若見え
早朝のテレビは、
どのチャンネルも通販番組だ。
洗剤一滴で真っ黒な油汚れが消え、
魔法のクッションに座れば生卵すら割れない。
そんな「奇跡」がループ再生される時間帯。
そこへ、珍しく早起きしてきた妻が登場。
寝起きのままトーストをかじりつつ、画面に映し出された、
オールインワンジェルの
『コラリッチ』を見ている。
プルプルのジェルが肌に吸い込まれ、モデルさんの顔がパッと輝く(ように見える)演出。
それを見た妻の第一声は、実に冷ややかだった。
「はい嘘〜。んなわけないやん。
ライトの加減やん。」
トーストをかじる口は止まらないが、その目は検察官のような鋭さで画面をスキャンしている。
過剰な演出、光の加減、
モデルの表情。
妻の「嘘発見器」が激しく反応しているようだ。
番組が後半に差し掛かり、
ビフォーアフターの比較画像が大写しになる。
【ビフォー】
照明はやや控えめ。
表情も、どこか疲れ気味。
セットしていない髪。
【アフター】
照明全開。 口角5度増し。
オシャレなウィッグ装着
すると妻から、さらに深い一言が漏れた。
「もうな、歳に抗うな。自然でええねん……無理すなよ」
それは、アンチエイジングという概念そのものを否定する、ある種の悟り。
無理をして若返ろうとする現代社会への、鋭いアンチテーゼのようにも聞こえた。
だが、彼女の視線は一秒たりとも画面から逸れない。
「抗うな」と言いながら、
手元のパンを口に運ぶ動作はもはやオートメーション化され、
意識の9割はジェルの「浸透力」に注がれている。
結局、番組のエンディングで
「今から30分以内にお電話を!」
のテロップが消えるその瞬間まで、妻は食い入るように見届けていた。
「信じない」と言いながらも、
最後まで見てしまう。
それは、心のどこかで
「もしかしたら……」と期待してしまう、人間らしい可愛らしさの現れなのかもしれない。
というか、
起きてまだ10分も経ってないのに、よくこんな朝から毒づけるよな。
…と、妻の背中を目を細めながら見つめる僕。
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…と、以前この記事を書いて
下書きに置きっぱなしになっていました。

なんですか?これは。(・ω・)
