紅葉鳥|掌編小説(#シロクマ文芸部)
――紅葉鳥……か?
玄関先に紅葉鳥がいた。スズメより少し大きいくらいの体で、トテトテと歩き回っている。
紅葉鳥とは、11月上旬から下旬にかけて、主に東北地方に飛来し、体が黄色と赤の中間のような色で、時期的に紅葉を連想させることからその名が付いた。「紅葉と幸運を運んで来る」と言う人もいるが、ここ数年はその姿を見ていなかった。
――なんだ? 俺を嘲笑いに来たのか?
昔は東北の紅葉スポットナンバーワンの座を勝ち取ったこの温泉街も、今はすっかり寂れてしまった。小さな温泉宿を経営している俺の仕事と言えば、毎日開店休業状態の宿の中を掃除することだけだ。
俺はデジカメで紅葉鳥を撮り、「珍しいお客さんが来ました」とSNSにアップすると、突然電話が鳴った。
「明日から4名で2泊、予約したいんですが」
予約を受けて電話を切った瞬間、また電話が鳴る。
「10名って大丈夫ですか?」
宿はすぐに満室になった。
――まさか……紅葉鳥のおかげか?
宿は連日満室となり、俺は宿の周りに餌をまき、たくさんの紅葉鳥を呼び寄せた。
――いっそ捕まえるか。
ホームセンターで材料を買い込み、紅葉鳥を捕獲するための罠を作った俺は、夜中に庭のあちこちにそれを仕掛けた。
翌日、罠の中には、体が真っ白になった鳥がたくさん死んでいた。
――え?
それから宿泊予約はぱったりと途絶え、宿は廃業となった。
(了)
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