弁護士報酬とフリーランス法の支払期日(1)

最近、中部電力が弁護士等に報酬の支払期日等を明示しなかったとして、公正取引委員会から勧告を受けました。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス法」といいます。)においては、報酬の支払期日及びその支払期日を一定の期間内に定めることが要請されています。

(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
第三条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

【フリーランス法3条1項】

(報酬の支払期日等)
第四条 特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた日。次項において同じ。)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

【フリーランス法4条1項】

弁護士の立場からみて、報酬の支払期日をクライアントとギリギリ詰めるということは多くありません。もっとも、フリーランス法が施行され、これが弁護士にも適用されるとすると、今後、弁護士の報酬支払期日をどのように定めていくべきか検討する必要がでてきます。

すなわち、弁護士からクライアントに提案する支払期日がフリーランス法に則していない場合、クライアントにフリーランス法遵守の有無の検討という余計な手間をかけることになります。クライアントとしても、ご自身を守るという意味で、弁護士にもフリーランス法が適用されることを知っておくことは、昨今の公正取引委員会の活発性を考えるに重要なことだと思います。このことは、他士業(弁理士等)にも当てはまりますので、弁護士報酬と記載されている箇所は士業の方ご自身の報酬に置き換えてお読みください。

本稿(次回も含め)では、フリーランス法の原則に従うと弁護士報酬の支払期日をどう設定しなければならないのか、その原則論を少し検討してみたいと思います。この検討にあたっては、弁護士報酬の特殊性を考える必要があります。

1.そもそもフリーランス法の適用があるか?

(1)役務提供型
クライアントと弁護士との間の契約は委任契約であり、弁護士がクライアントに提供するものは「役務」(サービス)であって、「物品」ではありません。

このような役務提供型の契約における業務委託もフリーランス法の適用対象です

3 この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。
二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。

【フリーランス法2条3項2号】

(2)委託者側の要件
委託者側、すなわちクライアント側の要件として、「業務委託事業者」または「特定業務委託事業者」に該当することが必要です。

5 この法律において「業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者をいう。
6 この法律において「特定業務委託事業者」とは、業務委託事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 個人であって、従業員を使用するもの
二 法人であって、二以上の役員があり、又は従業員を使用するもの

【フリーランス法2条5項、6項】

要は、従業員を使用すれば「特定業務委託事業者」であり、使用していなければ「業務委託事業者」ということになります。

報酬支払期日の明示義務との関係でいえば、「特定業務委託事業者」、「業務委託事業者」のいずれに該当するかという点は関係がありません(両者ともに取引条件は明示しなければならない)。

他方、報酬支払期日を一定期間内に定める義務との関係でいえば、上記のフリーランス法4条1項は、主体を「特定業務委託事業者」としていますので、「従業員を使用するもの」である必要があります。もっとも、法人依頼者で従業員を使用していない場合は稀ですので、実務上は、同項の適用は避けられないと考えられます。

なお、委託者は「事業者」であることが必要ですので、個人(消費者)のクライアントから依頼される案件はフリーランス法の適用対象ではありません

(3)受託者側の要件
受託者側、すなわち弁護士側の要件として、以下のとおり、「特定受託事業者」に該当することが必要です。

第二条 この法律において「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 個人であって、従業員を使用しないもの
二 法人であって、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。第六項第二号において同じ。)がなく、かつ、従業員を使用しないもの

【フリーランス法2条】

①法人形態ではない弁護士では、従業員等(事務員やパラリーガル)を使用していない場合、②弁護士法人においては、社員及び従業員等がいない場合において、「特定受託事業者」としてフリーランス法の適用があることになります。

法人形態でない弁護士事務所(①)において、経営者弁護士は従業員等を使用していることがほとんどでしょうから、フリーランス法の適用はありません。他方、私のように事務所に所属しているアソシエイト弁護士は従業員を使用していませんのでフリーランス法の適用があることになります。

以上のフリーランス法の規定をまとめると以下の図のとおりになります。

2.取適法は?
なお、話が逸れますが、2026年1月1日より施行された取適法もフリーランス法と同様、支払期日を定める義務が発注者に課せられています。

もっとも、取適法においては、業務形態ごとに適用の有無が異なるという特殊性があります。フリーランス法が基本的には業務形態を問わず適用され、広範な適用範囲を有するのとは異なります。

取適法では、「役務提供委託」に関しては、他者に業として提供する役務を(再)委託する形態のみが適用対象とされ、自ら用いる役務(自家利用役務)は対象外とされています

4 この法律で「役務提供委託」とは、事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること(建設業(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第二条第二項に規定する建設業をいう。以下この項において同じ。)を営む者が業として請け負う建設工事(同条第一項に規定する建設工事をいう。)の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く。)をいう。

【取適法2条4項】

クライアントは、自身の法律問題を解決しているのであって、他者に対して法律業務を提供しているわけではありませんので、「役務提供委託」がなく、取適法の適用はないと考えられています(取適法テキスト32頁(Q&A32))。弁理士が行う出願等の業務も同様です

少し長くなりそうなので、次回で弁護士報酬の支払期日をフリーランス法に従って定めるとどうなるのかについて解説したいと思います。

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