見出し画像

vol.115「持つべきは自分より優秀なメンバー:一生ものの体験『無記名 カイゼン要望アンケート事件』」


本を読む、有料のセミナーに参加する、外のコミュニティに参加する等して得た、「特に役に立っていること」を書き出してみます。
即効性のあるハウツーというよりは、習慣や考え方です。

前回「サードプレイスは定期的に『入れ替え戦』をしよう」という話をしました。
一つのコミュニティだけに長居すると、居心地はよくなり、成長曲線は鈍化するから、意識して移動したほうがいい。新しい場を探して参戦するのがいいと思っています、ということです。

私的に参加するコミュニティで活動するにしても、所属する組織で仕事をするにしても、フィードバックの仕組みがあるかないかで大きく結末が変わります。
「フィードバックの価値」について、続きで書いてみます。

6.フィードバックは投資してでも確保せよ

◆この世でもっとも手に入れにくいもの。

自分の苦手や弱点を自覚することは、なかなか難しいものです。「客観視する」といっても年齢と経験を重ねると自信がついて頑迷にもなります。

かといって、人はネガティブなことをわざわざ言ってくれません。いわゆる部下はもちろん、上司であっても連続的・定常的に指導してくれたりはしない。「人を指摘して言い続ける」ことは、かなりのスタミナ・労力を消耗するからです。
費やす時間、投入する根気、面倒くささ。数十年生きてきた他人を変えることの難しさ、伝わらない徒労感、予想される反発(遺恨)。自分も周囲からどう見られるか。指摘指導は、するほうも「圧倒的にめんどうくさい」のです。

逆にいうと、「弱点、欠点を指摘してくれる人を、身近に持っておく」ことができたら、それはかなりの威力を持ちます。
人を雇ったり配置したりする権限を持っているなら、そういう気質・能力の人物を近くに置けると良いです。そこまで行けなくとも、いま身の回りにいる人、チームメンバー、部下に、頼んでみる。面と向かって言いづらそうなら、形を変えて、とにかく「フィードバックをもらう仕組み」を考えたほうがいい。

「フィードバック」はこの世でもっとも手に入れにくいものだと思っています。

◆「無記名アンケート事件」。

きっかけは、社外で受けたセミナーでした。
二十歳すぎくらいの、自分の半分しか生きていない若者のプレゼンスピーチ。不登校引きこもりから様々な障害を乗り越えて、社長の右腕として管理者の練習をしている。年上の部下(社員さん)と向き合ってる、というお話でした。

自分はチームメンバーと真摯に向き合っていただろうか。自分をチェックする仕組みを作ってきただろうか。彼の言う『自分が成長するには「部下」が必要』と考えていただろうか。自分が部下を成長させてあげる、ぐらいに思ってなかっただろうか。今からでも、何ができるだろうか。
いろいろ考えました。

いろいろ考えて、思いついたのが、
「無記名方式・山下に改善してほしいことアンケートを、チームメンバーに頼んでみる」
です。

自分がモチベーションを上げるのはけっこうですが、微妙に変換されていますよね。相手に負担が発生する。
ちょっと想像すればわかるように、言われたチームメンバーからすれば「とっても面倒くさい依頼」です。

でもこのときは確信に燃えていたので、出社してメンバーに声をかけました。

「ちょっと時間取れる?みんなに相談があります」

忙しい中、メンバーが集まります。

◆メンバーの反応は?

「自分が本当にリスクを取って、皆さんと向き合っているか、できることをやり尽くしてるか、と考えてて、『できてないことがたくさんあるな』と思ってます」
「そこで頼みがあるんだけど、『山下に、ここは改めてほしいこと・無記名アンケート』を書き出してもらえないかな」

顔を見合わせるメンバー。

「無記名方式、発言者がわからないように工夫してもらって、言いたいことを言ってくれるほどありがたい」
「もらった意見をすべて採用するとは限らない。けれど、言われたことで逆恨みしたりいわゆる報復したりはしない、と約束します」
「もし嘘ついて裏切ったときは、本部長宛でも社長宛でも、ぜひ告げ口メールを出してもらってかまいません」
「特に急ぎません。私のいない場で皆さんで相談してもらえれば」

言われたほうからすれば、まぁ面倒くさいことを言い出した。「リスクしかないやん案件」です。

このときは、「...まぁ、主旨はわかりました」と苦笑いの反応で、いったん解散しました。

◆想像を超えるレスポンス。

それから特に何も起こらず、話題に出ることもなく、
(やっぱり難しいか。まぁ 難しいよね)
と思いかけていました。

3~4週間経った頃でしょうか。リーダーの一人から声をかけられました。

「こないだの、『山下さんへの無記名アンケート』ですが、一通り書けたので、ミーティングの予定を入れさせてもらいました」
「え?やってくれたの?」

「はい。山下さんのいないときに集まってホワイトボードでブレストやりました。パワーポイントで簡単にまとめてあります

(パ、パワーポイント??
 ホワイトボードでブレスト???)

大変なことになってるぞ…!

「あ、ありがとう! ミーティングぜひお願いします」

聞くと、私が出張で終日不在の日に集まって書き出してくれたそうです。
「あの件どうする?」
「面倒くさいよね(笑)」
「スルーしましょうか」
となりかけたところ、チームリーダーが、
「いや、こういうことは真剣に受けて立つべきだと思う」
と言って、場を持ってくれたのだとか。

とてつもなくありがたいことです。

こうして開かれたフィードバックの会。
そこにはA4ヨコ1枚に、びっしり書かれていました

◆「しいていえば」の破壊力。

小会議室に座らされ、チームリーダーが壁に映ったスライドをもとに説明してくれました。

冒頭に、「基本的にはいまの山下さんの路線で運営してもらえればいいと思います。その上で、しいて言えば」という主旨の、気遣いの前置き、3行。

そして本題、約20行。

まるめて抽象化して、ほんの一部を挙げると:

「勝手にケンカをはじめないでください。後フォローするのは我々です」
「悪い報告のとき、途中で不機嫌な表情をされると、報告しづらい」
「交渉術も大変けっこうですが、居留守作戦はまわりが迷惑します」
「仕事を引き受けてくるのはいいと思います。ただし、、、、」

ケンカの後始末をしてもらう。不機嫌を顔に出す。居留守を使う。本人が聞いても「おい、子どもかっっ!」とツッコみたくなります。
これではどちらが上司でどちらが部下だか、さっぱりわかりません。

「基本的には」3行、「しいて言えば」が20行。
およそ半世紀生きてきたなかでも、記憶に残る、気遣いとリアリティのバランスの取れた、大人の文章であり、内実ある資料でした。

◆一生モノの「経験」。

このエピソードはその後、私にとっていわゆる"鉄板ネタ"になりました。
同僚・友人たちからは感心と、苦笑い。上級上司たちには100%ウケました。
指摘されている事項がいずれも実に私らしい欠点(伸びしろ)で、言語化の見事さも手伝って、読み物として面白いから。「めちゃくちゃ当たってるじゃん!」と話す相手 話す相手 大笑いです。
こんなことをする管理職はほかにおらず、受けて立ってくれるメンバーもいないから。リスクを取っていること。信頼関係と緊張感。上司と部下たちの良い意味でのボケ。
その価値が、長年マネジメント層にいる人間なら誰でも、理解できるからです。

価値とは本質的に「正しさ」よりも「希少性」が生む、という事例だと思います。


とにかく、どうにかして手に入る仕組みをつくること。コスト(お金や手間や面倒)を注ぎ込む。「フィードバック」には、それだけの価値があります。

一生の宝となる体験をさせてくれたメンバーには、言葉では言い表せないほど感謝しています。

最後までお読みくださりありがとうございます。


◇お仕事のお手伝いメニューを試行提供中。※テスト段階のため無料です。
・形態:Zoom等を用いての遠隔ミーティングを主に想定。
・対象:個人事業主の方で心理的安全性の確保された壁打ち相手が欲しい方等。

「ご案内:個人事業で提供するメニューと、提供できる価値(2024.1版)」




いいなと思ったら応援しよう!