中国モバイル決済前史―現金から銀聯が登場するまで~Seven Teen Years in China
いま、中国クラスタのなかで微妙な物議をかもしている問題がある。
3月11日の国会でのあるやり取り。
中国における電子決済システムの日本での使用についての質疑応答が維新の議員さんと財務大臣との間で行われた内容である。
正直、聞いても読んでも「?」というもので、議員・大臣、そしてそれを記事化したメディアの記者さんともに、「中国」というところにばかり目が行き、中国の電子決済システムにはお詳しくなさそうな印象を抱いた。
ただ、同時に中国の「支払い」環境がわずか15年から20年のうちに大きく変化してしまったことも確かな話。
例のごとく、頭の中の時計を引き戻して整理していきたいと思った次第。
現金時代、経済発展する中国最大の悩みは「税金」だった
いまや中国で現金を持ち歩く人は少ない。
ある中国人の友人が日本に旅行に来て「久しぶりにお財布と言うものをもって買い物に出た」と話している。
さらに訪日観光時にもあると便利な「神アイテム」として「小銭入れ」が挙げられている。
100均で買える、小銭を取り出しやすいプラスチック製のホルダーに入れるタイプのものだ。
日本では何かと小銭を使う機会も多い。
東京ではだいぶキャッシュレスが進んでいるが、地方に行くとまだ現金に馴染んでいる。
実は中国も2000年代初頭においては現金しかなった。
それに同じ一元や五角でも紙幣と硬貨があったり(大都市では硬化が多く、田舎に行くほど紙幣率が高くなる)と、なんとなく日本のような統一的ではなく、ある意味、なぁなぁ感があった。


紙幣の場合、ほぼ金銭価値のないようなボロボロのものが流通していたり、いわゆる「ニセ札」もまだまだあった時代。
銀行なんかでも偽札検査に時間がかかった記憶がある(米ドルの偽札チェックも厳しかったが)。
そんな状況、今の20代の中国人は知らないのではなかろうか。
それほど中国の「貨幣」に関する状況は一気に変わっている。
中国貨幣改革の先陣を切った存在というのが「銀聯」だったようにも思う。
実は銀聯が成立したのが2002年で、私の中国歴は銀聯の歴史よりも長いということになる。
うれしいような悲しいような。
ただこの誕生には当時の中国が抱えていた大きな問題「個人事業主からの税収」というものがあるということは語っておかなければならない。
お金の流れを明確にするために生まれた「銀聯」という怪物
さて、その銀聯、上海市浦東に存在している。
そもそも銀聯とは何か?
これは一言でいうと難しいが「各銀行の金融システムをつなげ、中国におけるお金の流れを一気に管理する組織(企業なのだが企業と言っていいかは疑問)」である。
なぜそれが必要だったのか?
中国の銀行は基本的に国営であるケースがほとんど。
しかし、その管理は例えば「中国農業銀行」→「農業部」のように、銀行によって元になる部門が異なり、さらに横、すなわち銀行間での連携ができていなかった。
なので中国銀行のキャッシュカードだと中国工商銀行のATMでは使えない、などという状況が起こった。
それを解決するために生まれたのが「銀聯」であり、各銀行が銀聯システムに加盟することでキャッシュカードに「銀聯」マークが表示され、どの銀行のATMでも使用することができ利用になった。
さらにはデビットカード機能も付き、多くの店舗のPOSを使って買い物をすることもできるようになった。
実際、この動きは国の施策だったのだが、なぜ国がそれを推し進めたのかというと「税金対策」だったという説がある。
中国はご存じのように90年代から本格的に市場主義経済が回り始めた。
「個体工商戸」などと呼ばれる個人事業者(例えばレストランなど)も急速に増えていた時代だが、こうした個人からの税収というのが上がらない。
なぜか。
制度はきちんとあったのであるが、当時は個人事業者の帳簿管理はほとんど手書き。
コストがいくらだったか、売り上げがいくらだったか、その店主の筆先にかかっていた。
例えば留学生時代(現金主流時代)、あるレストランで仲間と会食をしていた。
支払いの際に「発票(領収書)はいるか?」と聞かれ、次いで「もしいらないなら、コーラ2リットルボトルをサービスする」という。
当時、いわゆる「領収書」に関しては一部機械化がされているため店側は真実の売り上げを述べなければならない。
しかし手書きの「収据」と呼ばれるものでよければ、店側は何とでも処理ができてしまう。
コーラ一本分ぐらいの利益は何とでも「書き出せてしまう」。
それだけ、国でもお金の流れが読めていなかった。
急速に経済発展をする中で、膨大な金額が動いていたのだから、致しh方はないだろう。
その状況が「銀聯」を成立させてから大きく変わる。
来店客が銀聯のデビットカードで支払うとなると、それは専用端末を用いて記録される。
もちろんそのデータは税務署ともつながっている。
売上が正確に記録され、売り上げに基づいた所得税などを請求される。
個人事業主にとっては嫌な話かもしれないが、国にとっては「正しい税金徴収」の道筋が見えたという訳で、大々的に「便利な銀聯カードを使いましょう」キャンペーンが繰り広げられた。
こういった時代の中国の人からすると、日本の「確定申告」などと言うのは正気の沙汰とは思えないだろう。
なぜわざわざ税金を取られるためにまじめに報告するのだろうかと思うはずである。
産業調査に携わっていた時代も、いわゆる「二重帳簿」などとというのは日常茶飯事であった。
とまぁ、ここまで「前Alipay・WeChat Pay」について語ってみた。
次回はその両者の出現と消費者の背景。さらにはそれらが本当に「日本の金融システム外のもの」なのかを検証してみよう。
