【ショートストーリー】絹さやの刻。
「ねー、新木優子さん、結婚だって。」
ぽーっとテレビを見ていた今日子ちゃんがそう言った。くつろいでいるときの今日子ちゃんは、前髪をピンクのウサギの前髪クリップでペチャッと留めている。
「え。誰と?」
「んーとー、中島裕翔…?」
「ほぇー。美男美女だな。」
「ね。」
「なんか、みんな結婚しちゃうなぁ〜。長澤まさみも結婚しちゃったしね。」
「あーね。」
遥香は向かいのおばちゃんからどっさりといただいた絹さやのスジを、ピシッ、ジーッと取りながら、芸能人カップルの日常を想像する。
「ね。帰ったら、長澤まさみいるんだよ?『おかえり〜』って。え、やば。うらやましすぎる。」
「そりゃー、夫婦だからねぇ。」
「ごはん作ったりしてるんだよ?朝起きても、隣にいたりするんだよ?」
「まぁー、夫婦だしねぇ。」
「あれじゃん、岡田将生だってさ。家に帰ったら高畑充希ちゃんがいるんだよ?『おかえり〜』って。」
どんどん興奮していく遥香は、スジを取った絹さやのほうを、スジを捨てていたチラシで作った箱に入れてしまう。「あ、まちがえた」とぼそり。
「夫婦だもん、いるでしょうよ。星野源だって、帰ったらガッキーいるんだし。」
そう言いながら、前髪ぺったんこの今日子ちゃんは隣に座って、絹さやのスジ取りを手伝ってくれる。
ピシッ、ジーッ。
「いいなぁ、うらやましすぎない?」
「ってか、そっちなんだね。」
「なにが?」
「いや、帰ったら岡田将生いるんだよ?とか、星野源いるんだよ?じゃないんだね。」
ピシッ、ジーッ。
「そりゃね。私、かわいい子好きだもん。」
「ふーん。」
ピシッ、ジーッ。
「今日子ちゃん?ヤキモチ?」
「なわけ。」
「………。」
「新木優子でも長澤まさみでもガッキーでもないからね、私は。」
「今日子ちゃーん……。」
遥香は両手で今日子ちゃんのほっぺたを挟む。
「やめい。」
「幸せです、私は。」
「あ?」
「今日子ちゃんがいつもいてくれて、私は幸せです。」
「夫婦じゃないけどね。」
「ね。」
遥香は今日子ちゃんのおでこに、いつものようにブチュッとキスをした。
「やめい。」
と言いながら今日子ちゃんは笑った。
そんな今日子ちゃんは、黙っていたら、綾瀬はるかに似ている。
ピシッ、ジーッ。
どっさりといただいた絹さやは、茹で上がるとキレイな鮮やかな緑色をしていて、何も味付けをしていなくても、それはとてもとても甘かった。
#チャレがや 今回のテーマは「#女優」とのことで。ちょうど昨日、綾瀬はるかさんの映画についてのインタビューを見ていて、「綺麗だなぁ〜、帰ったら綾瀬はるかがいたら最高だなぁ」と呟いていたところでした笑。そんなところから生まれたショートストーリーです。
みくまゆさん、コッシーさん、いつもありがとうございます♪
