宇宙船地球号の取説|50年前から託された手紙の宛先
人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を深め、他者との対話・共有・創造を加速させるための図解ツールを体系化しています。
「図解の本棚」として、多様な思考フレームを取り揃え、あなたの考える力を広げ、実践的な思考を支援します。
[1] PROLOGUE|導入
テーマ概要
持続可能な社会が必要だと認識されてから、私たちはすでに長い時間を経ようとしています。
その必要性は広く知られ、数年前には「SDGs」という標語がメディアでも盛んに叫ばれました。しかし、認知は広がったものの、それが本当に自分ごとになっているかといえば、多くの人は目の前の生活に追われ、普段はあまり意識していないのが現状でしょう。
真剣にリサイクルや過剰消費を避けようとする人もいますが、不必要なものをつい買ってしまう人の方が、きっと一般的かもしれません。
当時メディアで取り上げられたSDGsも、リサイクル資源のような「分かりやすい部分」ばかりが強調されていました。そして今では「SDGsウォッシュ」(取り組んでいるふりだけをすること)も少なくありません。なぜなら、人間の本質には消費社会の欲望が根深くあるからです。
今回参考にする『宇宙船地球号 操縦マニュアル』が発行されたのは1969年、今から半世紀以上前のことです。この本には、地球への深い愛情があふれています。リベラルや保守といった立場を超え、未来のために私たちがどう考えるべきかという普遍的なメッセージが込められています。そして何より、未来を託すべき技術者への期待が綴られていました。
これからの社会を生きる子どもたちにこそ、表面的な持続可能社会の姿だけでなく、私たち人類が「本質的にどうあるべきか」を考えるきっかけにしてほしい。
今回は、そんな愛のメッセージに込められたフラーの思考回路をひもといていきます。
参考資料
宇宙船地球号 操縦マニュアル、バックミンスター・フラー著、ちくま学芸文庫
[2] CORE|本編
思考回路 - 図解ツール
こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

図の解説 - 紙芝居形式
図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全11枚
我々人類は化石燃料を発見してから驚くほどの発展を遂げました。消費社会を背景に様々な商品が生み出され物質的な豊かさに恵まれています。そしてその物質的豊かさは地球が数十億年かけて貯蓄した化石燃料をもとにしています。

しかし人間には避けられない弱さというものが付きまといます。視野が狭く、偏見に満ちてしまう。そして物事を自分本位に考えてしまう欺瞞に満ちています。その人間の良さは物質的豊かな社会の中で、社会の脆さを増幅させてしまう。

そして社会の脆さ、つまり政治権力や利権、イデオロギーによる社会分断や格差、そんな脆さがより人間的な弱さを助長してしまう。

そして人間は、その弱さを満たすために、また物質的な豊かさで穴埋めしようとし、消費社会を余計に加速させる。

そんな人間が避けられない物質主義の動きが加速度的に働き、地球が貯蓄したエネルギーをこの数百年で枯渇させようとしているのです。

当然我々人間はその社会を維持しようと、持続的な社会へ変革をしようとしています。循環型エネルギーへの変換、そしてそれを生かすための持続的社会構造、例えばEVの普及をさせようとしています。

しかし、ただ人間の物資的消費社会を維持したまま、エネルギーを変換させても、その豊かさは維持できません。
あまりにも人間の物質的豊かさが増大しているためです。ただし、物質的な豊かさ自体を否定するのではありません。それに溺れることなく、人間の弱さを肯定しながら受けとめ、工夫により消費社会を抑制することで、人間の精神的豊かさを高め、エネルギーと物質消費のバランスをとっていかなければいけません。シェアエコノミーはその一例かもしれない。

そのようなバランスが将来保たれることで、未来の持続、そして人類の豊かさを持続することができるのです。

人類の豊かさは、個々人の自由を守り、個々人が社会の豊かさへ積極的に働きかけることで、社会は変わっていく。豊かな創造性や社会貢献を活性化させるのです。そのような社会がお互いを補い合うことができ、人類の豊かさを高めるのです。そして豊かな創造性は人類の知性を高めてくれます。

そしてそのためには、社会をプラン出来る人、技術者や建築家のような人々の力が必要なのです。彼らが
社会をシステム的に理解、分析し、世界全体を俯瞰できること、
そして人類の知性を活用し、人類の豊かさには何が本当に必要か、その本質的価値を見極めること、
そしてそれに基づいて科学技術や社会システムを変革させ、持続的な社会構造にしていくこと
が必要なのです。

人間にはどうしても避けられない弱さがある、その弱さを理解し受け止めながら、社会を豊かに変革させうる視点と発想、そのように人類のシナジーを高めることに何が必要なのか、それを見極めれる人材が私たちには必要なのです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「持続可能社会」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。
[3] INSIGHT|考察
図解をまとめての感想
自分もエンジニアの端くれです。だからこそ、このバックミンスター・フラーからの手紙には、強く感じるものがありました。エンジニアの一人として未来を創る仕事をしています。しかし、それが本当に未来のためになっているのか――自問自答する瞬間が、確かにあります。
たとえば、現在進められている「持続可能社会」への取り組みの一つ、電気自動車(EV)。理想としては、再生可能エネルギーで発電した電気を使い、クリーンに車を走らせること。理論上、CO₂排出量はゼロとなるはずです。
しかし、実際には、電池の製造過程での環境汚染や児童労働の問題、さらには電池を作るために必要な大量の電気エネルギーなど、俯瞰的に見れば、必ずしも「持続可能」とは言えない現実が見えてきます。そこに透けて見えるのは、持続可能性のため、というより、むしろ新しい産業構造の覇権を争う利権の存在です。
また、EVに求められているのは、既存のガソリン車と同等の性能を持たせること。そのため、長距離走行を可能にするために大型バッテリーを搭載し、結果としてEV自体も大型・重量化しています。結局、人間一人を運ぶために、過剰なエネルギーを消費するという本質は変わっていません。
特にアメリカにおける「一人に一台」という車社会では、その無理や無駄がより顕著です。たとえ電動化しても、物質的消費社会の構造は維持されたままなのです。このような現実を見ると、人間社会の価値観自体を変えられるような、社会システムの設計が必要だと痛感します。
シェアカーの普及もその一つのアプローチかもしれません。しかし、生活習慣や考え方を変えるのは簡単ではなく、それが普及を妨げる大きな壁になっています。
だからこそ、エンジニアは「人間の弱さ」を理解しながら、それでもなおその弱さを受け止め、包み込むような未来の技術やサービスを設計していかなければならない。そう考えると、エンジニアこそ、リベラルアーツ(教養)を学ぶべきなのだと改めて思います。
バックミンスター・フラーは、半世紀以上前に、すでに持続可能社会の必要性を訴えていました。しかも彼は、その中でコンピュータによる効率化を予見し、人間の労働が変わるべきだという提言もしています。それは、今日で言うベーシックインカムの概念にも通じるものです。
その先見の明には、本当に驚かされます。この本に込められたメッセージは、単なる理想論ではありません。
むしろ、未来を創る技術者や建築家、社会をプランニングするすべての人たちへの「手紙」のように、私は感じました。
[4] NAVIGATION|関連情報
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