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【空き家をめぐる記録 #20】父は変なところで律儀だった|Episode6-3


入札期間から開札まで約三週間。売れなかったらという心配は、なぜかまったくしていなかった。

開札日を確認すると、わが家だった家は一件だけ入札され、売却が確定していた。「売却された」という印象しか残っていなかった。確定日がどういうものかも、よく知らなかった。

後で登記を調べると、入札確定から十一月末に入金されていた。入金を済ませずに業者を引き連れて鍵の引き渡しの話し合いになっていたとは、てっきり入金済みだと思っていたから驚いた。

父は変なところで律儀だった。競売となり金銭的余裕などないのに、後で請求されると言って、売却された自宅の残置物を数か月かけて全て処分し切った。

調べてみると、残置物の撤去費は買受人が債務者に請求できる権利があるものの、実際には債務者の経済事情を考えて請求しないケースがほとんどだという。

入札する側の体験談を見ていると、残置物はそのまま出る人が多いから、その費用も支払う覚悟で入札するとよいという内容が参考になった。父は買受人からすると、相当に楽な債務者だったのだろう。

変なところで律儀な人だった。
その律儀さがいつも自分のほうにばかり向いて、家族には決して向かないことを、当時の私は、まだうまく言葉にできずにいた。

印象に残った不動産屋さんの体験談があった。

マンションの一室を落札し交渉しようとしたところ持ち主と連絡が取れず、弁護士に頼み強制執行をして現場に立ち会ったという、画像付きの記事だった。

一つ一つ部屋のドアを開けるとき、住人が万が一亡くなっていたらという言葉が印象的だった。実際には住人はすでに荷物を残したまま引っ越しており、部屋のテーブルに鍵が置いてあったという。

この記事の印象が強く残り、のちに自分が似たような状況に遭遇するとは、このときには思いもよらなかった。

ようやく念願の保証金が入金された。
官庁納があり慌ただしい年末のことだった。通帳記入だけして帰宅した母から、とんでもないことを聞いた。


「金額が違う」



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