やりがい搾取|「働きすぎ」その理由
人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。
[1] PROLOGUE|導入
テーマ概要
コロナショック初期、社会活動を停止しなければならないという混乱が発生していたことは、記憶に新しいでしょう。
このとき、多くの現代人――特にオフィスで働くホワイトワーカーの働きが止まっても、社会にはさほど大きな影響がなかったことが印象的でした。
むしろ、電車や車の利用が減ったことで、大気が一時的にきれいになったと報道されたことを思い出します。
一方で、エッセンシャルワーカーと呼ばれる人々――介護士、病院勤務者、ゴミ収集、インフラ、運輸など、社会を支える存在――が注目されました。彼らの働きが止まることによる社会的混乱が懸念されたのです。
また、教師のような職業も、部活動など就業時間外の活動を「子どものため」という社会的価値ややりがいの名のもとに、無償で担わされている現状が、近年大きな問題として取り上げられるようになっています。
しかし、そのような人々が過酷な労働環境や薄給にさらされていることは、すでに広く社会問題として認識されています。
それにもかかわらず、いまだに社会構造を是正しようとする動きは、十分に見られません。今回は、現代社会に蔓延する「無駄な仕事」の実態に迫り、その全体像を明らかにしていきます。
参考資料
ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論、デヴィッド・グレーバー著、岩波書店
[2] CORE|本編
思考回路 - 図解ツール
こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

図の解説 - 紙芝居形式
図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全13枚
人は社会的な動物であり、古来より「働くこと」を通じて社会に価値をもたらし、その対価を得てきました。
そして「働くことは正しい」という価値観の土台が形成されています。
「働かざる者食うべからず」という言葉に象徴されるように、働くことは道徳的であると考えられてきたのです。
しかし同時に、働くということは、自らの時間をそのために消費するということでもあります。

1930年、経済学者ケインズは「20世紀が終わる頃には、週15時間労働になるだろう」と予測しました。
人類社会は時代を経るごとに、さまざまな作業が効率化されてきました。
その結果、労働時間も減るはずでしたが、現代社会ではむしろ減っていません。

それは、「働くこと」——言い換えれば「働くために時間を消費していること」そのものが正義とされる社会的価値観のもとにあります。
その結果、たとえ無価値であっても「仕事」として成立するものが次々に生み出されました。
「社会に価値を生む」ことではなく、「働いている状況を生み出す」ことが目的となり、複雑な社会構造や組織構成が形成されていったのです。

たとえば、上司の指示による「無意味な仕事」や、「管理のための管理」など、実質的には意味のないことを証明するためだけに存在する仕事です。

将来のための「企画」をしても、マネジメントが意思決定を先延ばしにし、はぐらかすこともあります。
その結果、「企画をしている」という事実だけを証明するための仕事になります。

自分では何もせず、ただ明らかに分かりきった仕事を他人に指示するだけの役割も存在します。

結局、自分でやった方が早いのに、「誰かが仕事をしている状況」を作るために回ってきた仕事のアウトプットを修正する、いわば“尻ぬぐい”のような作業です。

あるいは、「受付」「ドアマン」「会議に出ているだけ」といった、ただ“そこに居る”ことだけが目的となり、誰かの威厳を保つためだけに存在する“お飾り”的な仕事もあります。

社会に何らかの影響を与えているものの、それが広告やテレビのコメンテーター、インフルエンサーなど、社会を「煽る」ことしかしていない有害な仕事であることもあります。

このような仕事が数多く醸成された結果、社会構造や組織はより複雑化し、封建的に「分配を多く得る者」と「分配量の少ない者」とに分かれていきました。

高給を得ている人々の中には、自分自身では社会に直接価値を生み出していないにもかかわらず、「働くことの辛さ」を味わっていることを根拠に、大きな分配を得ることを自己正当化している場合もあります。

一方で、社会に明確な価値を提供している人々は、「やりがいがあるのだから給料が低くても構わないでしょ」というような、社会からの価値観の押し付けにさらされているのです。

このように、社会が効率化されたにもかかわらず、本来であればもっと有意義に使えるはずだった時間が、無駄な仕事を生み出すことに費やされ、「仕事をしているという事実」を証明するためだけに使われてしまっているのです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「社会の無駄」「エッセンシャルワーカー」「やりがい搾取」「プロボノ」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。
関連図解
[3] INSIGHT|考察
図解をまとめての感想
企業に勤め、中堅どころになってくると、社会や組織内に広がる無価値な仕事の存在を、しみじみと実感します。
現代のように、将来の利益が確実であることなどなく、開発して試しながら進める必要がある時代――いわゆるアジャイル開発が求められる時代において、こうした「責任を取らない責任者たちを納得させるための無駄な仕事」に忙殺されることが、あまりにも多いのではないでしょうか。
世の中にはプロボノのように、仕事外で自分の能力を生かし、社会的・公共的な目的のために無償で取り組む活動があります。今回の図解で触れたように、普段は無価値な仕事に追われながらも、「社会に何か貢献したい」という思いを、たとえ無償でも形にしたい――そういった想いから生まれる活動なのだと思います。
その考え自体は、決して否定されるべきものではありません。しかし、なぜそのような活動が必要とされるのかを考えると、少しおかしな気もしてきます。
本来ならば、本業自体が社会に役立っていれば、それに打ち込めば良いはずです。そして、仕事外の時間は身体を休めたり、新たな学びに取り組んだりと、自由に使えるはずです。にもかかわらず、本業の外で「社会の役に立ちたい」と感じるのは、裏を返せば「本業で十分に社会的価値を提供できていない」という実感の表れなのかもしれません。
私が行っているこの図解ツールの活動も、そうした思いの延長線上にあるのかもしれません。今回の図解を通じて、あらためてこの人間社会にある矛盾を強く感じさせられました。
[4] NAVIGATION|関連情報
過去の図解
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