綺麗な手の彼女|掌編小説(#シロクマ文芸部)
「ガラスの手みたいで綺麗」
料理をする彼女の手を横から見て、そう言った。「白魚のような指」と言うのは、どうにも誉め言葉に思えないから。
僕としては純粋に褒めたつもりだったが、彼女は「ガラスの手って、なんか血が通ってないようでイヤ」と笑いながら言う。
「まぁ、確かに」
バツが悪い僕に、彼女は「それに、『綺麗な手』って言われると、家事とか全然やってないみたい」と追い打ちをかける。
「そんなことないよ! 料理も掃除も洗濯も、その他いろいろ……僕にはもったいない彼女だよ! ええっと、働き者の、ガラスのような綺麗な手をした素敵な女性!」
汚名返上とばかりにまくし立てる。すると彼女は料理をする手を止め、僕の目の前にすっと左手を差し出した。
「この手、好き?」
「もちろん」
「じゃあ、ストレートに『綺麗な手だね』でいいんじゃない?」
「うん、そうだね……」
――無駄にカッコつけると、ロクなことがないな……。
勝手に打ちのめされた僕に、彼女は「ふふ、ありがとう」と言って、また料理を再開した。
――まぁ、幸せだからいいか。
結局、そこに落ち着く。
(了)
小牧幸助さんの「シロクマ文芸部」、参加用です。
先週は途中まで書いて、結局〆切に間に合わず、無念のパス…。
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