見出し画像

第十三章|最後はミクロで差がつく:現場を守る基本動作

プロジェクトの成否は、
派手な意思決定だけで決まるわけではない。

最後に効いてくるのは、
日々の小さな基本動作だ。
セキュリティ、資料、Officeツール。
「できているつもり」になっていないかが、
静かに差を生む。

この章では、
これまでの話を地面に下ろし、
現場を守るためのミクロな視点を整理する。
派手さはないが、
最後まで仕事を崩さないために欠かせない話だ。


1.セキュリティ事故を防げ|事故は突然起きない


―― 事故は突然ではなく、積み重ねで起きるという話


ほんの一瞬で20億円以上の損害

情報セキュリティ事故が、世間を騒がせるようになって数年が経つ。極めて単純な理由で、プライバシーに関する情報が漏洩することに関しては、事象がわかりやすいからだ。個人情報が例え漏れたとしても、そこから詐欺に遭うとか、実害を伴う事例は少ない。しかしながら、世の人には「コンピュータシステム」に対する漠然とした不安があり、なにが起きるかわからないという人や、お祭り状態になって騒ぎたいだけの人など、色々いるので、皆が一斉に群がるニュースになるということだ。

2000年代に、ADSLモデムが登場し、それまでは電話回線に毛の生えた程度だったナローバンドが、ブロードバンドとなって、しかも定額かつ低額で楽しめる時代になった。それを牽引したのは孫正義さん率いるソフトバンク軍団だ。Yahoo!の日本法人を経営し、検索と言えばYahoo!という常識を作り上げ、昼休みになるとYahoo!ジャパンのサイトを見るためにみな同じページを見たものである。

プロキシサーバーは代理人と訳されるが、昼休みにYahoo!ジャパンのサイトにつなぐために、数分待つ、というIT企業が続出していたいい時代だ。

そのソフトバンクは、Yahoo!BBという名称で日本全国の駅前商店街で、ADSLモデムを無料で配った。もちろん、家が電化製品のIT化に積極的な人もいただろうが、それでもISDN回線で、FAXの送信速度と大差なかった。それが、ブロードバンドになると、画像は瞬時に表示できるのはもちろん、動画も送受信できるという触れ込みで、一般人からは縁遠かった世界が、初期投資に関しては無料で、しかも月額は4000円程度ということで、申込みに行列ができるほどだった。

それだけであれば、孫正義さんは英雄になっていたかもしれない。しかし、突貫工事のような形で全国にモデムを配った末、そのYahoo!BBの会員情報が、450万件漏洩した。

これに関しては、原因はソフトバンク社内では共有されたかもしれないが、一般に知られているのは、IDとパスワードのずさんな管理だった。増える加入者に追いつかない運用だったのだ。

結果としては、Yahoo!BBは、会員一人あたりに500円の金券を配り、謝罪した。そのときの500円という金額は、以降の企業の情報漏洩「お詫び」の標準的な金額となった。

当時もネットは隆盛で、半ば「お祭り」状態となった。一人あたりは500円だが、概算で22億円以上のお詫びを払ったことになる。一つのセキュリティ事故だけで、一瞬にして20億円以上が飛んでいくのだ。

日本人は、もともと、地域社会でも玄関に鍵をかけない文化があったりして、おおらかな文化も一部あったが、会社のセキュリティ、そして、預かった情報セキュリティに関しては、Yahoo!BBを他山の石として、厳重な体制が敷かれることになった。


会社はだれのもの?

情報セキュリティ事故とは離れるが、例えば芸能人の不祥事があったとして、その芸能人が出ている映画などの封切りが間近だとしよう。映画そのものを楽しみにしていた消費者や、苦労して撮影したスタッフを労うためには、映画を公開してしまえばいいと考えても、株主や、ステークホルダーの企業に、矢のようなクレームが来ることを阻止できないので、結果的には映画が封印されたりする。

ここで、少し雑談をするが、企業は誰のものだろうか。答えは、株主のものだ。株主は、自身が保有する株の価値が下がることを嫌う。企業の情報漏えい事故は、株価に直結するため、実際の被害が出ていようが出ていまいが、株主の避けたい事態であることは間違いない。

IT業界は、他の企業もそうではあるが、協力会社ありきのビジネスが主流となっている。つまり、一つのプロジェクトが発足すれば、ユーザー企業、元請け企業、協力会社と、多種多様な籍を持つプロジェクトメンバーが、一同に、または全国の拠点で、開発などに取り組む。一定のルールがないと、情報セキュリティ事故が起きてしまう。

ハインリッヒの法則という理論があるが、1つの重大インシデントの裏には29個の軽微な事故が隠れ、そしてさらに300件のヒヤリハット事例があるという。労災に関する研究結果であるが、ついうっかり、という事態が多くなれば、大きな事故に繋がり、即企業の価値を崩壊させるので、いの一番に、現場に入ると、セキュリティ教育が開かれる。

社会人として仕事をする際には、「なぜ」ということをきちんと突き詰めて進めるべきだ。文句や批評は後回し。人の行動・言動の理由を考え抜いて、意図をきちんと把握することが必要だ。セキュリティ教育も、ただ形式的に開催されているわけではない。企業の生命線とも言える「情報」に関する事故を防ぐことが、開発技術よりも優先されていて、そしてそれはあなたが着任した最初の現場のみの風習ではなく、どこに着任しても同じ、ということだ。

テールゲートの禁止、セキュリティカードの徹底

企業がセキュリティカードとフラッパーゲートを構えてずいぶんと時間が経過したが、残念ながらセキュリティカードの発行には時間がかかる。その企業独自の文化に依存するものだが、簡易的にデジカメでパシャリと顔写真を撮って貼り付けるだけの運用もあれば、事前にサイズ指定の写真を提出させておきながら、着任後3週間も待たされる、という文化もある。

しかし、このテキストはそういう実際の運用はさておき、人の後ろにくっついて、ゲートをスルーしてしまうことを禁ずる。みなさんが毎日通っている駅の改札機と同じで、一人ひとりがきちんとセキュリティカードをかざす運用を心がけて欲しい。


パスワードを人の見えるところに貼ることは厳禁

IPA情報処理推進機構の学者さんの講演を聞いたことがあるが、一番いいパスワードの管理法は、すべてのサイトで異なるパスワードを定め、それを一枚のメモに書いておいて、財布の奥深くにしまっておく、だそうだ。

日本人を含めて、人は、類推されやすいパスワードを設定している。自分だけは違う!と言い張る人もいるが、abcdeだったり、12345であったり、passwordまたは一部分だけ変えてp@sswordなどと付けたりする。

管理の煩雑さを避けるために記憶に残りやすいパスワードにする気持ちは理解できるし、世の中にはパスワード管理アプリも複数ある。色々試した結果、手書きで一箇所にしまっておくという意見に、IPA情報処理推進機構の学者さんは達したのだろう。

志の高いみなさんとは違って、パスワードを付箋紙に書いて、パソコンのディスプレイの枠にペタペタ貼っている人もいる。信じられないと思うかもしれないが、事業会社でも実際に存在するのだ。こんなに情報セキュリティに厳しい世の中になっても、普段の自分は間違っていない、と思い込む人は、他人の諫言など耳に入らないのだ。


安易にクラウドサービスにログインすることは厳禁

一昔前だとドロップボックス、最近だとGoogleドライブやマイクロソフトのOneDriveなど、どこでどんなデバイスを開いていてもアクセスできるクラウドサービスは人気が高い。しかしながら、安易に接続すると、そのクラウドサービスが狙っている真の目的を見抜けず、個人情報などが拡散されてしまうおそれもある。

ドロップボックスでは、デフォルトの設定で、接続しているスマホがあると、その写真フォルダを同期してしまうという酷い仕様が存在する。あなたのスマホの写真が、自分が使いまわしているデバイスで閲覧できるのは便利だが、複数人がアクセスできるクラウドに、自分のスマホの写真フォルダが同期されてしまったら・・・、どんな恐ろしい事態なのかわかっていただけただろうか。だから、業務上必要で、かつ指示を受けたものならば繋いでもいいが、ただ、本人が、「IT企業のくせに遅れているな。クラウドに繋げば便利なのに」という意見だけをもって接続してはならない。


マクロのダウンロードは気をつける

VBAは便利である。使い慣れたExcelに、自働化ツールとして、いろいろな機能を足すことができる。例えば、値をセルにコピーアンドペーストしたら、次の行の該当セルにジャンプする、なんていうことも、大量データを扱う事務処理作業だったら、有用だ。

最近ではAIで、VBAをコーディングしてくれる機能も具備されつつあるが、「こうしたい」という需要があったら、サイトを検索し、マクロをダウンロードする、なんてこともあるだろう。

Googleの努力によって、ウイルス入りのトラップ(トロイの木馬のような)が仕込まれているサイトは駆逐されつつあるが、筆者が経験した、マクロダウンロードによるウイルス感染の様子を記載する。

作業者は、すでにExcelマクロに関しては相当の知識を持っていて、その企業内では余人をもって代えがたい存在となっていた。しかしながらその評価に奢ることはなく、あくまでも謙虚に、「企業のお役に立ちたい」「しかし複雑なオペレーションは極力省きたい」という姿勢のもと、マクロを多用していた。

保守性という観点から見れば、属人的なマクロは確かに弊害がある。しかし、その企業では、成果物(週次の帳票)への時間的制約が、事業拡大とともに非常にタイトになっていて、その作業者が作ったマクロを、システム化するまでの予算は確保できず、公平な第三者から見れば「フリーライド(ただ乗り)」状態で活用していた。

ある日、作業者は、マクロを更新して、更に使い勝手をよくしようと、あるサイトからダウンロードボタンを押下した。その瞬間、ウイルスだろうと思われる事象が画面に現れたので、作業者は即LANケーブルを抜いた。

しかし後の祭りで、ウイルスはLAN配下のPCに拡散してしまったようだ。

直接的な影響は出なかったが、作業者を束ねる管理者と、その企業の情報システム課長間では、最悪の事態、つまり、個人情報の流出が発生するかしないかを見極めるため、毎日定例会議を行い、挙動不審な業務端末はないか、また、某巨大掲示板などにリークされていないかなど、チェック業務が次から次へと、もっと上の立場の人間から命令され、忙殺される事態となった。幸いなことに、外部影響や、内部の業務端末及びシステムへの影響は皆無だったが、収束宣言をその立場の人が社内に情宣したのは、ウイルス感染から1年後だった。結構大変だ。


某巨大SIerのお偉方の馘

筆者が経験したプロジェクトでは、少し古い話になるが、セキュリティ事故に対する世間の目が厳しくなった折であり、当初は1か月に一度のセキュリティ研修を、若手社員向けに行っていた。シンプルにいえば、中堅や管理職以上は参加の義務がなかった。しかしながら、セキュリティ事故が発生したら、事業本部長に何らかの罰が与えられるという運用になった。最初は譴責だったが、次第に、事業本部長が交代するというルールに変わった。ここでいうセキュリティ事故とは、ニュースになってしまうような事態ではない。酔っぱらって、会社支給のノートPCを無くしてしまったなどである。すぐに影響が出ていない状態でも、事業本部長の異動という形で、全社員(関係会社含めて数万人以上)の襟を正してもらいたかったのだろう。しかし数万人いると、セキュリティカードを紛失したとか、鞄を紛失してその中にUSBメモリが入っていたとか、事故は収まらず、セキュリティ研修は2週間に1回開催され、管理職含めて全社員参加が義務化された。

そもそも、当時だって、USBメモリでデータを持ち運ぶなんてナンセンスだったし、ノートPCだって、便利だから皆持ち歩いていたが、その会社では、倍額の投資をして、お客様先と自社屋用を用意していた。よって本来は持ち運ぶ必要がなかったが、接続できるサーバーの違いや、ファイル管理が面倒だから、メールの宛先一覧が登録してあるから、などということで、過渡期の混乱はあったが、超大手のSIerであり、また、当時はその会社がパソコンのメーカーでもあったので、セキュリティに関しては過剰なほど、ニュースなどに出る事態を避けていたのである。

便利さを追求する人間側と、それに追いついていないセキュリティと、相反する事象ではある。強固にしすぎても、自社だけならともかく、お客様が添付ファイルを開けないというような事態も生まれる。

色々事例を見てきたが、セキュリティに関して、他山の石がたくさん集まったところで、本章を閉じる。

現実は厳しいし、ヒューマンエラーは必ず起きる。しかし、人によって、エラーを防ぐこともできるのだ。

2.Officeソフトの肝|使えているつもり問題


文字入力はできるけど

最近では、大学入試共通テストに「情報」の科目が追加されるなど、人間とITをつなぐ世間の動きは喧しい。スマホに慣れている世代がパソコンの文字入力に苦労する、というのはあくまでもネタであり、そういうことに時間をかけて学ぶのも、このIT社会では初歩的すぎてどうかなと思うので、役に立つことを願って記述する。

Wordは文書記述用、Excelは表計算用、PowerPointはプレゼン及び説明資料用だ。こういう根幹を把握しておくだけで、ツールの使い方がうまくなる。iPhoneを使っている人は、それぞれに対応するソフトがあることを知っているかもだ。Androidはというと、Googleが作ったOSなので、Googleアプリとしてのドキュメント、スプレッドシート、スライドが具備されている。「共有」して複数人が同時に作業でき、時代に合わせて進化しているが、根幹は「何を伝えたいか」である。

Officeソフトは道具なので、トンカチとカンナの例をいつも述べるが、釘を打つときにトンカチがなくても、カンナの重みがあれば釘は打てる。しかし、木材の表面を削ろうと思ったら、トンカチではどうにもならない。各ソフトの共通操作と、固有の操作を肌で覚えて、技術とは別角度のリテラシーとして、自分のものにしてしまおう。昨今のビジネス社会では、Officeソフトは避けて通れない。


[共通] 改段落と改行

おそらくキーボードで一番使うキーであるEnterキーだが、メモ帳などのテキストエディタでは意識しなくても、WordとPowerPointにおいては、意識をする必要がある。

結論から言ってしまうが、Enterキー単独では「改段落」である。マークも鍵型(⏎)になっている。皆さんがイメージする「改行」は、WordとPowerPoint、この2つのソフトにおいては、Shift+Enterキーである。マークは下向きの矢印(⇩)だ。

改段落と改行では、意味が異なる。段落を変えることは、文章であれば一文字のぶら下げが自動的に入る。Wordは文書作成ソフトなので、便利である。昨今は、WEBページが世の中の情報の主体になっているため、一文字ぶら下げ文化も廃れた感は否めない。改行ならば、一文字ぶら下げが効かないので、意図的に行頭を揃えたい、とか、勝手に(ここ重要ポイント)箇条書き記号や段落番号が入力されてイラっとした場合(多くの人がこう思ってしまう)、改段落と改行が異なるのだということを、ソフトが指摘しているのだと考えよう。

PowerPointでも、箇条書きにしたい際に、Enterキーは重要だ。長らく、「箇条書き」「3つのポイントで示せ」など、ビジネスシーンでは盛んに喧伝されているが、箇条書きには改段落操作がとても重要だし、改段落をした後にいっかいtabキーを押すと、自らが設定した第2レベルの行頭文字(箇条書きや段落番号)が自動で付与される。もう一回押せば第3レベルだ。行き過ぎた場合はShift+tabキーで一つ前に戻る。頻繁に使う操作なので、記憶して欲しい。

Excelにおいては、共通操作にして欲しかったが、セル内の改行はAlt+Enterだ。次項で説明する。


[共通] スペースキーで行頭を揃えようとしない

東京から大阪に向かうには、電車の各駅停車もあれば、新幹線もある。自動車やバイクという交通手段を用いて自分で運転することもできるし、深夜バスもある。時間を優先したい人は、飛行機を使って、大阪に行く。飛行時間は1時間で、離着陸に時間がかかるだけだ。

マイクロソフトのOfficeソフトも、何かを表現したいときに複数の方法がある。ショートカットキーだって、頻繁に活用するものは指で覚えてほしいが、あくまでもショートカットなので、順番にマウスを動かせば、目的は達成できる。

空白を表現したいときも、スペースキーを連打すれば、空白はできる。印刷するだけなら、見た目上の問題はない。

しかし、IT社会では、一度作った文書は、今後使い回される。皆さんが白紙から作った資料は、今後誰かの雛形になる。そう考えれば、印刷後だけをイメージして作成するよりは、将来にわたって利用してもらうことを考えて、書式を設定しなくてはならない。

Excelについても、セル内に少しテキスト数の多い文字を入れた場合、セル内で改行することもある。皆さんが出会う書類でいうと、課題管理表やリスク管理表がそれに当たるだろう。プロジェクトが複雑になっていけば行くほど、リストとしての管理表に、追記がどんどん足されていって、日付なども混在し、セル内で改行をしなくては視認性が低くて仕方がない、という事態になる。

そもそも、表計算ソフトであるExcelに、文字を大量に書き込むことがマナー違反なのだが、計算ということを考えず、表であるということに重きを置かれた文書は多くなった。それだけ、ITが巷間に広がったということであろう。

他の例では、レビュー指摘表などもある。これは、レビュー数をカウントするという必要がある(品質向上)ため、申し訳程度に、行数をカウントするマクロなどが組み込まれていたりする。最近ではあまり見なくなったが、好き勝手に編集してしまったり、セルを結合して中央揃えをしたりすると、カウントする関数が働かなくなる。

Excelでも行頭にスペースを押せば空白はできる。「自動的に折り返し」がセルの書式設定でされていれば、スペースキーを押し続けると、改行「された」ように見える。しかし、スペースは空白なので、改行したいという意図を機械は判定してくれない。そういうときには、Alt+Enterの操作が必要だ。この操作に関しては、意外と盲点なのか、間違えて覚えている、または覚えていない人が多い。課題管理表などは長い文章が書かれるため(人は備忘のためならなんでも書き留める癖がある)適宜改行を入れざるを得ない。覚えておこう。

[PowerPoint] スライドマスタの重要性

PowerPointの個別の機能の話に遷る。一般に、社会人経験が長くなるほど、PowerPointの作成頻度は高まってくる。プロジェクトの課題管理ということであれば、一日に10枚程度作って、週に一度の定例会議には50枚の資料が提出される、という場面もある。

スライドマスタを意識する人は少ない。前述した通り、イチから資料を作る場面が少なくなっているし、スライドマスタをバックオフィス部門が作成して、全社に配布している企業も多い。9割の人が、スライドマスタの機能を知らなかったりする。マイクロソフトも慣れたもので、最近のOfficeのバージョンでは、スライドマスタ機能は右側の方のメニュータブにある。使用頻度が低いものは、右側に寄せられるのだ。

スライドマスタは、多くても4種類くらいに設定すると便利だ。要らないレイアウトは削除する。マイクロソフトは縦書きのレイアウトまでデフォルトテンプレートに組み込んでいるが、縦書きの出番はほぼない。

スライドマスタは「親」スライドと「子」スライドに分かれている。共通点を自身で編集し、それが親に当たるのか子に当たるのか、子だったとしても、共通パーツの位置は揃えた方がプレゼン時に美しく見えるので、PowerPointのコピペ機能をフル活用して、オブジェクトの位置が正確に一致するようにしよう。

ページ番号も、自由に振れる。先頭のタイトルスライドには表示しないことも可能だ。その他に、ヘッダーやフッター、会社のロゴなど、華美と地味の中間を取るのはセンスだろうが、センスを磨いてもらいたい。

[共通] インデントの重要性

中央揃えは極力避けた方がよいというのが、最近のトレンドである。理由は極めてシンプルで、WEBページに普段慣れている人間にとって、中央揃えよりも、左揃えの方が読みやすいということにほかならない。日本の俳優の阿部寛のホームページをご存じだろうか。世界一軽いHTMLではないかとネットでたびたびネタにされる紹介ページであるが、そのサイトですら、タイトル以外は中央揃えを使っていない。

そんな世の中だからこそ、インデントには注意を払うべきである。行頭の一文字空きは、段落が変わっていることを明確に示すし、段落が意味段落になることは小学校の国語で学習した通りである。Word文書を作ることも少なくなっているから、この操作は忘れてしまうかもしれない。しかし、PowerPointでは、長文を書くよりは端的に箇条書きにすることが多く、それはすなわち、資料の伝えたいことの効果を高めるために重要だ。よって、インデントは、スライドマスタの時点で入念に設定する必要がある。

ルーラー機能を使わない向きも増えてきているが、全体の統一感を出すための方法として、概要程度は使える方がいい。ルーラーで操作できるインデントは、下向きのホームベースと上向きのホームベース、そして最後の四角いベースの3つが設定できる。下向きが1行目、上向きが二行目、四角が両方いっぺんに設定ことが可能になる。腱鞘炎にならないように注意しながら、うまく活用できることを願っている。

特にPowerPointでは、スライドをF5キーの操作を用いて、プレゼンテーションモードで見せることが多い。インデントが不ぞろいでは、スライド送りをした際、見ている側に、「少しずれたな」と瞬間的に相手に思わせてしまう。何度も繰り返すが、見ている相手には、内容を理解して欲しいのに、形式面で頭の中を占拠してしまっては、イイタイコトが伝わらない。

[Word] スタイルの重要性

小説家であれば、一つの小説を書けば、よほどのことが無い限り、一行の文字数/一ページの文字数の設定程度をいじくるだけで、書式は変更しないものだが、ビジネスを生業とする社会人は、様々な種類の文書を作る必要性があるため、例えば契約書の書式と、このテキストのようなものは異なる。

雑談を挟むが、契約書については、日本人特有なのか(筆者は海外の生活経験がないので)条文の一つ目は段落番号を振らずに、二つ目からは「二」「三」と書く風習がある。このスタイルを設定するのは結構難しい。難しいが、それは会得する必要はあまりない。契約書を作るのは顧問弁護士だったりするし、内容のチェックのことをリーガルチェックと呼ぶが、それにはスタイルは関係ない。理解できればいいのだ。

何気なく「スタイル」という言葉を出したが、例えばこのテキストにおいて、小見出しで使っているのは「見出し2」と筆者が勝手につけた。そこには、現在皆さんが見ている表記でできるように、細かな設定がしてある。

このスタイルがないとどうなるか。人間は書く作業3割、推敲する作業7割であると、繰り返し述べているが、その推敲作業で、小見出しをもっとおしゃれにしたいという欲求が起きた際に、100頁以上の本文の中を行きつ戻りつして小見出しに書式を定めていって、最後まで来たらまた違ったアイデアが出てきて最初から。ということがよくあるのだ。やり方は自分で割り切ればいいが、時間のリミットが決まっている場合は、「パソコンなんだからいっぺんに変えられないのかよ」と憤りを感じるはずだ。しかもこのスタイルに関しては、Wordの「ホーム」タブにあるので、極めてメジャーな使用方法だと言える。Microsoftは、PowerPointにおけるスライドマスタよりも、Wordにおけるスタイルの機能が使用頻度は高いと判断しているのだろう。

スタイルを決めてしまえば、大胆にいえば、メモ帳やサクラエディタなどで文章を乱雑に記載し、Wordにテキストを貼り付けて、順番にスタイルを指定すれば、求める文章の体裁が整うということだ。字下げインデントなども、一回決めておけば、それが繰り返されるので、是非活用しよう。


[Word] 段落の一字ぶら下げなどの最低限の設定

Wordの「ホーム」タブには左から、クリップボード、フォント、段落、スタイルの順にリボンメニューが並んでいる。使用頻度順だとすると、段落というメニューはやはり重要なのだ。たくさんの機能があるが、日本ならではの縦書きにも対応したメニューもあり、全部は使いこなせないだろうし、その必要もないが、下記メニューはよく使う。

① 箇条書き
② 段落番号
③ インデントの増減
④ ぶら下げ
⑤ 行間

この5種類くらいは使えるようにしよう。安心して欲しい。覚えろとは言わない。いつでも検索して、自分でできるんだという自信があればいい。Wordもあまり使わなくなってきたので、その程度でいいと考える。


[Word] 目次の作り方

目次も、大量の文書を作るならば必要だが、ここでは、「スタイルを適切に設定しておくと、目次が自動で作れる」ということを覚えておけばよい。実際にやると結構苦労するが、そもそもWordで大量の文章を書くことと、目次を作ることは、電子書籍のバイトでもしない限り、あまり出番はないが、マニュアル作成などをする場合に、技術者でもその方法を用いることがあるので、その場で苦労しよう。


[PowerPoint] プレゼンテーションでの操作

プレゼンが、現代人必須の技術となって久しいが、その際、スムーズにスライド送りをできるかどうかは、プレゼンテーションの一番重要な点とも言える。二つだけ記憶してほしい。なぜ記憶しなくてはならないかというと、スライド送りは若手の役目であり、本番ではWEBで検索する暇などないからだ。

プレゼンテーションモードにするには、F5を押す。そしてよく使うのは、shift+F5で、現在編集している画面をそのままプレゼンテーションモードにする。例をあげれば、あなたが、100枚あるスライドの55スライド目を編集していて、F5単独でキーを押してしまうと、最初のページからプレゼンテーションモードが始まる。

脱線するが、55スライド目までマウスやキーボードで手繰るのは、普段なら特に問題が起きなくても、プレゼンテーション本番では致命的だ。その場合は、脱線の脱線ではあるが、キーボードのファンクションキーの下段の英数ボタン(右側にあるテンキーを扱う癖をつけると、テンキーがないパソコンでてんぱってしまうので)でスライド数を指定し、Enterキーを押す。この例では「55」+「Enter」である。

話を戻して、F5だけでは最初のスライド(多くはタイトルスライド)に飛んでしまうので、Shift+Enterを押す癖をつけておくとよい。今編集しているスライドが画面上に現れる方が有用な場合が多いからだ。

[Excel] 何に使うかで有用機能が異なる

Excelについては、極めて多機能なため、何を覚えておけというのは断言できない。よって用途から考える。大なり小なりプロジェクトに参加するのであれば、Excelは多用するので、そのたびに「これは何を意図して作られているのか」「最低限、どの機能を使っているのか」を整理する。

プロジェクトでは、新人の作業として、コーディング(製造)に入る前に、先輩社員や派遣先のリーダーから、下記のようなものが依頼されることが多い。

WBSの作成支援
進捗集計
テスト結果集計

いずれも、Rawデータと呼ばれる、各種DBに登録された情報を基に、技術者ではない管理層・経営層に「見える化」するための作業である。スーパーマンのような技術者集団であれば、進捗なんて見える化しなくても、いつの間にか出来ている、という嬉しい展開があるが、現実の技術者はそこまで卓越しているわけではない。従って、どこまで進んだかを報告することは、プロジェクト進行における課題を見つけるためには必須である。

例として、WBSには、開始予定日と完了予定日、そして実績開始日と実績完了日を記録するシステムが、必ず存在しており、それを日々のタスクに落とし込んで、技術者たちは日々開発に励む。しかし、開発に専念すればするほど、管理業務は手薄になる。されど、週次進捗報告会は毎週やってくるので、それを目標に進捗資料を整えなくてはならない。多くのプロジェクトでは、チーム単位にPMOがいて、PMOが各要員のおしりを叩きながら、入力を促す。全員入力し終わったら、DBからRawデータを抽出し、データの羅列では「見える化」できていないので、Excelでグラフを作ったり、PowerPointで定性的[1]なコメントを付加したりして、一方で「これだけ、価値を生み出しました」という側面、そしてもう一方で「こんなに頑張っているんだから認めろ」という側面を報告するのだ。

よってこういう役目は新人に与えられることも多い。言語やインフラの専門的な知識がなくても、正確な処理をすれば、報告ができるためである。

依頼されたときになって、「開発言語は学んだけどExcelはちょっと・・・」と及び腰になってしまったら、社会人としてマイナスのラベリングをされてしまうので、できればそういう業務であっても対応できるように準備しておいてほしい。

昨今は、動画でなんでも解説してくれる世の中で、TikTokなどのショート動画でも、Excel虎の巻的なものが流通している。

筆者がざっと思いつく限りでは、条件付き書式、フィルタの使い方、文字列操作(TRIM関数など)、DB関数(Lookup関数など)、日付関数が使えれば、対応可能である。ピボットテーブルを使いたい欲求に駆られるが、大量データを相手にすると、1レコードずつチェック体制が敷けないので、痛し痒しという側面がある。

その場その場でツールをうまく使いこなそう。聞いたことない概念にぶち当たることが今後たくさん発生するが、誰だって悩んで大きくなったのだ。

第二部
ー完ー

👉 おわりに


👉 目次

【 固定リンク 】
プロジェクトマネジメントは、言葉でできている


いいなと思ったら応援しよう!