【空き家をめぐる記録 #21】代位者|Episode7-2
代位者
ある時、飛び跳ねたくなるような良さそうな物件を見つけた。
けれども惜しくも入札期間が終了したあとだった。
どうしても内容が知りたくて、有料で資料を取り寄せられるサイトを見つけて初めて取り寄せてみた。
同時に登記も調べた。
相続放棄された管財人付きの競売物件で、場所は慎人が間借りしている隣街の地域だった。父も兄も仕事はその地域が主で、立地条件も日当たりも間取りも今まで見た中で最高だと思った。
隣の敷地には大きな作業場があり、渡り廊下で繋がっていた。その事業の荷物が広縁にびっしり積まれており、浴室は著しく荒れていた。
ペットボトルやカップ麺が山積しているような散乱した感じではなく、時が止まったような、苦しい生活を過ごされていたような風景だった。
古い物件にきれいなものはないのでそれほど気にならなかった。
魅力的だったのは石造りの門と裏門まで付いていたことだった。
門から少し斜めに見え隠れする玄関が素敵だった。
玄関を上がると応接間があり、広縁から眺められる庭も広く、手入れさえすれば立派で豪華な敷地になると母と舞い上がる気持ちになっていた。
空き家でも親戚が近くに住んでいることが多く、気を遣うやり取りが結構あったから、前所有者が相続放棄しているという気の要らない自由さが何よりだった。
登記に初めて見る「代位者」という文字が目に留まった。
相続人不在、代位者は市、債権者が市役所となっていたので、父と母が市役所へ出向いた。
書類を見て慌ただしく数人が奥で調べている様子で、だいぶ待たされた。
結局「次回まで待つように」と言われ帰宅した。次回はかなり先になるという。
このころはまだ競売物件のことを詳しく知らず、怖いもの知らずの行動を取っていた。
家がない、失うものが何もない状態だったから、怖いというより「安い」と条件に合う物件を見つけると期待に心が躍った。
物件が見つからないときのほうが怖かった。
いつまでこの状態が続くのかという不安が常にあった。
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