【空き家をめぐる記録 #23】どうしても買ってもらえないのか|Episode9-3
どうしても買ってもらえないのか
「不動産屋さんを探しているので待ってほしい」と言われた。
その後、紹介された不動産屋さんを訪ねたが予約扱いのまま帰ることになった。
物件や町内会のことまで再三聞かれ、契約する気があるのかと徐々に不安になってきた。登記の作成に日数がかかり年を跨いでしまうとのことで、予約した不動産屋さんにお断りを入れた。するとその後、奥様から電話が入った。奥様からは初めてだった。
「どうしても買ってもらえないのか」と懇願され驚いた。不動産屋さんを通じて契約できたと思い込んで安心していたようで、契約ではなかったことを伝えると非常に驚かれていた。
関東の方からも購入の話があったが上手くいかなかったと教えていただいた。お人柄は申し分なく、お互いに知らないことが多くて残念な結果になってしまった。
あのころの私たち家族は、年内には越せるかもしれないと気が急いていた。今になって思えば、あの焦りの底には、信じたい気持ちと裏腹の、ごく小さな疑いがあったのかもしれない。けれど私は、温かく接してくれた売主さんを疑いたくなくて、その気持ちにそっと蓋をしていた。
のちに気になって調べてみると、あれからすぐに売却されており、無事に買い手がいてくれたことに安堵した。
登記を見ると、買い手の方は住宅が密集した窮屈な地域にお住まいの方だった。きっと山に囲まれた静かな暮らしを求めていたのだろう。
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