【制作秘話】タビオ初1足「1万円」の靴下をつくってみました。
2025年12月26日 発売
「プレミアムソックスセット」三足36,300円
こちらがリリースされました!
お久しぶりです。トッチーです。
このたび超高級な靴下の制作を担当し、ものづくり人生で初の体験をすることができました。
ぜひ企画から発売までの制作秘話をお伝えさせてくださいませ。
---着想は韻を踏むこと?-----------------------
2026年3月でタビオメンアンバサダー契約が満了する窪塚洋介さんと、期間中に共創して特別な靴下をつくりたく思いました。
ご本人と企画打ち合わせを進めるなか。窪塚さんがこの三年間でいちばん気に入られた靴下は、タビオスポーツのゴルフソックスとざっくりとした奈良の綿花で編み上げたリッチェルソックスということがわかりました。特にリッチェルの好きな理由を尋ねると
「とてもソフトな履き心地だから」
とのこと。
では、リッチェルソックスをスタートにプレミアムな靴下をつくりましょう!と窪塚さんと盛り上がりました。卍LINEというレゲエミュージックをされていて、そして役者の語彙力も合わさり
キャッチコピーが先に出来上がりました。
「リッチなリッチェルでどうすか?」
!!
その言葉のサウンドで、プロダクトまでのイメージが一瞬で閃きました。
「それ、カシミヤでやりません?」
次の瞬間
グータッチで意気投合。
季節も決めてなかったのですが、外はまだ炎天下のなか冬にリリースが決まりました。
一足目は「カシミヤの靴下」となりました。
続いて
二足目。
これは、窪塚さんがこだわっていた
「タビオとやるなら、足袋で旅するをしたい」
を、そのままカタチにしたいと、私から逆提案。
トチさんに任せます。と、即合意。
すでに、窪塚さんプロデュースのゴルフブランド8G SHOOTコラボで人気の足袋靴下をベースにアップデートさせようと、こちらもプロダクトイメージがスッと立ち上がります。
8G SHOOT TABI SOCKS
完売してカラーも新しく再販することに。
「足袋で旅する」
シルクで編み上げたパイルソックス。
こちらが二足目に決まりました。
そして、最後三足目は
なかなか決まらず。お互い持ち帰りになりました。五本指をいれたい。
と決めていたものの具体まで至りませんでした。
-数日後
プロダクトから先に発想しようと考案します。
五本指。座ってくつろぐ時。
カシミヤ→シルク→メリノ
ときたら、綿です。
それは、タビオが育てたTABIO'S COTTON
完全無農薬。奈良の綿花一択です!
そして、窪塚さんとゆかりのある徳島藍染
をプラス
そんなこんなで浮かんできたのは
「五指で五感を整える」
私から窪塚さんに提案
するとこちらも快諾していただきました!
そして、できたプレミアムなラインナップが
「リッチなリッチェル」
「足袋で旅する」
「五指で五感を整える」
この三つになりました。
---妥協しなくていいプロダクト-----------------
「リッチなリッチェル」
風合いが出ない!高難度なカシミヤの縮絨



完成するまでに、何度も何度も
編み立てしては、修正改良をすること
数ヶ月、、、。
-何に苦心したか?
それは、触った瞬間のカシミヤのあの
とてつもない柔らかさ。これを出すこと。
これが、なかなか難しい。
原料は東洋紡糸さんのPIARAを使用
カシミヤ紡毛糸の中でも東洋紡糸が長年紡績し続けている定番糸のPIARA。均一性を求めて厳選された繊維長のカシミヤ原料を用いて、糸に均一性を持たせることから、ニッティング時の目面の美しさを表現します。長年培ってきた伝統的なクラフトマンシップにより、丁寧に一本の糸へと仕立てています。原料の持つ魅力が十分に引き出されたカシミヤは、その柔らかさと風合いから、幸せや温もりが伝わってきます。
素材重視の靴下で、獣毛リッチの原料を扱うときには必ずソーピングという洗い工程を施します。
柔軟を効かせる。靴下に編み立ててから毛羽を出してふんわりさせること。そして繊維を縮ませることで物性(サイズや風合い)の変化を安定させる目的があります。
ファーストサンプルはスタイル決め。代用のカシミヤではない糸で編み立てをする。ここでも4〜5回ほどやり直しをする。私のイメージ通りになかなかあがらない。途中で針数を96Nから84Nへ変更。ボディ部分(履くとふくらはぎに当たる部分)のルーズ感が出ずに、編み立ての糸本数を二本から三本にしたり、伸縮するポリウレタン繊維を取り除いたりと、何度も修正を繰り返しました。
-ようやくスタイルが決まる
ここで、二ヶ月あまり
次にいよいよ本番糸でカシミヤを追求する。
糸は高級なはず
ただ、カシミヤ感が出てこない。
いまは、指導してくれる創業者もおらず
自分で追い込むしかない。納得できていない想いを工場へ伝えると、、。
「わたしも、これじゃあかんと思ってました」
思想が継承されているニッターの存在が
頼もしい。仕上げ方もいくつかあり
-松竹梅
松-履いた瞬間から風合い抜群
竹-洗濯を一度すると風合い向上
梅-履き込むうちに風合い向上
松は、果物でいうと熟れ熟れで食べ頃の状態。
コストとリスクと物性上、通常は竹を目指して仕上げます。ですが、これは1万円の靴下。箱を開けた瞬間のファーストタッチで感動をしてもらいたいのです。工夫を凝らします。
靴下を裏返して一度のソーピングを
表と裏で二回することに。洗いをかける靴下の分量も調整します。
倍の手間はかかりますが
やっと感動できるソフトさが出ました。

こうして「リッチなリッチェル」が完成。
「足袋で旅する」
つま先のシワを取る意外な工夫



シルクという春夏秋冬の気候に対応できる万能な天然繊維。これに、現代のファンクションを掛け合わせることでハイブリッドな靴下に仕上げようと思いました。
シルク(松村)
ココン シルク100%
繭から「生糸」にできなかった部分を集めて、それを綿状にして紡いだ紬糸を使用。生糸に比べ含気量の多いシルクの短繊維は、ふんわりとした柔らかな風合いが特徴です。保湿性、吸水性、放湿性にも優れています。繊維長が長く上質な原料を使用していますので、より光沢が有り、均一性の高い糸となっています。
https://www.matsumura-kk.co.jp/color-book/cocon-2/
-クラシカルでハイブリッド?
足袋+シルク+パイル+着圧+アーチサポート
大地を掴むための「足袋」
吸放湿に優れ潤いを与える癒しの「シルク」
低反発で足裏の衝撃を和らげる「パイル」
程よく引き締めずれにくい「着圧」
土踏まずの疲労を軽減する「アーチサポート」
足袋というクラシカルな姿に搭載された機能。
ここまで机上では完璧。
旅に必要なギアが詰まった一足として仕上がる予感がありました。
ところが、一箇所どうやってもおさまらない。
それは
つま先

8G SHOOTのゴルフソックスをベースに
シルクで編み立て

解消手法は
編み目の調整や
丁寧なつま先縫い。
何度か、手直ししてもらっても
しわがおさまらない。
ふと、別のことを思いつく。
リリースは冬。そしてオールシーズン履ける仕様にするには?シルクで真冬の指先はどうなんだろう。特に負担のかかるつま先やかかとに繊細なシルク。温めながら強度を上げる方法はないか?
+メリノ
弊社で「一番温かい靴下はどれ?」と尋ねられたら?即答で「アルパカ」で編まれたものをご紹介します。

アルパカ繊維は、着用後急速に温度があがりますが、その後すぐには下がりません。どんな機能繊維よりも高温が保たれます。天然の保温力。高地で極寒のなかで育ったアルパカさんならでは。真冬では最高です。
なのですが、今回は
そう。オールシーズンで履けること。
となると、一択です。
じんわりと温め。滑らか。むれずに快適な繊維。パタゴニアやモンベルなどの登山ウェアでも採用されているウール素材。それがメリノです。
メリノ(三甲テキスタイル)
オーセンティコ 防縮ウール100%
白度の高く柔らかいニュージーランド産のファインウールとしなやかで弾力のある豪州メリノをブレンドした防縮糸です。クリンプが強いため光沢と膨らみ感に優れます。
このメリノ最大の特徴は
調湿性
以前、このような靴下を開発しました。
ここで培った知見を利用します。
凍れはムレからもくる。それをメリノで解決。
あたたかくて吸放湿性の高いウール。これでつま先かかとを編み立てます。
すると
なんと!シワも目立たなくなりました。
羊毛の柔らかさが効果大◎

二足目の完成です。
足袋の代名詞として、密やかに名乗りをあげたいと思います笑。
次に最後の三足目
「五指で五感を整える」
立ってよし座ってよしの編みかたとは



TABIO'S COTTON
タビオが奈良で種から育てた完全無農薬の綿花。
原料はこちらで編み立てます。

どんな五本指にするか?
現在ではタビオスポーツのアイコンのひとつが
指先が分かれている靴下のレーシングラン。
発売からロングセラーを続けている人気商品。


この画像を目にした方も多いはず。
五本指ソックスの良さを一言で表すなら?
さまざま言われていますが、個人的には
脱いだあと
これに尽きると思います。履くには抵抗のある姿かたち。いかにも面倒くさそうです。人の目も気になる。靴を脱いだ時に見られると恥ずかしい?と思われるかたもいらっしゃる。ただ、一度履くと手離せなくなる人続出。
正直なところ、効果が言われている踏ん張りを実感したことがありません。着用時は靴先が窮屈に感じます。
それを吹き飛ばすほどの爽快感が
靴下を脱いだあとにやってきます。そして、指先がサラサラ。わたしは冬でも汗かきでじっとりします。靴下も湿ります。どんなドライ機能を持つ繊維でもムレてしまいます。ところが五本指ソックスは、それがかなり軽減されます。
坐り履きへのこだわり
リラックスしたい。整えたい。
ソファで横になる。床に胡座で。
体重を足裏に集めない姿勢。
そんな瞬間を思い描いて靴下を設計します。
-ファーストサンプル

夢のようなホールガーメント機
ついホールガーメントだと
ケーブル編みをやりたくります。
その気持ちを抑えて、すべてをやり直します。
-セカンドサンプル

足底をクッションソールへ
大幅に方向性を変えます。
歩く。を想定せずに。くつろぐ。座る。胡座に適した靴下に再設計したものが、このセカンドサンプルです。
履き口のバックサイドを突起状に。つまめるようにして着脱をしやすくサポート。丈も短くして正座でも邪魔にならず、突起がクッションとなり痺れを和らげます。そして、足底は凸凹としたパール編み。ソフトなクッション感とゆるやかな刺激、ふわっとしたストレッチ性を求めました。
そこに!
靴下でまだ製品化のない
灰汁発酵建。そう
藍染
を施したく。BUAISOUさんへお願いしました。
-サードサンプル

ベースをうっすら藍色に
二度染めする左のほうを採用
そして、三足目が完成。

ようやく
プレミアムセットのラインナップが
すべて揃いました。発売までいよいよです!
最後にパッケージ装飾について
お伝えさせてください。
包装へのこだわり
最高級に相応しく
伝統工芸を現代で感じてもらえる上品な設え



のすべてにアワガミを使用しています。
-靴下が届いた瞬間の感動を
そこまで、装飾パッケージにこだわらなくてもよいのでは?
中身が大事。
履いた瞬間の感動で充分。
という声も多くありました。
理解しているつもりです。
ですが、このシリーズの販売価格は
三万円を超えています。
ご自身に。大切な方に。
窪塚さんファンには宝物として。
購入しても。お贈りしても。
満足、自慢できる設えにしたく思いました。
そして目指す姿として
捨てたくない
そう思ってもらいたい。包装や資材は開封後すぐにゴミ箱へ。それが日常です。それを少しでも躊躇うようなものに。それぞれに意味があって採用した意地みたいなものもあります。
■ 桐材の箱
桐は、調湿性・防虫性・断熱性に優れた、日本の知恵が詰まった素材。内部の湿度を一定に保ち、繊細な天然素材をやさしく守ります。
“収納”ではなく、保管そのものが価値になる箱です。
■ 和紙のクッションペーパー、帯、メッセージガード
和紙は、紙でありながら空気を含み呼吸する素材。強く、しなやかで、時間とともに風合いが増していきます。200年保存できる言われています。この靴下の思想を静かに、上品に、伝えるための一枚です。
■ 風呂敷
包んで終わりではなく、使い続けられるラッピング。贈り物の記憶が日常に残る。日本の美意識と、サステナブルな考え方を重ねました。
1万円という、靴下では未体験の最高価格。
一切の妥協なく
仕上げることができました。
ものづくりの視野を広げることができました。
このような企画に、たずさわることができたことに感謝をしています。ご協力くださったあらゆるみなさま。本当にありがとうございました。
今後も最高峰のプレミアムシリーズを続けていきたいと思います!
5,000文字を超える長文を
ここまでお読みくださって
ありがとうございます。
現在
商品部に戻ったトッチーでした!
