師匠と大師匠、二人の言葉に目と耳を凝らす
師匠の師匠を、何と呼ぶか。
「大師匠」や「師父(しふ)」というのが一般的らしい。
シフ? 正直、聞いたことない。
僕のライターとしての師匠に、佐藤友美さん(さとゆみさん)がいる。
そのさとゆみさんが、師匠と崇めるのが、上阪徹さんだ。
ブックライターという言葉を作った張本人であり、ライター界では知らぬ人はいないのではないだろうか。
僕の勤める会社の、カリスマ経営者として名を馳せた前会長の書籍も上阪さんが担当していたようだ。
つまり、彼は僕にとっての大師匠にあたる。
そんな二人の対談トークショーに参加した。上阪さんの新著『「また頼みたい」と言われる人がやっていること』の出版イベントだ。
場所は、高田馬場。初めて下車する駅。私大トップの大学とは、縁もゆかりもない人生を送ってきました。
会場には、顔見知りのライターの方もチラホラ。
何人かと名刺交換させて頂いたが、このnoteでお名前を拝見したことのある方ばかり。こういったつながりが、ほんの少し照れ臭くて、でも、めちゃめちゃ嬉しかったりする。書いていなければ、来ることのなかった世界だ。
上阪さんは、嘘をつかない。わからないものはわからないと答える。一番笑ってしまったのが、出版業界の今後について質問を受けた際、「正直、興味がない」と話した時だ。でも、もちろんその根底には、「出版業界をなんとかできる力は自分にはない。それよりも、与えられた、目の前の仕事に精一杯向き合うだけ」という、決してぶれない彼の信念を感じ取ることができた。
また、基準を作っておくことの大切さを、2人とも語っていた。それがあることで、迷わなくなる、と。迷わないことで、無駄なストレスを受けずに済む。そして何より、自分自身がぶれずにいられる。
上阪メソッドは、至極真っ当で、一聴すると当たり前に思えることが多い。でも、僕も半世紀近く生きてきた経験から、その当たり前のことこそ、続けることがいかに難しいかを知っている。
上阪さんの本を読むと背筋が伸びる思いをするのは、きっと自分でズルをしている箇所を指摘された気分になるからだと思う。
知らなかったことを教えてもらうというよりも、わかっていたのに横着していたところを、再度正してもらう感覚。
でも考えてみると、そういった当然のことを指摘してくれる人は少ない。だからこそ、こういった基本的アドバイスが人の胸に届くのだろう。さとゆみさんは、思い当たることが多すぎて、序盤で一度、すぐに本を閉じたそうだ。
「上阪先生、ごめんなさい」と。
僕もひとつ、幸せと目標について質問させてもらった。幸せになるために生きている、そんな話があり、でも、幸せを感じてしまうと、向上心がなくなるよなあ、と。その辺、ふたりはどう思っているのか。
上阪さんは「幸せと目標は別設定。今日一生懸命仕事をして、最後に飲む一杯のビールが幸せ。だけど、目標はとても大きく、全然達していない」と、そのふたつをごっちゃに考えないアドバイスをしてくれた。
さとゆみさんは、その「今」と「未来」の話を、もう少し掘り下げてくれた。
「未来の幸せのために、今を我慢して、ないがしろにしている人が多いと思う。今の幸せを集めて、それが結果として未来の幸せにつながっていくんだと思います」と話してくれた。
納得。
この書籍の担当編集者は、CEメディアハウスの編集Lilyさん。
さとゆみさんの『書く仕事がしたい』、近藤康太郎さんの『三行で撃つ』の担当編集でもある。
つまりは、僕をこの書く世界に引きずり込んだ、にっくき張本人なのだ。そんなLilyさんも、この会社の退社が決まっているそうだ。
僕はイベントの最後、彼女に笑顔でお礼を言った。
「毎日書いている今、とても幸せなんです。ありがとうございました」
あなたが作った本が、僕をここまで連れてきた。
楽しい世界だ。
