日経新聞の朝刊小説 「江戸を隠してふところに」 を読む
4月10日から日経新聞の新しい朝刊連載小説が始まった。
澤田瞳子さんの「江戸を隠してふところに」。
あまり新聞小説は読まないが、これは面白そうだ。
舞台は幕末。徳川家から明治新政府軍に引き渡されることとなった江戸城内では、滞っていた給与の支払いや城内の資産の整理など、雑務が山積しています。迫り来る引き継ぎ日を前に、現場の幕府方役人は対応に奔走することに。破綻しつつある組織の悲哀と現場の苦労を、江戸開城を背景に描く群像劇です。
澤田氏は1977年京都府生まれ。2010年に「孤鷹の天」で小説家デビュー。「満つる月の如し 仏師・定朝」(新田次郎賞)や「星落ちて、なお」(直木賞)など、緻密な時代考証に基づく歴史小説・時代小説の名手です。
挿絵は、挿絵画家の村田涼平氏が手掛けます。登場人物たちを淡い色使いで描き出し、物語を彩ります。
・・・
慶応4年(1868年)、長く徳川幕府の中枢だった江戸城は明治維新政府に明け渡された。勝海舟と西郷隆盛の交渉の結果、江戸の町が戦場にならずに済んだとの逸話をご存じの方も多かろう。ただ、開城とは城を譲って終わりではない。江戸から明治へ。城を、ひいては政を譲るには、膨大な書類や財産の引き継ぎが伴ったはずだ。期日までの間にそれを果たした現場の彼らは、ヒロイックに走り回る勝や西郷たちをどう見ていたのか。時代の転換点に居合わせつつも、しかし確実に自分の仕事をしたであろう「現場」の人々。その働きぶりはきっと、今日の我々とさして変わらぬ汗と涙に彩られていたのではと想像するが、さてどうだろう。
以下、第1回分のさわり。
徳川家譜代御家人鳴上家には、代々、当主にしか伝えられぬ秘伝の技があった。
鳴上家の家禄はわずか20俵2人扶持。狭い役宅の庭にナスやキュウリを植え、どうにかこうにか日々の総菜をまかなう貧乏世帯だ。
遠い先祖は関ヶ原の戦で大将首を上げたと聞くが、二百数十年に及ぶ太平の御代の中でお役目は二転三転し、ここ百年は勘定所湯呑所詰めを拝命していた。
すなわち役所内の休憩所の片隅で、湯を沸かし、茶を淹れ、勘定所の役人たちの給仕を行うのがお役目であった。
江戸城内では下役も下役であり、兵十郎は物心ついた頃から「秘伝といったとて大したものではないだろう」と薄々見当をつけていたし、残念ながら、それは正しかった。・・・
わが家の勘定奉行マコさま(妻)から、日経新聞をやめるとnoteのネタに困るだろうから、退職後も購読してよいとの御裁可を得た。
楽しませていただく。
了
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!