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作文教育の功罪|なぜあなたの説明はくどいのか

人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。


[1] PROLOGUE|導入

テーマ概要

我々日本人は、社会人になると突然、報告や説明を強く求められるようになる。そして多くの人が同じ悩みに直面する。「もっとわかりやすく話してくれ」と、上司から何度も言われてしまうのである。

近年では、論理的思考力や言語化力の重要性がビジネスシーンで常識となり、多くのビジネス書でもノウハウが語られている。成長意欲の高い社会人なら、誰しも一度はそれらを手に取ったことがあるだろう。

しかし、
なぜ日本人の説明は「くどい」と言われやすいのか?

その理由は、個人の性格でも、努力不足でもない。歴史教育や作文教育の様式に深く根ざした、日本人特有の「時間感覚」と「文章構造」にあるのではないか。

本稿では、著者が教育の背景を調査しながら紡ぎ出した、その視点に迫る。

参考資料

納得の構造 思考表現スタイルの日米比較、渡邉雅子、岩波書店

[2] CORE|本編

思考回路 - 図解ツール

こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

作文教育 図解

図の解説 - 紙芝居形式

図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全16枚


文章の形式は古代ギリシャ以来、多様に定義されてきた。しかし現代日本では、作文でよく見られる「起承転結」と、ビジネスで重視される「結論から話す」という二つの形式が主流となっている。

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起承転結の「起」では、背景や起点を過去へ遡るように語り、ゆるやかに説明を始める。

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日本では中盤の「承」「転」がもっとも重視され、そこにどれだけ情報を盛り込むかが上手さとされる。情報が蓄積されていくことで内容が展開していく構造だ。

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情報の履歴が豊かであるほど、読み手は物語に感情移入しやすくなる。それが共同体としての道徳観を、感覚的に共有する仕組みとしても機能している。

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日本では小学校から高校まで、文章形式が体系的に教えられることは少なく、「自由に書く」ことが指導されやすい。しかし自由であるがゆえに、運動会や修学旅行といった共通体験を題材にすると、個々の差よりも類似性が生まれやすい。

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この長い時系列に沿った前向きの時間感覚があることで、社会に出て目標を立てる際、未来は遠い場所に置かれがちになる。結果として、目標は抽象的になりやすい。

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未来が遠く抽象的であるほど重視されるのは道徳心であり、態度や心構えといった要素が社会で評価されやすくなる。

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このように現代日本の教育は、長い歴史時間を時系列に沿って捉える様式に基づき、時間が連続的に進むという感覚を育てている。それが社会の道徳観とも結びつき、情緒や心の育成に重きが置かれている。

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一方、アメリカ的な「結論から話す」形式は、現在の時点を起点に置く。

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ここでは結論に直接紐づく因果関係が重視されるため、振り返る過去は近い過去に限定され、結論に結びつく要素を特定する力が求められる。

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その結果、情報を取捨選択する分析力や判断力が発達し、そこから創造性や批判的思考が生まれる。

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アメリカではエッセイ(論証)やクリエイティブライティング(物語)の形式を明確に教え、生徒にその型を守らせる。自由度をあえて制限し、構造の秩序を与えることで、内容そのものはむしろ多様になる。文化的多様性を前提とするため、学校は道徳的価値を共有させるよりも、分析力の育成を重視する。

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この短く断片的で、現在から近い過去を振り返る時間感覚があることで、社会に出て目標を立てる際、未来は近い場所に設定されやすい。結果として、目標は具体的になる。

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未来が近いからこそ重視されるのは、目標に直結する因果であり、環境や要素をコントロールし、行動を最適化しようとする姿勢につながる。

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このように現代のアメリカ教育は、短い歴史時間を断片的に捉える様式に基づき、近過去・現在・近未来を因果でつなぐ感覚を育て、それが社会を前へ進める思考態度を形成している。

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以上のように、国ごとに異なる教育、特に文章を書く授業の形式が、子どもたちの歴史観や時間感覚を形づくる。そして社会に出てからも、その感覚は思考や行動の傾向として働き続ける。

特に日本では、紆余曲折した経緯まで丁寧に盛り込めば相手に共感してもらえる、だから伝わるという無意識の前提が根強く、そのことが説明の「長さ」や「くどさ」につながっている。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。

図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「説明力」「作文教育」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。

[3] INSIGHT|考察

図解をまとめての感想

図解をまとめながら、大学院で論文に苦労した頃を思い出しました。

大学院一年の私は、先輩の研究を引き継がず、独自のテーマを見つけようと必死でした。論文を読み漁り、外部の研究所に相談に行き、試しの実験を何度も行う、そんな試行錯誤の日々です。

その紆余曲折の末、大学院二年の夏ごろにようやくテーマが定まり、企業ともつながりができて研究を完了させることができました。

卒業が近づいた冬、仕上げとして修士論文を書き、教授陣への発表準備を進めます。しかし当時の私は論文の形式への理解が浅く、初稿には一年目の失敗実験まで盛り込もうとしていました。

いわば“内容モリモリ”の原稿です。
博士課程の先輩は一言、「ここ、全部削ったほうがいいよ。わかりにくくなってる」と指摘しました。

私は「がんばった二年間を全部書きたい」と思い込んでいたのだと思います。けれど、余分な部分をそぎ落としたことで説明ははるかに明瞭になり、発表も無事に終えることができました。

今思えば、まだ青かったのでしょう。
「努力した軌跡まで全部伝えれば共感してもらえる」という、小学校から高校まで慣れ親しんだ“作文的な発想”から抜け出せていなかったのです。

本来、論文とは結論を支える論拠だけを明確に示せばよい。当たり前のことなのに。

あれから二十年近くたち、なぜあのような思考に陥っていたのか、ようやく理解できた気がします。

[4] NAVIGATION|関連情報

過去の図解


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