【空き家をめぐる記録 #17】わが家になると思っていた家|定期借地権の家だった|Episode3-2
母は売りに出してから初めて知ったと言っていた。
父は本当に知らなかったのだろうか。
その家は、五十年間の契約期間が満了すると土地を地主に返還する『定期借地権』付きの一戸建てだった。
当時はまだ珍しかった定期借地権付きの住宅だった。
父が勤めていた建築会社の社長さんが面倒を見てくれたというが、父がどこまでこの制度を理解していたのかはわからずじまいだ。
今になって思えば、いつか返すことが前提の家だったのだと思う。
引っ越してから十八年。
手放すにあたり、定期借地権の保証金が返還されることに望みをかけ、それを空き家購入の資金に充てることにしていた。
売れるまで手元には現金がない。
手に入れたい物件があっても即決できないのが最大の悩みだった。
かといって借家暮らしは初期費用がかかる。
直しながら暮らせる空き家へすぐにでも越したかった。
資金もなく順序も違っていたけれど、じっとしていられずに空き家探しを始めていた。
「空き家で困っている人」と「住む家がなくて困っている人」が、心地よくやり取りできれば——そう思っていた。
わが家も以前、祖父が亡くなり祖母の介護が続く中で遠方の家と敷地の手入れができず困っていたとき、「作業場が欲しく、生活も苦しい」という方との出会いで救われた経験があったからだ。
けれど家探しはそんなに甘くなかった。
どう見ても雑草に覆われたまま放置しているのに「大事に使ってくれる方に売ります」という言葉が気に食わなかった。
大事にせず放置している持ち主が言う言葉か、と憤りを感じていた。
買ったあとはどう使おうと自由ではないか。何のために売るのかと疑問に感じた。
それからしばらく、
また転々と空き家探しが続いた。
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