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【蛇にピアス】 芥川賞読んでいく:14冊目【2003年受賞作】

芥川賞の受賞作を片っ端から読んでいくということをしています。
今回は 第130回 芥川賞受賞作 蛇にピアス について書いていきます。

結婚なんてのも、一人の人間を所有するという事になるのだろうか

所有、というのはいい言葉だ。欲の多い私はすぐに物を所有したがる。でも所有というのは悲しい。手に入れるという事は、自分の物である事が当たり前になるという事

私はよく本を(ブックオフで)買って家に置いておく。もちろん興味のある本を選んで買うのだけど、買って読むのは半年後とか、一年後とかいう本も多くなる。現代的に言えば積読というやつだ。

積読というのは多くの人にとってはネガティブな意味合いをもつ。なぜかというと結局読まないからだ。読まないものをただ所有していること、本の価値を発揮させてあげられないこと、それが悲しいのだろう。

結婚なんてのも、一人の人間を所有するという事になるのだろうか。事実、結婚をしなくても長い事付き合っていると男は横暴になる。釣った魚には餌はやらない、って事だろうか。でも餌がなくなったら魚は死ぬか逃げるかの二択しかない。所有ってのは、案外厄介なものだ。でもやっぱり人は人間も物も所有したがる。

結婚も積読に似ているのかもしれない。

結婚したて(あるいは付き合いたて)の時は新鮮な毎日を人は過ごすし、
本を買いたての時は早く帰って読みたいという気持ちで溢れかえっている。

新鮮な気持ちは時間の流れとともに薄れていく。気持ちの薄れは、それが人であるにせよ本であるにせよ放置につながる。
放置するだけならまだしも、人の場合であれば暴力につながる場合もある。(本を日に晒して焼けさせるようなものだろうか)

ただ私は本に関しては悲観的ではない。
なぜなら、どんなに長く置いた本であっても読む機会が訪れると思っているからだ。高校生の頃に買った本(存在と時間とかマクニールの世界史とか)が家にあったとき「あった!」と喜びながら(自分で買ったくせに)読んだりしている。
なので、積読という言葉にネガティブなニュアンスが含まれている以上、私は積読という言葉を使わない。

フランソワという人を私は知らないが、本当にその通りだと思う。

ただ人は生き物であり、本は生き物ではないので、そこはもちろん違う。

私が生きている事を実感出来るのは、痛みを感じている時だけだ

私は結婚という可能性を考えてみた。現実味がない。今自分が考えている事も、見ている情景も、人差し指と中指で挟んでいるタバコも、全く現実味がない。(中略)私が生きている事を実感出来るのは、痛みを感じている時だけだ。

リストカットをしている人が中学生の時に身近にいて「なんでしてるん?」と当然の疑問を投げかけたところ、「生きている事を実感出来る」からと全く同じ言葉が返ってきた。

「分かる気もするけど、たぶんわからない」と言うと「実際やってみないとわからないよ」と言われた。

痛みという強烈な感情で、本当の問題を覆い隠してるだけじゃないのか?と当時から思っていたし、今でも少しそう思う。

私も高校生の頃くらいは生きている実感が欲しかったと強く思っていたと思う。自傷行為には走らなかったけど、それがおそらく旅につながっている。どこか遠くに行きたいのだ。

身を切ることも遠くへ逃げることも、元々は根をともにする問題であるような気がなんとなくする。(それが何か考えるべきだ)

ある種の人たちにとってこの世界を生きるってことは結構無理ゲーなところがある(インタビュー動画から)

虚無感というのはみんなそれなりにあると思うんですけど、私は結構幼い頃から強烈な「なんで生きているんだろう」というのがすごく強くあって、
ずっと考えてきたし、それなしには人のことは描けないなっていうところはあります。

13分30秒あたりから

「なんで生きているんだろう」と強く思うのは、日常で自分の意味を見出せないからである。その状態でもすんなりと生きている人間は多いのだけど、彼女の場合は固執する傾向が強かったのだろう。その産物として出てきた作品であると思う。

ある種の人たちにとってこの世界を生きるってことは結構無理ゲーなところがあると思うんですよね。その中で小説っていうのは、ちょっと頭痛薬飲むみたいな感じで、いっとき楽にさせてくれるものなんじゃないかなっていう風に思うんですよ。やっぱり根本的な治療はできないっていう

それも一つの小説のあり方だと思うが、私個人はそういう思想に基づいて書かれた小説が好きではない。「根本的な治療ができる」と信じて書かれたものが好きだから。

蛇にピアスを読んだ後も、たしか「違うな」と思ったはず。辛いことは書けている。ただ、それに向き合っていないと思った。

「私には現代の若もののピアスや入れ墨といった肉体に付着する装飾への執着の意味合いが本質的に理解出来ない。選者の誰かは、肉体の毀損による家族への反逆などと説明していたが、私にはただ浅薄な表現衝動としか感じられない。」

石原慎太郎の評言
https://prizesworld.com/akutagawa/jugun/jugun130KH.htm

これには私も同意する。

以前は群像新人賞の選考委員にも彼女はなっていたと思う。周りが硬めのことを書いてる中「なんでも良いから送ってみて」的なことをさらっと書いていて、いいな、と思った。

上の落合陽一とのインタビューでは(無料部分だけだけど)彼女は居心地悪そうにしていた。し、深掘りもできていなかった。リズムが合っていなかった。

機会があればこのエッセイを読んでみたいと思った。「なんで生きているんだろう」とその考えたことを聞いてみたい。

本の内容をほぼ忘れていたので、こちらを見て思い出しながら記事を書きました。

この人書くのうまい!


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