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ナショナリズム|なぜ僕らは「日本人」だと思うのか

人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。


[1] PROLOGUE|導入

テーマ概要

近年「分断」が叫ばれている。アメリカでは「アメリカ・ファースト」、日本でも「日本人ファースト」といった言葉が選挙で使われることがあった。グローバル化が極端に進んだ社会への反動として、ナショナリズム的な言葉が表に現れている。

しかし、そこで言われる「アメリカ」や「日本人」とは何を意味するのだろうか。その抽象的な言葉は危うい。なぜなら、聞く人によって思い描く集団のイメージが異なるからである。

私たちは生まれたときから「国」や「日本」という枠組みの中で育ち、疑うことなく自分を日本人だと思っている。

だが「日本人」とは何を指すのか。この社会に生きる「コミュニティ」とは何なのか。その問いを考えるきっかけとして、今回は1983年に出版された名著『想像の共同体』を手がかりに学んでいく。

参考資料

想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行、ベネディクト・アンダーソン (著)、書籍工房早山

[2] CORE|本編

思考回路 - 図解ツール

こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

想像の共同体 ナショナリズム 図解

図の解説 - 紙芝居形式

図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全13枚


古来、人間は多くの集落で暮らしていた。そこでは様々な土着の言語が話され、日本に多くの方言があるように、多様な文化が生きていた。

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そこを統治していたのは、例えば宗教である。中世ヨーロッパではキリスト教が支配し、教会は人々が話さないラテン語を操り、聖書もラテン語で書かれていた。一般の民が使わない聖なる言語を扱うことで、宗教権威は特権的地位を保った。イスラムではコーランのアラビア語があり、日本でも為政者は漢語を用いた。

一般の民は蚊帳の外に置かれ、階層的権力構造が人々を支配していた。

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王家もまた統治した。血縁関係や婚姻でつながり、一般の人々とは無関係に、王だけがその都合で代替わりしていた。

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このような宗教的共同体や王家の支配のもとで、人々の時間感覚は止まっていた。過去も未来もなく、普遍的な観念が支配する。特にキリスト教世界では常に終末を意識し、聖なる登場人物はどの時代にも現れる存在だった。

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このように古来の人間は、土着の集団に属し、それを統治する仕組みによって支配されていた。

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しかし資本主義が生まれ、出版文化、特に新聞が登場すると、人々の意識は変革した。出版物の中では、口語や俗語の中から偶然収斂した言語が広く使われるようになった。

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新聞を通じて、人々は共通の言語で、自分が知らなかった他者の存在や、同じ時間や空間を生きる無数の物語を知るようになった。そこから過去や未来、そして現在を同時に意識する感覚が芽生えた。

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これまで普遍的で動かなかった時間や空間は広がりを持ち、同じものを共有する見知らぬ同胞に対して、共同体の感覚を抱くようになった。

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共通の言語を持たなくても、制約された領域の中で生活し、その範囲を巡ることで、見知らぬ同胞と出会い、共同体感覚を育むことになる。植民地時代のアメリカでは、英語を話しながらもイギリスとは切り離された人民がその例である。現代でも会社の中で転勤を通じ、異なる拠点の同僚と出会うことで仲間意識を広げることができる。

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このように、もともと土着でばらばらだった人民は、共同体感覚の広がりによって、大きな「国民」という感情を自然に持つようになった。

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為政者は、このように人民から自然発生的に生まれた共同体感覚を恐れた。自らの統治が脅かされると感じたからである。そこでその仕組みを模倣し、標準語を普及させ、軍国主義や教育制度を強化し、過去の歴史を国史としてまとめ、博物館を作って人々に歴史を見せるなど、国家主導でナショナリズムを形成しようとした。また近代には地図による記号表現も加わり、国と他国の境界が強く意識されるようになった。

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このようにナショナリズムは自然発生的に、あるいは国家主導によって形成された。それは人種や言語が異なっても、一つの共同体として生きていく感覚である。したがって、生物学的に人種を区別し、その観点だけで人を分ける人種主義とはまったく異なる。

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以上のように、人間はかつて土着の社会で生きていたが、いまや国を意識せずにはいられない。そしてその共同体をどう捉えるか、何千万人、何億人という集団として生きるこの社会を理解しなければならない。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。

図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「ナショナリズム」「国民」「日本人とはなにか」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。

[3] INSIGHT|考察

図解をまとめての感想

人間が抱く共同体感覚とは、実に不思議なものです。組織論を学ぶと、組織を形成するためには創業者のエピソード(神話)、朝礼のような儀礼、組織目標、文化を形づくる価値観や行動規範、そしてそれを表す共通言語など、さまざまな観点が指摘されます。人間はそうした仕組みを駆使しながら、組織への共同体感覚をつくり出しているのです。

今回扱ったナショナリズムの概念も、その構造はよく似ています。文化や神話、共通言語といった要素が人間の脳に作用し、実体のない「共同体」というものを、あたかも存在するかのように頭の中にイメージさせるのです。そして世界大戦の時代には、人類はこれまで想像もしなかった「我が国」のために命を投げ出す行動すらとりました。

私たちホモ・サピエンスは、お金も会社も国も、すべてを架空のイメージとして捉え、それを共有して生きてきた、極めて特異な存在です。

だからこそ、社会が大きく変化し不安定な現代においては、自分がどのようなイメージにとらわれて生きているかをメタ認知することが欠かせません。それを怠れば、ただ流されて生き、言葉に操られ、暴力に傾く危険すらあるのです。

私自身も人の言葉に反応してしまうことが多々ありますが、ふと立ち止まり、冷静さを取り戻せる人間でありたいと強く思います。ナショナリズムという言葉は、ときに危うさをはらむものに見えるかもしれません。しかし本来それは、人間が共同体としてどう共に生きるか、過去を受け継ぎ未来へ渡す、そのつながりを実感させてくれるために欠かせないものなのだと思います。

[4] NAVIGATION|関連情報

過去の図解


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