見出し画像

Effectuation|起業家は、最初は目的から考えない

人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。


[1] PROLOGUE|導入

テーマ概要

現在、世界の変化はこれまでになく加速しています。スマートフォンの普及以降、市場の関心は目まぐるしく移り変わり、AIが実用段階に入ってからは、技術そのものの進化があまりにも速く、「何ができるか」が日々塗り替えられています。少し気を抜くだけで、すぐに取り残される。そんな恐ろしさすら感じます。

そんななか、日本企業の現場はどうでしょうか。何十年もかけて築かれた「堅実な事業計画を立て、承認を得て実行する」という手順に、今も多くの組織がどっぷりと浸かっています。特に大企業では、その流れに適応してきた人たちが現在のマネジメント層を占めている状況です。

「VUCAの時代にはアジャイル開発やスモールスタートが必要だ」そうした話を耳にしたことがある人も多いはずです。しかし、企業内で新規事業を進めようとすれば、依然として不確実な未来に対してさえ「計画性」や「説得力」が求められ続けています。

こうした状況に対して、新たな示唆を与えてくれるのが、起業家の思考法を分析した「Effectuation(エフェクチュエーション)」です。これは、不確実性の高い新市場で、起業家たちがどのように「自らコントロール可能なもの」に着目し、意思決定していくのかを体系化した考え方です。

変化の時代を生きる私たち日本企業の一員も、この思考法を理解し、自らの現場に応用していくことが求められています。今回は、そんな「Effectuation」の考え方に迫っていきます。

参考資料

Effectuation 優れた起業家が実践する「5つの原則」、吉田満梨 中村龍太 著、ダイヤモンド社

[2] CORE|本編

思考回路 - 図解ツール

こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

Effectuation 起業家思考 図解

図の解説 - 紙芝居形式

図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全18枚


企業において企画を推進するには、目的を設定し、事業計画を立てる。これはごく一般的な進め方です。

1/18

企画を練るには、外部環境の理解が求められます。そのため、3CやPESTといったフレームを用いて、マーケティングリサーチを行います。

2/18

リサーチから得た情報を活用して分析を深め、企画が直面するであろうリスクや、成功の期待値を予測していきます。そして、それを何度も社内でチェックし、企画内容をブラッシュアップしていくのです。

3/18

こうして確度が高まった計画に基づき、最適な手段を実行します。そのために、社内では上司へ、社外ではパートナーなどへ企画を売り込んでいくのです。

4/18

相手が共感し、承認してくれると、手段を実現するための資源や協力を提供してくれます。それによって手段の実現が可能になります。

5/18

こうして計画された手段が顧客の利益を満たすことができれば、顧客は商品やサービスを購入してくれます。

6/18

このように、明確な目的をベースに情報収集と分析を行い、入念に計画を策定して進める手法は、これまでも、そして今も多くの企業で採用されている最も一般的な方法です。

7/18

しかし、本当にこの進め方で、これからの市場で戦えるのでしょうか?今の時代は「VUCA」と呼ばれて久しく、市場や未来の不確実性が増しています。それにもかかわらず、企業の企画現場では、計画の妥当性や進捗の原因説明など、上司を納得させるための説明ばかりが求められ、企画の本質的な推進に集中できず、現場の企画担当者は苦悩しています。

8/18

その一方で、起業家たちの思考を分析した結果が報告されています。彼らは、自分とは何か、自分が何を知っているか、誰を知っているか、どんな余剰資源を持っているかといった「コントロール可能な範囲」に集中して着目します。

9/18

そして、『自分ができること』という手段に着目し、具体的な行動に移していくといわれています。

10/18

もちろん、具体的な行動には精神的なハードルもあります。また、何が何でも無謀に行動することを求めているわけではありません。不確実な新市場で一度の挑戦で成功するなど、現実的ではないからです。

だからこそ、自分が許容できる範囲を考え、たとえ失敗して金銭的損失や信頼を多少失っても余力が残るよう、かける資源を制限することで、実行のハードルを下げるのです。こうして具体的な一歩を踏み出していきます。

11/18

そして具体的な一歩を踏み出すには、自分が何に関心を持ち、何にワクワクするのか、その動機が重要になります。その関心を深く見つめ直すことが求められるのです。

12/18

不確実な中でも一歩を進めるからこそ、思いもよらぬ偶発的な出来事が生まれます。たとえ失敗しても、新たな発見や出会いに恵まれるのです。

13/18

発見とは、ただ待っていれば得られるものではありません。物事を多角的に観察することで、自ら気づきを得て、自分の基盤が充実していくのです。

14/18

そして何より、新しい出会いがあります。世の中にはまだ出会っていない多くの人がいて、それぞれが独自のVisionと、自分とは異なる「できること」を持っています。彼らとどう関係を築いていくかが重要です。

15/18

関係人口やパートナーシップを増やしていくには、無理やり売り込むのではなく、彼らを仲間にする意識が重要です。彼らの自発性と自分の自発性を掛け合わせて共創を生み出す。

そのためには、相手をよく知り、できる範囲で協力してもらえるよう「問いかけること」が大切です。そうした共創を通じて、新しくできることの発見や、自分の目的の進化が生まれるのです。

16/18

このように、起業家の思考とは、確固たる目的と計画を持って猪突猛進することではなく、小さな一歩を素早く何度も進めること。そして、偶発的な発見や出会いを「活かせるかどうか」が鍵なのです。

17/18

小さな経験を素早く繰り返す推進と確固たる計画に基づく推進。この二つに優劣はありません。事業の段階や状況に応じて使い分ける。その柔軟性を持つ人材こそ、今後の社会で求められるのです。

18/18

ここまでお読みいただきありがとうございました。

図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「起業」「新事業」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。

[3] INSIGHT|考察

図解をまとめての感想

「行動が大事」「自分がワクワクすることを少しでも始める」こうした考え方は、これまでにも多くの本やメディアで触れてきたものであり、それ自体に特別な新しさは感じませんでした。

しかし、Effectuationという考え方を体系的にひも解いたこの書籍を深掘りすることで、「関係人口と共創していくこと」という観点を、改めて見つめ直すことができたと思います。

自分がやりたいことがあり、具体的にできる手段があるとき、人と出会ってもつい因果論的に「自分のアイデアを売り込んでしまう」そんな傾向に、知らず知らずのうちに陥っていたのではないかと気づかされました。

今回、図解によってEffectuationと従来の考え方を体系的に対比させることで、その違いをはっきりと理解することができました。なによりも、多くの人と社会を共創していく、そんな思いが重要なんですね。

これから自分自身も、社内で新規事業や新規開発企画を進めていく機会が増えていきます。そのとき、いかに最初の企画を小さく始め、損失の少ない範囲で試し、着実に経験を積んでいくか。そんな視点に立ち、少しでも早く実践してみたいと感じました。

[4] NAVIGATION|関連情報

過去の図解

いいなと思ったら応援しよう!

図解の本棚 | Systems Visualism もしお気持ちをいただけるなら、図解ツールを広める活動に使わせていただきます。

この記事が参加している募集