顧客心理|「買う」の裏側の心理
人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。
[1] PROLOGUE|導入
テーマ概要
人は誰しも、日常の中で何かしらの「顧客」になります。なぜなら、日々の生活の中で、何かを購入する機会は必ずあるからです。例えば小さな日用品であれば、営業担当と会話することはないかもしれません。
しかし、洋服や家電を購入するときには、店員からの営業トークに接することになりますし、人生における大きな買い物――たとえば車や家、保険などを購入する際には、営業担当との本格的な対話を通じて、自分が納得するまで検討することになるでしょう。
一方で、「営業」の立場を仕事の中で担う人は、限られた存在かもしれません。しかし、営業を受ける立場になったとき、多くの人が「強引な商品説明」や「押し売り」のような印象を受けた経験があるのではないでしょうか。
誰しも、前述のように「自分が納得した上でなければお金を払いたくない」と知っているはずなのに、いざ営業の立場になると、無理に売り込もうとしてしまい、むしろ顧客に警戒されて財布の紐はさらに固くなってしまいます。
特にBtoBの世界では、日々さまざまな営業トークが繰り広げられています。今回参考にした書籍では、そうしたBtoB営業において、顧客との向き合い方を論理的に解説しています。
本書を踏まえた上で、私個人の考えで営業力を大まかな要素に分解していくと、以下のように整理できます。
顧客本位で考えられているか
顧客が契約に踏み切るための「納得のフレーム」の全体像を理解しているか
…といった 本質的に理解すべき全体像 と、顧客の意図を深掘りするための質問力
…といった 具体的なテクニック
です。

本書を解釈すると、この「全体像」と「質問テクニック」の両方の観点が紹介されていると考えられます。今回の記事では、前者である「本質的に理解すべき全体像」に焦点を当てて解説していきます。
この考え方は、顧客対応の基本を学ぶうえで、新人や後輩を指導する際の道しるべとしても有効です。
参考資料
営業の科学 セールスにはびこるムダな努力・根拠なき指導を一層する、高橋浩一(著)、かんき出版
[2] CORE|本編
思考回路 - 図解ツール
こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

図の解説 - 紙芝居形式
図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全12枚
営業は誰しも最初は、顧客の意図を引き出そうとします。今の時代は「顧客の発言をしっかり聞きましょう」と指導されます。そこで「何か課題はありますか?」といった抽象的でざっくりとした質問を投げかけ、顧客の表面的な課題を聞き出そうとします。

しかし、深掘りが不十分なまま「自分は顧客のことを理解した」と思い込み、商品を売りたいという気持ちが優先してしまいます。そして、商品説明を急ぎ、顧客がまだ受け入れる準備が整っていないうちに見積もりを提示してしまいます。
当然、顧客は納得できないものを買いたいとは思わないため、交渉は決裂してしまうのです。

なぜそうなるのでしょうか。顧客としては、無駄な商品を買いたくありません。また、営業とのやりとりの中で、むやみに情報を開示するリスクを冒したくないのです。
納得できないまま商品を購入することも避けたい。買わなければ現状維持で済むため、大きな痛みもありません。だからこそ本能的に警戒し、はぐらかしたり、先延ばしにしたりするのです。

顧客の話ばかり聞いている営業は「顧客のことをしっかり聞こうとしている」と自己理解しているかもしれません。しかし顧客からすると、ただ聞かれるだけでは、営業が自ら理解しようとしている姿勢は感じられません。常に他人事のような姿勢では、信頼されることはありません。
商品を購入するには、顧客が納得できる理解が必要であり、それを築くには、状況の深掘り・分析・理解といった、相応の思考労力が必要なのです。だからこそ、その思考労力に向き合わない営業は信頼に値せず、顧客は建前で壁を作ってしまうのです。

このように、知らず知らずのうちに営業本位・自分本位になっている営業担当者は、顧客にとって魅力がなく、むしろ時間や労力を奪う存在、つまり“害”でしかありません。

では、顧客はどうすれば商品を買おうと思うのでしょうか。その前提として、顧客の中で「納得のフレーム」が満たされなければなりません。
まずは表面的な課題ではなく、本質的な“真の課題”を具体化する必要があります。視点や視野を変えることで問題を多角的にとらえ、さらにMECEに分解することで、真の課題が浮かび上がってきます。その解像度が高ければ高いほど、深掘りできていればいるほど、顧客の納得感は高まるのです。

そして、その「真の課題」に対して、商品や提案の価値・内容がどれだけ十分であるか、目標を達成できる効果があるか、その理解を築いていく必要があります。また、その商品が他社のものと比べて希少性が高ければ、より高い価値を感じてもらえるのです。

そのような顧客理解が土台として築かれている状態で、最後に見積もりを提示することで、たとえ当初の予算感より多少高くても、顧客は納得のいく取引だと感じることができるのです。

この3段階――「真の課題の納得感」「商品の価値・効果への理解」「費用対効果の理解」――を経て、顧客は納得して契約に至るのです。

では、その「納得のフレーム」を満たすには何が必要でしょうか。何よりも、顧客の質問や要求に対するスピーディーな応答です。共通事例や類似商品など、顧客にとって有用な情報を提供し、課題や商品についての理解を深掘りしていく。
そのコミュニケーションの中で納得感が高まれば、営業担当の能力や、その背後にある組織の信頼につながり、建設的な関係を築くことができるのです。

さらに、ただ深掘るだけでなく、営業側が理解した内容を要約して伝えることも重要です。その要約が網羅的で具体的であり、顧客の状況を分解したうえで優先順位が明確になっていれば、顧客の納得感はさらに高まります。
そしてその要約が十分であれば、提案内容や見積もりも自然と納得できるものになるのです。

このように営業は、どうしても「商品を売らなければならない」というプレッシャーから、いつの間にか営業視点に偏り、顧客視点を忘れてしまいがちです。しかし常にこの全体像をメタ認知することで、真の意味で顧客視点の営業が可能になるのです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「営業のコツ」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。
[3] INSIGHT|考察
図解をまとめての感想
私は普段エンジニアとして働いており、営業をすることはありません。むしろ、外注企業の方々から営業を受けたり、DXに関するシステムの提案を受けることが多々あります。最近ではウェビナーも増え、その後には営業のメールや電話をいただくことが多くなりました。
そのため、今回の書籍では顧客の立場を思い出しながら読み進めることができ、「あー、そう思うことよくあるな」と実感しました。
営業の方の中には、定期的に連絡や訪問をしてくださる方もいて、こちらとしても無下にすることはできません。しかし、何人もの異なる営業の方と会話する中で感じたことは、次のようなことです。
「この人は私の意図や悩みを深く掘り下げようとしてくれているな。私の課題を再解釈し、自己理解した上で話してくれているな」
「ああ、この人は私の話を聞いてくれているようで、結局提案内容が、私の悩みや課題に即していなくて、あちらの売りたい商品が主になっているな」
「この人は体育会系なんだろうな。商品の説明は押しつけがましいけど、こちらの話を聞く気があるのか、快活で関係を構築しようとしている雰囲気は感じるが、ちょっと苦手」
など、さまざまなタイプの営業の方に出会います。
ビジネスですので、やはり思い出すのは、最初に挙げた「こちらの実現したいことに寄り添ってくれる人」です。
偉そうに聞こえるかもしれませんが、エンジニアである私は「ものを売る」苦労を実感することは少なかったです。しかし、このnoteを通じて図解ツールを展開しようとしている今、少しでも人に求められ、受け入れられることの難しさを改めて実感しています。
[4] NAVIGATION|関連情報
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