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病の隠喩|ジブリ「風立ちぬ」に潜む、病が心を動かす仕組み

人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。


[1] PROLOGUE|導入

テーマ概要

コロナ禍の混乱が過ぎ去り、すでに数年が経っている。いつの間にか私たちは、あの混乱、そして何よりも当時民衆のあいだに蔓延した心理的抑圧や、社会に広がった偏見を忘れ始めている。

横浜の港に最初に到着したフェリーに向けられた、外世界から来襲してくるかのような異常な恐れ。

街ですれ違う人への過剰な警戒、コロナに罹患した人に対する強烈な自己責任論。県外から移動してきた人への過敏な反応。

病気をどのように理解すればよいのか定義できなかったがゆえに、人間の心理が過剰に立ち上がり、社会全体を飲み込んでいった。

しかし、このような反応はコロナ以前から繰り返されてきた。何世紀も前から、私たち人間は病に対してさまざまなイメージを植え付けてきたのである。

本テーマでは、20世紀後半に結核や癌を中心とした病のメタファーを論じた書籍を手がかりに、人間が病気に与えてしまうイメージの構造と、その背景に迫っていく。

参考資料

隠喩としての病・エイズとその隠喩、スーザン・ソンタグ、岩波文庫

[2] CORE|本編

思考回路 - 図解ツール

こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

病が纏う隠喩 図解

図の解説 - 紙芝居形式

図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全9枚


どれほど医学が発展し、病気に対する人類全体の理解が進んだとしても、一個人にとって病はなお理解不能なものとして立ち現れる。

1/9

だからこそ人はイメージを作り出す。分からないものを単純化し、意味づけするためである。

2/9

病気にかかった人に対して、人はその道徳的性格や内的自己を勝手に解釈し、欲望や不摂生と結びつけ、病を懲罰としてイメージすることがある。

3/9

肺や心臓には繊細な器官というイメージが重ねられる。そして繊細さや感受性の連想から、ときに美的な感覚さえ伴う。

4/9

一方で、内臓や性的器官には不潔なイメージが与えられやすく、それが病気を不気味なものとして強調する。

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このように人が作り出すイメージは、勝手な解釈や、病気への自己責任論を生み出す。そしてそれは、自己正当化を助長していく。

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また病気が身体の表面に現れたとき、特に顔や皮膚の変化は美醜の判断を強め、違和感を生じさせ、私たちに恐れを抱かせる。

7/9

病気は外から侵入してくるものとしてもイメージされる。その結果、外の世界に対する過剰な恐れや偏見が生み出される。

8/9

このような心的世界を人間は作り出すことで、分からない病に向き合い続けるための物語を、常に紡いでいる。

9/9

ここまでお読みいただきありがとうございました。

図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「病気に対する偏見」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。

[3] INSIGHT|考察

図解をまとめての感想

私のような80年代生まれの世代にとって、結核はすでに過ぎ去った病気である。しかし戦前の社会において、結核は恐ろしい病であると同時に、どこか儚く美しいイメージを纏っていたという。

顔は美しく保たれたまま病が進行していく肺の病であり、今回の図解で示した「霊的なイメージ」や「儚さ」を帯びていた。実際には決して儚い病ではないはずだが、文学の世界ではイメージが先行して描かれてきたことがわかる。

現代においても、そのイメージは引き継がれている。
スタジオジブリ作品では、「となりのトトロ」の母親や、「風立ちぬ」のヒロインが結核を患っている。特に「風立ちぬ」のヒロインは、美しい女性として描かれ、その死へ向かう儚さを、結核という病がいっそう増幅している。

もし彼女が癌や別の病気であったなら、観客に同じイメージを抱かせることは難しかっただろう。物語には、それほどまでに緻密に、観客の心にイメージを植え付ける装置が仕掛けられていることがわかる。

彼が描いた物語に、私も感動し、楽しんだ。
しかし同時に、ふと冷静になる必要もあるのだろう。私たちは常に、こうしたイメージによって心理を促されているということに。

人間とは弱い存在であり、分からないものに対して、それを単純化する力を持っている。そしてその単純化は、ときに世の中を対立へと導く。
コロナという世界的な経験を、ただ過ぎ去ったものとして忘れてしまえる人間は、強くもあり、同時に弱くもある存在なのだと思う。

[4] NAVIGATION|関連情報

過去の図解


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