イノベーション|小さく始めるチームだけが掴むチャンス
人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。
[1] PROLOGUE|導入
テーマ概要
人間社会は、大小さまざまなイノベーションの積み重ねによって変化してきました。インターネットやAIの発達により、そのスピードはますます加速しています。
企業の中でも、新たな起業の現場でも、利益を拡大しようと多くの人がイノベーションや新規事業の創出に日々取り組んでいることでしょう。現代には多様な戦略理論やイノベーション理論があふれ、必要な知見もすぐに手に入る時代です。
しかし、こうした理論を個別につまみ食いするだけでは、全体像をつかむことは難しいのが現実です。結局、どのような視点で機会を捉えればよいのか。実はドラッカーは、すでにその骨格を体系的に示し、起業家に向けて指針を与えていました。
今回は、事業家・起業家・企業の事業部門にとっては一見当たり前とも思えるその全体構造を、あらためて図として可視化してみます。
参考資料
イノベーションと企業家精神、P.F.ドラッカー、ダイヤモンド社
[2] CORE|本編
思考回路 - 図解ツール
こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

図の解説 - 紙芝居形式
図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全11枚
企業活動は常に市場と共にあります。商品やサービスは顧客のプロセスに届けられ、顧客はその体験から価値を感じ取ります。企業は、顧客が感じるであろう価値を想定しています。顧客に受け入れられたかどうかの結果は、業績に現れてきます。

イノベーションの機会には、それに気づき、知覚し、考えることが求められます。そのきっかけの1つが、想定外の成功や失敗です。意図していた顧客価値とは異なる領域で需要が高まったり、逆にまったく売れなかったりすることがあります。企業は、自分たちの意図とは異なる受け入れられ方に直面すると、それを理解できず、受け入れがたくなります。しかし、市場が実際にどう捉えているかへの理解こそが重要になります。

顧客が持つ価値観を正しく理解することは、実際には容易ではありません。人はいつの時代も、先入観や思い込みにより認知を変えることが難しいのです。事実を知るには、実際に外に出て観測する必要があります。

また、実際の顧客が経験しているプロセスと、「こうあったらいいな」と思う理想のプロセスとのギャップを捉えることが求められます。これは、現在でいうデザイン思考やUX開発に近い考え方です。ただし、やみくもに空想的な理想を描いてはいけません。プロセスの目的が明確であること、課題がプロセス全体ではなく特定の箇所に絞れること、課題解決が現実的に可能であること。
そして何より、顧客がその課題の解決を本当に期待していなければ、どんなに優れた改善策も受け入れられません。

次に、社会の認識や常識が、時代の変化と共に変わっていることにも目を向ける必要があります。たとえば、かつては「LGBTQ」という概念は一般的ではありませんでしたが、今ではその認識が市場にも大きな影響を与えています。

人口構造の変化も、基本的な知覚の対象です。年齢構成の違いや時代の変遷は、社会の価値観や“マス”となる空気を形成します。現代の高齢化社会の日本では、労働力不足などの未来予測も容易になっています。

静かに進行する産業構造の変化にも敏感でなければなりません。自社の外側では常に何かが変わり続けています。大きな兆しとして、急激な市場成長があります。それは自社の業績を知らぬ間に低下させることもあります。また、プロセスの変革によって市場が浸食されることもあります。
たとえば、Amazonの登場により人々が本を購入するプロセスは大きく変化しましたが、書店にとってはその変化は蚊帳の外でした。さらに、技術の融合によって、新たな商品やサービスが市場に次々と登場しています。

自社が新しい知識を活用することも、イノベーションの可能性として含まれます。ただし、これは長い時間を要する取り組みです。一つの技術を開発したからといって、それがすぐに世の中に必要とされるわけではありません。既存の知識や技術と融合させ、社会にフィットする形へと育て上げる必要があります。

このようなイノベーションの機会は、ただ待っているだけで自然と気づけるものではありません。外に出て知覚し、体系的に分析しなければ、見えてはきません。

そして、むやみにさまざまなことに手を出すのではなく、ぼやけた視界の中で焦点を絞り、単純でシンプルなものを小さく始めることが、ようやく今に小さな影響を与える第一歩となります。
イノベーションとは、いきなり大きなことを成し遂げるものではありません。それは単なる夢物語です。今私たちが「イノベーション」と呼ぶものも、その最初の一歩は私たちが知り得ない、小さく地道な始まりだったはずです。目立つイノベーションの成果だけを見て、それに憧れても、いきなりそこに飛び込むことはできません。準備も観察もなしに無謀な挑戦をするのは、鳥に憧れて両腕に翼をつけ、崖から飛び降りた人のようなものです。

このように、ドラッカーが説いたイノベーションの機会を探るヒントは、現代でいうPEST分析や3C分析、デザイン思考やUX開発と重なる点もあるかもしれません。しかし、それらを包括する全体像をイメージとして体系的に捉える感覚を持つことから、起業家の旅路は始まるのかもしれません。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「イノベーション」「新事業」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。
[3] INSIGHT|考察
図解をまとめての感想
MBAのような場では、戦略理論について学ぶ機会があるでしょう。基本的な枠組みとしては、PEST、3C、ファイブフォース、ポーターのマトリクスなどが定番です。多くの専門家たちが、焦点を変えたり表現を変えたりしながら、さまざまな定義づけをしてきました。
それらを知れば知るほど、「これは結局、市場全体のどの部分を指しているのか?」というモヤモヤした感覚が残ることがあります。
私は、まず全体のイメージをざっくりと捉えてから、そこに焦点を絞り、分析理論を当てはめていくという思考の流れが欲しくなります。
今回は、ドラッカーの『イノベーションと企業家精神』における「イノベーションの機会」の章を題材に、体系化された内容を、さらに視覚的に整理しようと試みました。7つの機会には、なんとなく重複している部分もありますし、箇条書きのように列挙されているだけだからこそ、それらを一つのイメージにまとめるのは難しい作業でした。
それでも、自分なりに一つの絵として落とし込めたことで、バラバラに並んでいた情報が大きな構造としてつながったような感覚がありました。まだ少しモヤモヤは残っていますが、どこか腑に落ちたようにも感じています。
図にまとめながらふと思ったのは、ドラッカー自身もこの文章を書くとき、重複を承知のうえで観点を挙げ、頭の中のイメージを何度も行き来しながら要点を拾い出して書き留めていたのではないか、そんな作者の苦労を、勝手ながら想像してしまいました。
[4] NAVIGATION|関連情報
過去の図解
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