解」は存在しないのだと感じさせられます。

近年では、世界各地でいわゆる「右傾化」の傾向が指摘されています。アメリカではトランプ大統領の再選や、保護主義的な政策が注目され、他の国々でも同様の動きが見られます。

そうした政治的傾向以上に懸念されるのは、社会全体が「対立の構図」へと傾きつつある点です。特にインターネットの匿名的な空間では、相手の顔が見えないがゆえに、一方的な主張が強まり、歩み寄りが難しくなっています。しかし、イデオロギーにおいても「絶対的な正しさ」は存在しないという前提に立てば、対立を乗り越える糸口は結局、「違いを理解すること」なのではないでしょうか。

今回参考にした書籍では、心理学や道徳心理学の視点から、人間の価値観の背景にある感情や直観を6つの軸として整理しています。ここで扱われる「道徳」とは、カント的な「理性による規範」ではなく、ヒューム的な「感情を基盤とする自然な反応」としての道徳観です。

本記事では、その6つの道徳軸を紹介しながら、保守とリベラル、あるいは右派・左派の思想的違いを、対立ではなく「構造の違い」として捉える視点を提供していきます。

参考資料

社会はなぜ左と右にわかれるのか 対立を超えるための道徳心理学(原題 The Righteous Mind)、ジョナサン・ハイト、紀伊國屋書店

[2] CORE|本編

思考回路 - 図解ツール

こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

リベラルと保守 イデオロギー 図解

図の解説 - 紙芝居形式

図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全17枚


人間は利己的に振る舞うことは多い。しかし、それと同時に集団を志向する傾向も持っている。では、人はどのような観点で集団を志向するのか。その背景には、集団に対する善悪の価値観を、6つの軸に分けて考えることができる。

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1つめは、人間の根源として存在する他者への思いやりの観点である。特に子どもをケアすべきという人類の課題から生じDNAに備わっている。対象の広さは人によって異なり、一方は自分たちのコミュニティのメンバーに思いやりを向け、他方は境界を越えて弱者や地球全体にまで思いを広げる。

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2つめは自由に関する観点である。人は誰しも抑圧に抵抗する欲求を持つ。そのため、「誰の自由のために戦うのか」が問題となる。一方は「自分たちの自由」を最重視し、自分たちを抑圧する存在に対して怒りを感じる。他方は、自分たちのみならず、弱者が受ける暴力や抑圧にも強く反応する。

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3つめは公正さに関する観点である。人との協力関係の中で、自分が受け取る分け前の正しさをどう捉えるか。一方は「自分が努力した分だけ報われるべきだ」と考え、努力しない人がもらえないのは当然と捉える。他方は公正とは平等であり、すべての人が等しく分け前を得るべきだと考える。

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4つめは、仲間への忠誠心の強さに関する観点である。一方は「自分たちのコミュニティを守るべきだ」と考え、裏切りに対して強い拒否反応を示す。他方は、個々人の意思を重視し、忠誠よりも個人の選択を尊重する。

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5つめは、権威や上下関係をどのように捉えるかという観点である。一方は、秩序を維持するために権威者の存在や上下関係を肯定的に捉える。他方は、権威が不当な権力の源になることを懸念し、個人の自立した意思決定を重視する。

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6つめは、神聖性や穢れに関する観点である。西洋では宗教的観点、日本でも太古から民族的に受け継がれてきた感覚である。これは、かつて病気などから集落を守るために培われた文化的規範とも言える。一方は貞節や伝統を重視し、他方は合理性を優先してそれらを軽視する傾向にある。

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このように、人間の利己心の上に築かれた社会に対する感覚は、6つの軸で観察することができる。そして重要なのは、これらの感覚は二項対立ではなく、各人が軸ごとに異なる位置に存在するグラデーションを持つということ。ある人が保守的であっても、別の軸ではリベラルな感覚を持つこともある。

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こうした6つの感覚のうち、特に「共同体の維持」や「秩序」「伝統」を重んじる傾向を持つものが、右派的感覚とされる。これらの価値観は、歴史的に多くの人間社会やコミュニティの形成に深く関わってきた。共同体における道徳的価値観は、人々の利己心を抑え、社会を維持する役割を果たしていたと考えられる。

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自分たちの自由を最も重要と考える人々は、現代ではリバタリアンとも呼ばれ、自由市場の仕組みを重視する。近代資本主義はこの思想のもとで発展し、市場のメカニズムが「奇跡」を起こし、人類は多くの物を安価に手に入れられるようになった。

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このような自由市場や、努力に応じた報酬(比例配分)を重視する考え方、さらには秩序を維持する上下関係を尊重する意思が、やがて大企業という存在を社会に生み出してきた。

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大企業は雇用の安定などのメリットをもたらす一方で、高度経済成長期のように、経済成長を最優先するあまり公害問題が発生した。被害を受けたのは往々にして一般民衆や弱者であり、また地球環境そのものだった。さらに、共同体の絆が強くなりすぎることで、外部との対立や排除が激化し、他の共同体が犠牲になることもあった。

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こうした弱者の犠牲に強く反応するのが、左派的感覚である。弱者への共感から多様性を重視し、北欧に見られるような福祉政策を支持する傾向がある。感覚が極端に進むと、かつてのソ連のような共産主義国家が誕生する。

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左派的社会では、政府が市場や企業に対して強い規制をかけることによって、暴走を防ごうとする。たとえば、自動車の排ガス規制によって大気汚染を緩和した歴史などがその具体例である。

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しかし、1991年のソ連崩壊に象徴されるように、政府の力が強くなりすぎると、市場の活力が抑圧され、経済の停滞を招く。我々はこの100年の歴史の中で、自由と規制のバランスの難しさを経験してきた。

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「多様性の尊重」は一見甘美な響きを持つ。ジョン・レノンの「Imagine」にある “Imagine there’s no countries” という歌詞は、世界全体をひとつのコミュニティと見なす理想を表現していたのかもしれない。

しかし現実には、多様性を過度に尊重しようとすると、個人主義が強まり、それぞれが内向し孤立してしまう傾向もある。結果として、従来の共同体にあった道徳的価値や絆が失われるという、皮肉な現象が起きることもある。

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このように、社会形成に関わる価値観を6つの軸に分けて考えると、イデオロギーの違いやそれぞれが大切にしているもの、そしてそれぞれが持つ光と影が感覚的に理解できるようになる。どちらが正しいかを決めることではなく、それぞれの視点を理解し、対話を通じて「今、どの方向を取るべきか」を考えることこそ、私たちが直面するグローバルな課題を乗り越える鍵になるのではないだろうか。

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[3] INSIGHT|考察

図解をまとめての感想

日本では、選挙の投票率の低さがずっと前から問題視されています。50%にも満たないことが多いのが現状です。私自身は選挙があるたびに必ず投票することにしていますが、それでも誰に、どの党に投票するか、毎回悩みます。

それは結局、各候補者が何を成し遂げたいのか、どういう価値観で動いているのかについて、自分自身が十分に理解できていないからだと感じていました。政治家という存在は、皮をむけば利己主義の塊のようにも思えてしまいますが、それでも各候補者が何らかの集団に対する価値観を持っているのも事実です。その点への理解が、私には乏しかったのだと思います。

イデオロギー、つまり右派・左派、リベラル・保守といった言葉が何を意味するのかを、受動的に学ぶだけではしっかり理解する機会がほとんど存在しないという問題もあるのではないでしょうか。

恥ずかしい話ですが若いころは、「保守=現状維持」とされながらなぜ憲法改正(つまり変化)を目指しているのかと、言葉の定義に混乱したこともあります。しかし今回のように、その背景にある価値観のベースを分解して理解できると、改めてすっきりと理解できる気がします。

もちろん、現実の主張はさらに複雑であり、単純にリベラルと保守という二項対立では語れません。しかし、個々の主張がどの価値軸に重きを置いているかを理解することで、その人の考え方への理解が深まるように思います。

日本では、家族やコミュニティの中でイデオロギーや政治の話題は避けられがちではないでしょうか。私自身も、親とそうした話をしたことはほとんどありません。昔、選挙のあったときに、たまたま父と少し話をした記憶があるくらいです。

欧米では、社会的にイデオロギーの話がより活発だとも聞きます。それが「親から子への価値観の押しつけ」になるのなら私は反対ですが、今回のように「価値観の軸」について子どもと話し合うことで、子ども自身が自分を理解し、今の自分が何を大事にしたいと思っているかを考えるきっかけになるのではないかとも思います。

私の娘はまだ6歳なので、さすがにこうした話をするには早すぎますが、成長して彼女が少しずつ社会や政治に関心を持ち始めたら、ぜひ一緒に対話をしてみたい。そう思いました。

[4] NAVIGATION|関連情報

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