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プロパガンダ|僕らは無意識に戦争に同意している

人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。


[1] PROLOGUE|導入

テーマ概要

これを書いている約3年前の2022年2月24日、ウクライナ戦争が始まりました。当時、メディアでは「ロシアが先に仕掛けた。それを受けて立つウクライナには正義がある。アメリカは直接介入しないものの支援を行い、国際社会も国連憲章に違反したロシアに対して経済制裁を科す。これは、悪に立ち向かう正義の戦いである。」といった論調が多く見られました。

ロシアの侵攻は国際法上、問題視されるべきものです。しかし、第一次世界大戦の時代から戦争のたびに、「私たちは正義であり、相手は悪である」という物語が語られてきました。そして私たちは、その物語に違和感を抱くことなく受け入れてきたのではないでしょうか。

戦争や紛争が起こる際には、必ず何らかの物語が生まれます。今回は、その論理展開に焦点を当て、戦争プロパガンダの構造を考察してみようと思います。

参考資料

戦争プロパガンダ 10の法則、アンヌ・モレリ著、草思社文庫

[2] CORE|本編

思考回路 - 図解ツール

こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

戦争プロパガンダ 図解

図の解説 - 紙芝居形式

図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全17枚


我々は常に平和を望んでいる。それは指導者も同じである。誰も戦争を望んでなどいない。

1/17

しかし、敵の方から仕掛けてきた。だから、平和を望む我々は自衛しなければならない。

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敵が先に攻撃してきた以上、これは避けられない戦いである。我々は常に平和を望んでいるのだから、我々には正義と大義がある。

3/17

敵の指導者は悪魔のような存在であり、憎むべき相手だ。敵軍の兵士は残虐であり、彼らが使用する武器も卑劣である。

4/17

だからこそ、これは悪との戦いであり、それに立ち向かう我々は神聖な存在だ。我々には民主主義のように世界に自由をもたらす使命があり、それもまた神聖である。ゆえに、我々には正義と大義がある。

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正義の存在である我々は、強く正しい。だからこそ、常に悪である敵に対して優位に立っている。そして、清廉潔白な我々が行う攻撃は、悪への正当な鉄槌である。

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そう、これは正義の戦いであり、我々は悪を倒さなければならない。

7/17

どうだろう。この物語はとても聞き心地がよい。しかし、この物語は常に虚構である。なぜなら、敵味方を逆にした同じ物語が、敵側でも語られているのだから。

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我々は生まれてからずっと、このような聞き心地のよい物語にさらされ続けてきた。新聞、ラジオ、テレビ、SNSなどを通じて。そして、何の疑問も持たないまま、いつの間にか世界で起こる戦争に賛同してしまう。誰しも自分が戦争を支持しているとは思いたくないし、思ってもいない。

しかし、戦争が勃発すると、これは相手陣営が仕掛けた戦争であり、我々には正義があるのだから、相手を打ち負かすまで戦争が続くのは「仕方がない」と考えてしまうのではないか。

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この聞き心地のよい物語に、著名人や芸術家も正義の名の下に賛同し、より感動的な物語を生み出していく。そして、それによって我々一般市民の戦争への賛同はさらに強まる。もし戦争に反対する者がいれば、この「正義の戦い」を否定する裏切り者として扱われる。

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こうして、我々一般市民はいつの間にか、この聞き心地のよい物語に洗脳されてしまうのではないか。

11/17

では、真実とは何か。それはただひとつ、戦争は悲惨であり、戦場では目を覆いたくなるような惨状が広がっているということだ。

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そして、戦争の結果、誰かが利益を得る。なぜなら、経済的な利益がなければ、誰も戦争を起こそうとは思わない。そして、現代においては、戦争の利益は国民ではなく、指導者やその周囲の者たちだけに集中している。

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その利権のために、我々の税金が多大に消費され、戦場では名もなき兵士や市民、子どもでさえ傷つき、命を落としていく。

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さらに恐ろしいのは、敵がただ無差別に先制攻撃を仕掛けてきたわけではないということだ。「窮鼠猫を噛む」ということわざのように、敵を裏でじわじわと追い詰めた結果、彼らが反撃せざるを得ない状況に追いやられたという場合も多い。それなのに、彼らが先制攻撃をしてきたという部分だけを大々的に取り上げる。あるいは、そもそもその先制攻撃という事実自体が怪しいこともある。

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それでも、我々はこの真実の構造を知らない。知らされていない。そして、疑うことすらない。

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この「聞き心地のよい物語」によって、第一次世界大戦の時代から何度も何度も我々は踊らされてきたのである。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。

図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「戦争・紛争」「プロパガンダ」「世論操作」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。

[3] INSIGHT|考察

図解をまとめての感想

私が子どものころ、物心がつくころに湾岸戦争が起こっていた。小学生のときにはユーゴスラビア紛争。高校生のときにはアフガニスタン紛争、9.11、イラク内戦。シリア内戦、リビア内戦。そしてウクライナ戦争。それ以外にも、数えきれないほどの紛争や内戦が、今も世界のどこかで続いている。

子どものころから「戦争は悪いことだ」「起こしてはならない」と教えられ続けてきたのにもかかわらず、どの時代も戦争や紛争はなくならない。世界中の誰もが平和を望んでいるはずなのに。そして「戦争を望む悪い人間がどこかにいて、西側諸国は正義を掲げてそれに立ち向かっている──そんな物語を、私はずっと聞かされ続けてきたのではないか。」

今になって振り返ると、その物語は、ハリウッドのアクション映画やニュース報道を通じて、いつの間にか自分の中に染み込んでいたのかもしれない。特に、多感な小中学生の頃には。

近年ではフェイクニュースの問題が取り上げられ、「ファクトチェックが大切だ」と言われるようになった。しかし、膨大な情報が溢れる中で、何が事実で何が物語なのかを見極めるのは容易ではない。メディアで語られる物語は常に聞き心地がよく、自分たちの住む世界を肯定するものが多い。

恥ずかしながら、私はそういった「聞き心地のよい物語」に疑問を持たずに生きてきた。子どものころは遊ぶのに必死で、勉強するのに必死。大人になったら働くのに必死。日々の生活に追われる中で、世界のどこかで起こっている紛争や悲惨な現実を知りながらも、心のどこかでこう思ってしまう──「ああ、自分じゃなくてよかった」と。

亡くなった祖父は、第二次世界大戦中に騎馬隊として戦争に出ていたと、祖母から聞いたことがある。(祖父は戦争ではなく、私が小学生のときにガンで亡くなった。)そして、大好きだった祖母とお墓参りに行くと、彼女はよく兄の墓前で線香をあげながら「立派な兄だったけれど、戦争で亡くなったんだよ」と語っていた。「今自分じゃない」のは、ただこの時代に生まれたという偶然だけなのだろう。

そんな私も、今では娘がいる。彼女は6歳になった。最近は、たくさんの質問をしてくる。自然のこと、社会のこと、世の中のこと、私のこと──。彼女の問いに答えるたびに思う。「今はまだ、彼女の質問にほぼ全て答えられている。でも、もっと大きくなったとき、彼女はどんな質問をするのだろうか。」そのとき、私は“ただの父親”ではなく、“大人の先輩”として、きちんと答えられるだろうか?

世の中では「勝った者が正義」となる。いつの時代も「勝てば官軍」だ。そして、正義のかたちは、時代や立場によって変わる。そんな中、アンパンマンの作者・やなせたかしは、こう語っている。

「本当の正義の味方とは、戦うことよりも先に、飢える子どもにパンを分け与えて助ける人のことだ。そして、人を助けるときは、まず自分一人から始める。一人だからこそ、愛と勇気だけが友達なのだ。そして、まずは身近な人を助けることから始めるべきなのだ。」

この言葉を知ったのは、娘を通してアンパンマンの世界に触れたときのことだった。本物の戦争を知る人が語った言葉だからこそ、心が震えたことを覚えている。娘がもう少し大きくなったら、ぜひ語ってあげたい物語のひとつだ。

[4] NAVIGATION|関連情報

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