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大相続時代到来

大相続時代がもたらす構造変化

ここに、ある意味、恐ろしい言葉があります。

その言葉は「大相続時代」。

これは、団塊の世代が後期高齢者となる2025年頃から本格化する、相続件数と相続財産規模が急増する時期を指しています。

超高齢社会の進展に伴い、今後も日本の相続資産市場は拡大が続き、この「大相続時代」が社会構造の大きな転換点になると言われています。


「大相続時代」の背景にある主な要因は三つです。

【1】団塊の世代の高齢化

1947年から1949年生まれの団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年が、高齢者人口のピークを形成する大きな転換点となります。

【2】死亡者数の増加

年間の死亡者数が増加する「多死社会」の進行に伴い、相続が発生する件数も増加の一途をたどっています。

【3】相続税の課税対象者拡大

2015年1月の税制改正で相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられたことにより、相続税の申告が必要となる人が中間層にも広がり、件数が増加しました。

相続資産市場の現状と規模

現在、日本国内で1年間に相続される資産総額は、年間約50兆円と推定されています。この巨額の富がどのような形で残されているかを見るのが、国税庁の「相続税の申告事績の概要」です。

最新の令和5年分(2023年)のデータでは、相続財産の構成比は、現金・預貯金が約35.1%、土地が約31.5%、有価証券が約17.1%、家屋5.0%、その他11.4%となっています。

国税庁 令和5年(2023年)分 相続税の申告事績の概要

この内訳から、二つの課題が浮き彫りになります。

第一に、不動産(土地・家屋)の課題です。
両者を合わせた不動産関係は全体の約36.5%(31.5% + 5.0%)を占めていますが、納税の必要性から換金(売却)を余儀なくされるケースが増え、これが空き家問題のさらなる深刻化につながる可能性が指摘されています。

第二に、金融資産(有価証券)の変動リスクです。
インフレや地価、株価の上昇により、過去に作成された遺言書や想定されていた遺産分割の割合が、現在の実勢価格で見ると不公平になるリスクが高まります。これにより、遺産分割をめぐる家族間のトラブルが増加する懸念があります。

課税割合の増加

課税割合の推移は、「大相続時代」がすでに中間層にまで及んでいることを示しています。課税割合は2014年の4.4%から2023年には9.9%へと急増しました。これは、10件に1件が申告対象となる水準であり、一般の世帯にも相続税の負担感が広がっています。

課税割合 (%)
平成26年 (2014年) 4.4%
平成27年 (2015年) 8.0%
令和2年 (2020年) 8.8%
令和3年 (2021年) 9.3%
令和4年 (2022年) 9.6%
令和5年 (2023年) 9.9%
…今や、10件に1件が申告対象

出典:国税庁『相続税の申告事績の概要』(各年分)

今後の見通し:相続を通じて動く資産額は、控えめに言っても1,000兆円

今後の見通しとして、2030年までに相続を通じて動く資産額は、控えめに見積もっても1,000兆円と推定されています。
野村資本市場研究所『拡大続く相続資産市場の注目点』

死亡者数が増加する「多死社会」の進行により、相続件数自体が増えています。母数が増えるのですから、単純に考えても市場が拡大することが予想されます。

特に、配偶者が亡くなった後の「二次相続」で相続税が課税される世帯が増え、納税資金の確保などが大きな課題になると見られています。

また、個人的な見解として、休眠預金の払い戻し額の増加も、この「大相続時代」と無関係ではないと思われます。2024年度には約522億円が払い戻しされており、これは相続手続きを通じて長年忘れられていた口座が発見されている一端を示していると予想しています。

まとめ:円滑な資産承継が鍵

大相続時代は、単なる経済現象ではなく、税制、不動産、家族関係といった社会全体に影響を及ぼす構造的な変化です。課税割合の上昇は、この問題が一部の富裕層だけのものではなく、一般家庭にも深く関わるようになったことを示しています。

遺産分割のトラブルを避け、不動産を負動産にしないためには、生前の準備と、資産の構成比の変化を意識した専門家との連携が不可欠です。「相続は起こってから考えるもの」ではないのです。

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