ドラマ『修学旅行で仲良くないグループに入りました』-進藤監督回の感想編-

▫️はじめに

 私は今、大きな幸福感に満たされている。

 ドラマ『修学旅行で仲良くないグループに入りました』のアフターストーリーの全編がFODにて解禁されたからだ。

 所謂、“修仲ロス回避“というものだ。

今回は前回の『-出会いと気付き編-』の続編、『-それぞれの監督回のついての感想編(進藤監督回)-』について書き記したいと思う。

▫️4人の校長先生

 本作には4人の校長先生がいる。(と勝手に思っている)

 第1/7/8/10話をご担当の進藤丈広監督。
 第2/3/4話をご担当の藤澤浩和監督。
 第5/6話ご担当のハセガワタクヤ監督。
 そして、第9話ご担当の安見悟朗監督の4名だ。

 ドラマ版「風見野高等学校2年5組」の校長先生が上記4名で本当に良かったと心から思う。

テレビドラマの撮影において、複数の監督が1つのドラマに携わることは決して珍しくない。むしろ当たり前に近い。(以下、「ナックイメージテクノロジー」の土井 裕泰氏インタビューより引用)

” 普通の連ドラのサイクルでは一人の監督が全てやるのは物理的に無理なんです。放送のひと月前くらいから撮り始めて、一方で台本をつくり、編集作業なども行う。準備、撮影、仕上げが並行して行われていて、つまり準備する人、撮影している人、仕上げている人が同時にいる。もちろんチーフディレクターがキャラの設定、トーン、世界観などの柱はつくります。ただやはりディレクターが変われば微妙な違いは生まれるわけで、僕はそれもテレビドラマの良さだと思っています。異なるディレクターがやることで意外なドライブ感が生まれたり、当然ながら競争意識も芽生えるでしょう。それはけっしてマイナスなことではないと思っています。”

土井氏が述べている” 微妙な違いの良さ ”について、今作にも大いに感じられた。

 今回は、私が感じた進藤監督回の良さについて書き綴ろうと思う。
(※あくまで私の感想なので、監督の意図とは異なるかと思います!!)

▫️進藤監督は「時間」・「空間」・「色」を操る魔術師

【第1話】
”冒頭30秒のつかみ”

・ナレーション/台詞がない30秒。
 私はかろうじて原作を拝読済みだったため、どの場面なのかが分かったが、かなり攻めたスタートだと感じた。00:31秒~が始まりであってもお
かしくはない。
 また、深夜1時、このようなゆったりとしたスタートは、1週間の疲れを癒してくれるようでとてもホッとした。

”疑似授業参観”
・教室のシーン。
 担任が生徒に呼びかけるシーンは、教室の後ろから全体を映し、まるで2年5組の授業参観に来たような疑似体験をしているかのよう。
 このほかにも、生徒が多く映る場面は、全体を引きの映像で映していることが多く、とてもリアルさを感じた。

”THE・コメディ”
・「時間」・「空間」・「色」とは関係なくなってしまうのだが、1話のコメディ感がとても好きだ。クラス分け時のSE(効果音)、グループに誘われた時のテンポ感。四天王紹介時のキラキラ感(4人それぞれにSEがついてるの仕事が細かすぎる)というか、堀田のミスリード感よ!!冒頭こそ度会と見つめ合ってたけど、グループに誘うのも堀田、四天王紹介の最後も堀田だと、相手役は堀田だと思うって!(これがサスペンスってことか)    
(※なお、真相は7話にて明かされる)

”青の使い方”
・ここでの”青”とは日置の好きな色の青ではなく、映像的な意味での”青”である。  
・私はVE(Video Engineer)(ざっとこんな仕事)というニッチな職に就いていたことがあり、職業病で、映像を見ながら「青いな」、「赤いな」としばしば表現することがあった。うまく説明できないのだが、映像全体が「青みがかっている」ことを「青い」と使っていた。
・1話は特に「青い」シーンが多かったように思える。もちろん、時間的な表現(「早朝」など)で使われることもあるが、日置の不安な心情が青くすることで視覚的にも伝わってきた。

【第7話】
”度会の心情とマッチした時間の流れ”
・全体的に落ち着いていて、過度な演出もない。渡会のモノローグともマッチしていて、とても観やすい。
・また、渡会のモノローグ中の簡氏の” 葛藤/困惑/喜び "の表情の切り取り方すごい好き。(「優しそうに見えたけどな」後の戸惑いと喜び、きっかけを見つけた時の喜び、≪話せた≫時の噛みしめる表情など)
・渡会が日置をグループに誘うあたりから、映像が「赤く」(オレンジっぽく)なる。渡会の心情が表現されているようで、心が温かくなった。

”日置の残像”
・「優しそう」と思いもよらない言葉を耳にした渡会は、日置が去ったあと、日置が座っていた席をじっと見る。驚きと喜びで、しばらく見てしまうここのカットが個人的にとても好きだ。
・また、” 日置朝陽 ”と名前を確認するシーンが、1話冒頭に日置が進路調査に名前を書いたシーンと重なり、胸が熱くなった。

”オレンジのバトンタッチ”
・前々話、前話(5、6話)でのカーテンのシーンや海辺のシーンで印象的だったオレンジ色。7話のラストシーン(6話ラストの続きではあるが)でも登場する。5話では、放課後の時間軸に加えて、渡会の感情が溢れ出してしまう感情にマッチしたオレンジ。6話では、渡会の告白後、これからの二人の関係性に対して含みを持ったオレンジ。7話では、渡会からの告白に戸惑いながらも、真剣に考え、言葉を紡ぎ、一生懸命に返事をする日置の背中を後押しするかのようなオレンジ。
 陸上競技のバトンリレーのように、見事に繋がれたオレンジ色のバトンタッチ。たまたまかもしれないが、この美しいオレンジリレーに私の心もオレンジ色に染まった。

〔若干気になった点〕
・三天王が委員会の日(おそらく4月14日)、季節外れのセミが鳴いている。(撮影時。夏だった?)
 私も大学生のころ、実習でドラマを撮影したことがあるが、ロケ撮影の時、冬の設定で思いっ切りセミが鳴いていたことを思い出した。
・日置は返事の途中で泣いてしまうが、その涙は渡会に拭ってほしかったな。最終的に日置が自分で拭っちゃったのが少しもったいなかった。

【第8話】
”美しすぎるスローモーション…”
・採寸のシーンのスローモーション。美しすぎないか??
 マジで画面に吸い込まれそうになった………。

”からのスピーディ連行…”
・辻谷の天才的な仕掛けによって、日置を連行する渡会。採寸のスローと対照的なスピード感。この緩急が、観ていて気持ちよかった。

”東雲さんの想いと日置の葛藤…”
・原作と大きく違ったこのシーン。私はこの演出でよかったと思う。
原作では東雲さんの大演説中に日置のモノローグが入るが、本シーンでは一切入らない。日置の表情だけで魅せる。監督が藤本氏に託したシーンに観えて、藤本氏も見事その想いに応えていた。ラストカットの” 手紙の下からの日置 ”は面白い構図でお気に入りのカットである。
・お気に入りといえば、その直後の” 廊下を歩くシーン ”も大好きだ。
文化祭準備で盛り上がっている生徒(明)と葛藤でもがき苦しむ日置の背中(暗)のコントラストが修仲史上1番残酷で美しいシーンだった。

”美術室”
・日置の葛藤中の表情はアップではなく、KS(ニーショット:膝から上)なのが良かった。より日置の表情に目が行き、画面に吸い込まれる。このシーン、≪どしたん日置??どしたどした日置!≫って呼びかけていました。
・日置の想いがあふれるシーン、渡会の肩ナメなのがいい。肩があるのと無いのとでは見え方が全然違う。(ところどころ若干アングルが違ったのは、何回も撮り直したからだろうか・・・)

”オレンジと簡氏への信頼”
・同じく美術室でのシーン。日置からの告白に、安心した渡会。そんな渡会を祝福し、包み込むかのようなオレンジ。はい、ここでもオレンジきました。もうね、オレンジが来たら名シーンと思ってください。
・ここのシーン、全話10話をとおして、屈指の長回しのシーンなんです。
 台詞量も多い。このシーンを長回しで行こうと思った監督、そこには簡氏への信頼感があってのことだと思う。そしてその想いに見事に応える簡氏。不安な表情からの安心した表情への切り替えが素晴らしかった。「安心した」からグッと光が増す演出、ぶわーっとお腹の中から全身が温まる感覚になった。

〔若干気になった点〕
・ここでも日置の右目から涙がこぼれるが、その涙もそっと渡会に拭ってほしかった。7話でもしていたら、いい繋がりになっていたかな、と。

〔小話〕
”ハッピーハロウィン”
・これは本当に偶然だと思うが、日置が色塗りを担当しているのが” オレンジ ”色のジャック・オ・ランタンって最高すぎないか!?

【第10話】
”恋をしている日置”
・文化祭後~クリスマスパーティーでの期間で、ちゃんと恋をしている日置の表情が随所随所でアップで撮影されていて、≪あぁ、日置、ちゃんと恋してるんだな・・・≫って納得ができたし、心が温かくなった。ありがとうございます。

”日置が歩んだ一年”
・担任の葛西先生に、2年5組の最後の学級日誌を提出した日置。
教室に戻る11秒。このシーンが私が10話の中で最も印象的なシーンだ。
・ここでの暗明(あえてこの並びで述べたい)の使い方は、” 日置が歩んだ一年 ”が見事に表現されていて、圧倒された。2年になり、友達が一人もいなかった日置。孤独で不安しかなかった(暗)日置が、友達が出来て、恋をした(明)。その軌跡(奇跡)が、暗い場所から明るい場所に向かって歩く描写とリンクしていて、自然と涙が出た。(誰かこの涙を拭ってくれ)

”締めくくり”
・二人が教室を出て行ったあと、2年5組の黒板に書かれたありがとうメッセージにゆっくりとズームインしながら流れる最後のED。そして流れる日置のモノローグ。どうしても≪あぁ、終わってしまう…どうかこのまま終わらないでほしい≫と感傷的になってしまう。そんな私を励ましてくれるかのように、玄関から出てきた二人から、右へのパン(流れるように撮ること)にて、三天王の登場。(ありがとな、お三方よ。)安堵感が半端なかったり
・進藤監督、『両片想い』のブリッジがあるなんて聴いてないです。。
そして5人の笑顔をスローで映さないでください。泣いてしまいます。
・そして本当のラストシーン。日置のモノローグで終わるのか…。
5人の映像ではなく、葛西先生のデスクに残された修学旅行の写真で終わるのはエモすぎる。(5人以外のほかの生徒の写真もちゃんとあるとこもリアルすぎる)大団円すぎて、映画館で初めて拝見した時、スタンディングオベーションしそうになりました。(家で再観したときはちゃんとしました)

▫️おわりに

 進藤監督回を振り返ってみて、強く感じたのは、「時間」・「空間」・「色」をとおして、登場人物の心の揺らぎや変化を、決して急がせず、丁寧に見守るような演出の連なりだったということだ。
 日置が歩んだ一年、渡会が抱えてきた想い、そのすべてが、静かに、しかし確かに積み重なっていく。その“積み重ね”を信じさせてくれたからこそ、私は何度も胸が熱くなり、涙を流してしまったのだと思う。

 次回は第2/3/4話をご担当の藤澤浩和監督回について語ろうと思う。


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