【空き家をめぐる記録 #17】唯一の望み|Episode3-1
唯一の望み
「やめます」
申し訳なさそうではあったけれど、そうおっしゃった。
わが家も値下げまでしてもらいながら即決できずにいたから、おじいさんはとても残念そうで、先方が断ってきたことに不満げだった。
おじいさんは、私たちが最初に声をかけた時にFAXで思いを綴ったことを覚えてくれていた。
「あの時のように手紙を書いてみたら」
と提案してくれたけれど、手持ちの現金がなく「買います」と言えない自信のなさから、そうする気が湧かなかった。
家が任意売却期間中で不動産屋さんに任せている最中、金銭的余裕など到底なかった。
唯一の望みは、その家に付いていた定期借地権だった。
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