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【空き家をめぐる記録 #24】塩を用意しておいてほしい|Episode10-1

塩を用意しておいてほしい

その年の暮れ、百六十万円で売りに出されている家があった。地元では有名な、インターネットでも多くのキャンペーンを打ち出している大きな不動産屋さんだった。

年が明けた月末に内見の予約が取れた。

内見当日、父と母は物件へ出向いた。その日はたまたま競売物件の公告日と重なっていて、気持ちは内見する物件に向いていた。玄関前の道路は広く日当たり良好で、裏は田んぼが広がり四角い土地の形だった。所有者も遠い場所に住んでいるようで気兼ねがなさそうだった。

父と母が内見に行っている間、競売物件も確認してみると、同じ方角の地域に一件の物件が掲載されていた。

興味本位で三点セットを見てみたけれど、これまでのように真剣に見る気分になれなかった。トイレが汲み取り式だと分かり、あっさり諦めた。頭の中は内見しに行っている物件のことばかりだった。

電話が鳴った。父の携帯からだったが、出てみると母の声だった。


「家に着くまでに塩を用意しておいてほしい」


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