月見の石|毎週ショートショートnote
月を眺めて酒を飲む、そんな夜が、またやってきた。
その時は決まって家中の電気を消して、できるだけ真っ暗に近い状態にするのが、俺の中の決まりだ。そして傍らには、缶チューハイと小さな石を置いて、夜風に身を任せる。
その小さな石は昔、祖父がどこかから拾ってきた。
「月のかけらだ」
祖父は大真面目な顔でそう言い、俺に石を差し出した。見た目も重さも触った感じも、その辺に落ちている石と変わらない。
俺の祖父は少し変わった人で、時々不思議なものを拾ってきては、その物語を話してくれた。月の石も、そんな話の一つだった。
正直なところ、子供の頃は作り話だと思って信じてはいなかった。信じろという方が無理だ。
変化は、祖父が亡くなった後に起こった。ある満月の夜、月の石がうっすらと光を放つようになった。
――ただの石じゃなかったんだ。
それ以来、月が満ちる夜になると、この石は月に呼応するように光った。
月は、何も言わない。石も、何も言わない。
ただそこにあるだけ。
でも、確かに、そこにある。
(了)
たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」に参加しています。
今週のお題は「月見バーバー」です。
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