物語の力|僕らは世界に心を支配される
人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。
[1] PROLOGUE|導入
テーマ概要
人は生まれてからずっと物語と共にあります。初めて聞く童話『桃太郎』、漫画『ドラゴンボール』『ナルト』、映画『ハリー・ポッター』『アルマゲドン』、コメディドラマ『フレンズ』など、すべて物語です。さらにはニュースでさえも、物語の構造を持っています。そして何よりも、宗教の教えの背景にある説話も、何千年もの間、物語として語り継がれてきました。さらに、大陸の大統領が対立候補へのヘイトを語るときでさえ、そこには物語があるのです。
これらの物語の多くは、根本的に同じフレーム(構造)を持っています。もちろん、すべての物語がこのフレームに当てはまるわけではありません。しかし、このフレームから大きく外れた場合、よほどの文才がない限り、人々を引き込むことのできない駄作となってしまいます。
では、私たちの思考や感情を支配するこのフレームとは、一体どのような形をしており、どのような力を持っているのでしょうか。今回は、その構造に迫っていきます。
参考資料
ストーリーが世界を滅ぼす 物語があなたの脳を操作する(原題:The Story Paradox)、ジョナサン・ゴットシャル(著)、東洋経済
[2] CORE|本編
思考回路 - 図解ツール
こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

図の解説 - 紙芝居形式
図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全10枚
物語は、常に正義と悪の対立から始まります。そして、悪の存在こそがすべての元凶であり、ヒーローはその悪に立ち向かう運命を背負っています。

悪者は陰謀を企て、社会に非協力的で、利己的な存在として描かれます。物語が悪化するのは悪者のせいであり、主人公たちは次々に降りかかる試練に立ち向かわなければなりません。そして、私たちは悪者に怒りを覚え、試練の連続にハラハラしながら物語に引き込まれます。

しかし、主人公たちは仲間とともに成長し、悪化する状況に立ち向かいます。私たちは、彼らの活躍にドキドキし、彼らの奮闘に共感しながら高揚感を得ます。

そして、私たちは物語の結末がハッピーエンドであることを願います。その期待どおり、どんなに状況が悪くなっても、主人公たちは運ではなく、自らの力で勝利をつかみ取ります。シンデレラのように主人公自身がハッピーになる場合や、たとえヒーローが最後に自らの身を犠牲にしたとしても、その後に残された世界がハッピーである場合も我々はハッピーエンドと捉えます。その瞬間、私たちは強い達成感や快感を覚えます。

物語は、たとえ明確な正義と悪の対立や、完全な勝利が描かれなくても、一定の骨組みに則って構成されることで、私たちをハラハラドキドキさせ、主人公への共感を生み出します。

そして現実では、物語を通して生まれる主人公への共感が「私たち」という集団の意識を高め、そこに描かれる価値観や規範が共有されることで、集団の結束を強めていきます。これにより、社会における他者への共感も深まり、古来より人間は集団生活を営んできました。

しかし、「私たち」がいるということは、「あいつら」という対立する存在も生まれることを意味します。人が物語を語る背景には、敵対する集団に対して味方の結束を深める意図がありました。そして、この本能的な感覚は、現代のグローバル社会においても、私たちの思考に影響を与え続けています。

さらに、敵が必ずしも完全に悪でないという事実や、自分たちの信じるものよりも相手の信じるもののほうが正しい場合でさえ、人間はそれを認めることができません。なぜなら、人の論理的思考は「合理的に物事を考えるため」にあるのではなく、「自分の感情を合理化するため」に機能しているからです。そのため、どんな真実も、自分たちに都合よく解釈してしまうのです。

こうして、物語が生み出す「私たち」と「あいつら」という概念が、社会に分断をもたらす要因となっています。

世の中には大小さまざまな物語が存在し、その多くに共通するフレームが隠れています。物語は私たちをドキドキハラハラさせ、人生を豊かにしてくれる一方で、私たちの社会の構造そのものにも大きな影響を与えているのです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「物語の構成」「社会の対立」「ヘイトスピーチ」などについて周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。
[3] INSIGHT|考察
図解をまとめての感想
今回、物語の構造を整理し、「なるほど」と改めて感動しました。週刊少年ジャンプの法則である「友情」「努力(成長)」「勝利」の3要素は有名ですが、これも今回のフレームに当てはまります。子どもの頃に本や映画で親しんだ『ハリー・ポッター』も、この構造に驚くほど忠実に即しています。そして、長い時間をかけて親しむことで、キャラクターに親近感を覚えた人も多いのではないでしょうか。物語は、仲間とのつながりを生み、人生を豊かにしてくれるものです。
しかし同時に、社会にはびこる物語の力を痛感します。政治家のヘイトスピーチ、国家間の対立、ニュース、CM、企業のブランディング、TEDのスピーチ——あらゆる場面で、人は物語を語りたがり、他人の心を動かそうとしています。
そして、この世界は「他人の心を動かせる者が支配する」と言っても過言ではないかもしれません。
私たちはそろそろ気づくべきなのでしょう。自分が常に物語にさらされ、コントロールされていることに。
普段の生活の中で、それを自覚するのは難しいかもしれません。しかし、このフレームが事実をねじ曲げていることに気づいた大人が、世の中を変えていけるのかもしれません。
[4] NAVIGATION|関連情報
過去の図解
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