【エッセイ】シュポシュポと夏
シュポシュポシュポシュポ
シュポシュポシュポシュポ
すでに陽がのぼりはじめている夏の朝、ウッドデッキに出て私はせっせこシュポシュポを踏む。右足で踏めばそのうち右尻がダルくなり、足を替えればダルくなる尻も替わる。シュポシュポにつながるカラフルな青いホースは、大きなビニールプールにぶっ刺さっている。
まだ子どもたちがすぅすぅ寝ている間に、気付かれないように、ムクムクとプールは膨らんで、まあるい水色の輪っかが立ち上がる。庭の水やり用の立水栓にカチッと散水ホースを取り付けて、手際よくリールをのばすと、蛇口を大きく捻ってタイマーをセットする。
時間とともに水の溜まったビニールプールは、たぷんと太ったスライムのようにヒヤッと冷たそうに仕上がった。
予報では今日も真夏日を記録すると言っている。
そうなのだ。
だからここまでしておけば、「こっちのもの」。
フフフ。しめしめ。
すでにじんわり汗をかいている私は、それでも涼しい顔をして、いつも通りの朝ごはんを用意する。
それぞれに起きてきた子どもたちは、ぼやぁっとおふろスキーやコッシーを観たりしながら、もちゃもちゃといちごジャムのついたやわらかい食パンを頬ばる。やわらかなほっぺがベタベタと甘くなる。
「はやくー、パン食べて!お手手とまってる!」
「はみがきはー?はみがきするよー?」
「お着替えは?お着替えしてから遊んで!」
だんだんと日差しに室温も上がるにつれて、マイペースな子どもたちにイラつく私の体温も上がっていく。暑いのはみんな一緒なのに。
「はい、◯◯ちゃん、カーテン開けて。」
と、窓に一番近くにいた長女に声をかけると、
「はぁい。」
とシャー、シャーと大きなカーテンを開けていく。そして、レースのカーテン越しのウッドデッキに、そう!長女は見つけるのだ。
「ママ!!!プールッ!!」と。そして、
ねー!△ちゃん!⭐︎ちゃん!プールだよっ!!
やったー!プールだー!
水着は?水着!
水でっぽうもしよ!あとあれ、お風呂のやつ!
と子どもたちのテンションはぶち上がる。
フッフッフ。
しめしめだ。
喜ぶだろうと思ったよ。
素直なキミたちでよかったよ。
ここまでくれば、もう私は楽勝なのだ。
年齢も違えば性格も違う子どもたちを、意のままになんて動かせないのはわかっている。
けれども、同じ楽しみを前にすると、彼らは急に団結して動き出したりするのだ。
「はやくプール入れるように、◯◯しよっ!」
と誘うと、お着替えも、歯磨きも、お片付けだってテキパキとして、なんなら姉妹で助け合いだしたりもする。
「△ちゃん、はやく!おねぇちゃんがこれやってあげるから、おトイレいってきて」だなんて。
タオルと水着を用意して、水鉄砲やぷかぷか浮かぶおもちゃやスーパーボールもたくさん用意して、とうとうチャポンとプールに入った彼女らは、キャッキャッとひたすら楽しそうで。
それから夢中で1時間も2時間も遊んでいて。
私は、足湯のように素足をプールにつっこんで、Tシャツ短パンで水鉄砲にうたれながらも、文庫本を読んだりして。
散々遊んだ子どもたちは、お昼ごはんのそうめんやおにぎりを食べるやいなや、すやぁ〜っとお利口にすっかりお昼寝をしてくれた。
暑い暑い夏に、ともすればそれだけでイライラしてしまう夏に、ぷよんと朝から膨らましたビニールプールは、ほとんどワンオペ育児だった私には、お互い楽しくて涼めるとっても強い味方だったのだ。
濡れたってすぐ乾く夏だもの。
ところであのシュポシュポは、
シュポシュポ以外なんて呼ぶんだろう。
みくまゆ会、今回のお題は「#プール」ということで。もう社会人や大学生、高校生になっている子どもたちが、まだ小さかったころの夏を思い出して書きました。Tシャツ短パンで、どっちが子どもかわからないくらいに遊んでいたあのころの子育ても、大変ながらとっても楽しかったんだなとキラキラした思い出です。
今年の夏はまた暑そうですね!
プール、行けるかなぁー。
