獣人十色|毎週ショートショートnote
「ほら、お前も付けろよ。トラの耳、可愛いじゃねぇか」
「僕はいいって……」
俺たちは近所の保育園や幼稚園で、読み聞かせのボランティアをしている。今日行く予定の幼稚園では動物の絵本を読む予定で、児童や保育士たちが厚意で動物の耳のカチューシャを作ってくれた。
少し恥ずかしいが、作ってくれた児童や保育士たちの気持ちは無駄にしたくないので、みんな付けたのだが、高野だけは頑なに拒否している。
「恥ずかしいと思ったらダメだって。開き直りだ、ほれ!」
高野の頭に、強引にトラ耳カチューシャを付ける。
「おお! 似合ってる似合ってる!」
「グルルル……」
高野は低く唸った。
「みんなー! 始めるよー!」
絵本を広げた瞬間、高野は俺の手から絵本を奪い取り、口にくわえた。
「ちょ……。あはは! このお兄さん、すっかりトラになりきってますねー!」
――おい、絵本返せよ。
小声で言い、手を出すと、高野は俺の手に噛みついた。悲鳴が上がる中、高野は勢いよく外に飛び出す。
それから1週間が過ぎても、高野の行方は分かっていない。
(了)
たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」に参加しています。
今週のお題は「獣人十色」です。
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