【空き家をめぐる記録 #19】「無理ですね」と言われた日|Episode5-3
任意売却中だったわが家がとうとう競売物件となっていた。
けれどあまり怖くはなかった。
立入調査と執行官との面談のために、引っ越しの荷造りと同時に部屋をなるべくきれいにしようと、母と地道に片付ける日々が続いた。
立入調査が行われた。
各部屋を周り写真撮影から始まった。
一階はキッチン、リビング、洗面所、浴室、トイレ、各部屋、二階はサンルームと三部屋のうち一部屋だけだった。
私は自室にいたが、一人の方がサッと一枚撮り終えて意外と早く済み、印象も紳士的だった。
聴取は玄関で行われた。
一通り進み、父が保証金についてどうなるのかを聞いた。
私も一番気になっていたから、期待が膨らんだ。
ショックな言葉が耳に入った。
「無理ですね」
一気に、この先に未来が見えないという怖さが襲ってきた。
わが家は、五十年後に土地を返還する一般定期借地権付きの住宅だった。
事前にインターネットで調べた際、このような場合の保証金は「絶対に返還される」という記述を見ていたので、きっと大丈夫だろうと思っていた。
それだけに、「無理」という言葉は頭に重くのしかかった。
立入調査は三十分ほどで終わり、翌月には借家へ引っ越すための準備が控えていた。
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