独身が多数派になる未来について真面目に考えてみた

国立社会保障・人口問題研究所という、国の人口を予測するお堅い機関がある。ここが出している最新の推計によると、日本の生涯未婚率は2040年に男30.4%、女22.2%でピークを打ち、そこから2050年にかけて男28.4%、女20.1%へと「ゆるやかに下降していく」らしい。

つまり国の公式見解は「未婚率の上昇はあと15年で止まります。男の3割で頭打ちです」ということになる。

正直に言う。俺はこの推計をまったく信じていない。というかこれ、控えめに言って願望が混ざってないか? 今回は「生涯未婚率が半分を超える未来」という話を、感情論抜きで数字と進化心理学の両方から解剖してみたい。

■ 日本の結婚事情がどうなっているのか確認する

生涯未婚率というのは「50歳時点で一度も結婚していない人の割合」のことだ。2020年の国勢調査の実績値は男28.3%、女17.8%。1990年時点で男は5%くらいだったので、30年で6倍近くに膨れ上がったことになる。グラフを見ると1990年からの角度がえげつなくて笑ってしまう。

出典:https://ohitorisama.site/blog/unmarried-rate/

ただ、この「28.3%」という数字にはトリックがある。これは今50歳の人間の成績表であって、今の若者の成績表ではない。2020年に50歳だった男は1970年生まれ、バブルの残り香がまだあった時代に20代を過ごした世代だ。会社に世話焼きおじさんがいて、社内恋愛が推奨されていて、正社員になれるのが当たり前だった世代。その世代ですら3割近くが結婚できていない。

では今の若者はどうか。同じ2020年国勢調査で、30〜34歳男性の未婚率は51.8%。前回調査から4.7ポイントも跳ね上がって、あっさり半分を超えた。25〜29歳男性に至っては76.4%が未婚で35〜39歳でも38.5%が未婚だ。

出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/22/backdata/01-01-01-09.html

そしてもう一つ、20代の未婚男性の46%は「これまで彼女がいたことがない」というデータもある。20代で既に結婚している男が15%ほどいることを考慮しても、20代男性の約4割は恋愛経験ゼロという計算になる。

この4割が、20年後に50歳を迎える。20代前半で彼女ができたことのない男が30代・40代で急に恋愛強者に覚醒する確率がどれくらいあると思う? 少なくとも俺の周りを見る限り、ほぼゼロだ。

出典:https://news.ntv.co.jp/category/society/879c97c6e3dc43e18191f3ada9a05c30

■ 国の推計が甘すぎると思う理由

社人研の推計というのは、要するに「今の各世代の未婚率の伸び方が、このまま素直に続いたら」という前提でコホートを積み上げていく作業だ。だから前提が現実より甘ければ、出てくる答えも甘くなる。

しかも次の2025年国勢調査では、生涯未婚率の算出対象がついに就職氷河期世代ど真ん中に入る。これまでは「比較的結婚できていたバブル世代」が対象に含まれていたおかげで数字が薄まっていたが、そのクッションが外れる。非正規雇用が当たり前になり、正社員になれず、年収が上がらず、実家を出られないまま40代を過ごした人間が大量にいる世代だ。この世代の成績が生で出てくる次の調査で、生涯未婚率がおとなしく30%で止まると考える方がどうかしている。

そもそも社人研の推計は、これまでほぼ一貫して実績に追い抜かれてきた。2015年ベースの推計では2040年の生涯未婚率を男29.5%と見積もっていたが、2020年の実績が既に28.3%。5年で1.2ポイントしか伸びない想定なのに、直近5年で30〜34歳男性は4.7ポイント伸びている。予測がいつも現実の後ろを走っているのだ。

出生数も同じ構図だった。国が「2040年頃に到達する」と言っていた水準に、実際は10年以上前倒しで突っ込んでいる。直近の出生数はついに70万人前後まで落ちた。10年連続で最少更新である。人口予測というのは、下振れ方向にはいつも当たらない。

■ 既に独身者はほぼ人口の半分まで来ている

ここで視点を変えると、実はもっと露骨な数字がある。

「生涯未婚率」は50歳時点の未婚だけを数えるが、離婚した人間と死別した人間はカウントされない。この人たちも当然、独身だ。この未婚・離別・死別を全部足した「独身者が総人口に占める割合」を見ると、1980年に34%だったものが2015年には41%、そして2040年には47%に達すると推計されている。

つまり生涯未婚率が半分を超えるかどうかを議論している間に、「独身の日本人」はとっくに半分に届こうとしている。世帯ベースで見ればもっと露骨で、2050年には全世帯の44.3%が単独世帯になる。65歳以上の男性のひとり暮らしのうち、約6割が「一度も結婚していない未婚者」で占められるという推計も出ている。

昔の高齢独居といえば「奥さんに先立たれたおじいちゃん」だったが、これからは「そもそも一度も結婚しなかったおじさんがそのまま歳を取っただけ」が主流になるということだ。

婚姻数も見ておこう。1972年のピークは約110万組。2023年に戦後最低の48.9万組まで落ち、直近の2025年は50.5万組と2年連続で増えて50万組を回復した。「ほら反転した」と喜ぶ記事もあったが、水準としてはピークの半分以下で、戦後3番目に少ない年である。50年で結婚するカップルが半分以下に減った国が、未婚率だけ3割で頭打ちになるわけがないだろう。

■ なぜ未婚率の上昇は止まらないのか、進化心理学で考える

ここからが本題だ。なぜこの流れは止まらないのか。

答えはシンプルで、昭和の皆婚社会の方が人類史のバグだったからだ。

進化の歴史を通じて、人類は基本的に一夫多妻的だったと考えられる有名なDNA研究がある。ミトコンドリアDNAは母親からしか受け継がれず、Y染色体は父親からしか受け継がれない。つまりこの2つの多様性を比べれば、母系のご先祖様と父系のご先祖様の「人数」を別々に推定できるわけだ。結果はどうだったか。人類史を通じて、子孫を残した女性の数は男性の約2倍。よく引用される推定では、歴史上、女性の約8割が子孫を残せたのに対し、男性は約4割。残り6割のオスは、誰の先祖にもなれないまま遺伝子プールから退場していった。要するにモテる少数のオスが複数のメスを独占し、大多数のオスは遺伝子を残せずに消えていった。これが人間という動物のデフォルト設定なのだ。

日本史を遡っても、実はそうなっている。江戸時代まで、結婚できない男はまったく珍しくなかった。家を継げない次男三男にはそもそも椅子がなく、江戸の町は男が女の1.7倍いる圧倒的な男余りだったとされる。それが明治以降、家制度とお見合いと村社会の同調圧力という装置がフル稼働して、平凡なスペックの男にも自動的に相手があてがわれるという異常事態が発生した。戦前の男の生涯未婚率はわずか2%。戦後は装置の中身が会社の世話焼きおじさんと終身雇用に置き換わりながら、この「ほぼ全員結婚」状態が1980年代まで維持された。つまり皆婚は日本の伝統でも何でもなく、明治から昭和末までのたかだか100年だけ社会が人工的に運用していた再分配システムであって、人間の本能に沿ったものではまったくなかった。そして今、その装置が全部壊れた。お見合いは消え、村社会は消え、社内で女性に声をかけるのはハラスメントのリスクになり、終身雇用は崩壊した。残ったのは「自由恋愛」という名の、完全実力主義の椅子取りゲームだけである。

自由恋愛が全面化するとどうなるか。女性の配偶者選択は本能的に上昇婚志向、つまり自分より格上の男を選ぶように設計されている。これは性格の問題ではなく、卵子という高コストな資源を投資する側として、そう設計されているという話だ。これは俺の感想ではなく、明確なデータがある。進化心理学者のデヴィッド・バスが世界37の文化圏・約1万人を対象にやった配偶者選好の研究では、「相手の経済力をどれだけ重視するか」という項目で、37サンプル中36で女性のスコアが男性を有意に上回った。例外は37分の1、スペインだけ。日本もアメリカもアフリカの部族社会も、宗教も経済水準も関係なく同じ結果が出たということは「最近の日本の女がどう」という話ではなく、上昇婚がホモサピエンスの仕様だということだ。

ここで必ず湧いてくるのが「女が男の経済力を求めるのは、女自身が稼げない社会構造のせいだ」という反論である。もっともらしいが、これはバス自身がデータで潰している。高収入・高学歴の女性ほど相手への経済的要求を下げるどころか、自分と同等以上を求める傾向がむしろ強くなるのだ。つまり女が稼げるようになっても上昇婚は消えない。上昇婚の基準線が、女の年収に合わせてスライドするだけである。年収600万を稼ぐ女の言う「普通の男」が、年収600万以上を指すようになる仕組みだ。ちなみにこの37文化研究、2020年に45カ国・約1万4千人で追試されて、主要な性差はほぼそのまま再現されている。経済力重視の男女差は、男女平等が世界トップクラスの国でも縮まっていなかった。30年経って女性の社会進出が進んでスマホが普及しても、選好のOSは1ミリもアップデートされていないのである。

上昇婚の性向がホモサピエンスの仕様なら、結果として女性の選好は一部の上位男性に集中するのは当然だ。マッチングアプリで上位20%の男が「いいね」の80%を独占するという例のデータは、原始時代の配偶構造がスマホの中で完全再現されていることの証明にほかならない。

つまり自由恋愛の徹底は、そのまま一夫多妻的な配偶構造への回帰を意味する。全員に椅子が配られていた昭和が終わり、本来の姿に戻っているだけなのだ。だとすれば未婚率が3割で止まる理由がどこにもない。人類のデフォルトはもっと極端だったのだから。先ほど述べた子孫を残せた男が4割しかいなかったと推定が正しく、未婚率の上昇が人類のデフォルトへ近づいているだけなのだとすれば、婚外子が約2%しかいないとされる日本において、男の生涯未婚率は60%程度まで上昇する余地があることになる。

■ 経済と技術が結婚にとどめを刺す

これに現代特有の要因が二つ乗る。

一つは経済だ。女性の上昇婚志向は変わらないのに、男性側の資源獲得能力が全体として落ちている。非正規が増え、実質賃金が伸びず、社会保険料と物価だけが上がっていく。分母である「稼げる男」が減れば、あぶれる男が増えるのは算数の問題である。少子化の原因は結局のところ金がないからだとよく言われるが未婚化も本質はまったく同じだ。

もう一つは技術だ。現実の恋愛のコストとリスクが上がり続けている一方で、性欲と孤独を代替するサービスの品質は年々えげつない速度で上がっている。スマホがあれば5秒で異性の裸が見られるし、最近ではAIコンパニオンなんかが登場しリアルタイムで会話して感情の起伏まで演じてくるようになった。今後この分野で日本企業が本気を出したら、今以上に現実の女性より快適な疑似恋愛が量産される。

現実の恋愛は、金がかかり、時間がかかり、断られ、傷つき、法的リスクまで背負う。かたやAIは課金するだけで一切否定してこない。行動経済学的に見て、合理的な人間ほど現実から撤退する構造ができあがっているわけだ。

「それでも人間は本能的に生殖を求めるから大丈夫」という反論はあるだろうが、本能をハックする技術が本能より強くなったらどうなるかは、ソシャゲとショート動画が既に証明している。原始の脳は、原始の脳を狙い撃ちするように設計されたコンテンツに勝てない。

■ で、俺たちはどうすればいいのか

というわけで俺の結論はこうだ。国の言う「男3割でピークアウト」は絶対に外れる。今の20代男性の4割が恋愛未経験である以上、彼らが50歳になる2050年前後の生涯未婚率は男で4割、下手をすれば5割に届くと見ておいた方がいい。死別や離別も含む独身者の総人口比という広い定義なら、半分超えはほぼ確定している。

そのうえで、この事実をどう受け取るか。

まず、結婚できないことを自分の人格の問題として抱え込むのはやめた方がいい。これは弱者が悪いのではなく、社会が用意していた再分配装置が壊れて、人間本来の残酷な配偶構造が剥き出しになっただけの話だ。あなた個人が悪いのではなく、時代のルールが書き換わったのだ。

次に、それでも性愛を手にしたいのなら、女性に上昇婚性向を満たす上位の男になる他ない。筋トレをして健康シグナルを底上げし、清潔感を整え、ジャンクフードやソシャゲや風俗なんかに無駄遣いするのを止めてスキルに投資して他の男との競争に勝ち、社会的な序列を上げることだ。

そして最後に、これが一番重要だと思っているのだが、独身のまま終わる前提の人生設計を今すぐ組んでおくことである。半分が独身になる社会で「結婚できたら子供が老後を見てくれる」なんて前提は成立しない。介護してくれる子供も、支えてくれる配偶者もいない。あるのは自分の金と体だけだ。

だからこそ、固定費を削って、NISAに金をぶち込んで、筋トレして体を維持して、本を読んで頭を腐らせないという、クソつまらない基本セットに全部が回収される。結婚できるかどうかは遺伝子ガチャと時代のルールに支配されているが、資産と健康と知識だけは自分の手で積み上げられる。これは未婚率が5割になろうが7割になろうが揺らがない。

理想は独身の数少ないメリット、ローンを組んだり子育て費用も掛からないという点を活かしてセミリタイアのような形で理不尽な労働からドロップアウトすることだ。ただ完全リタイアは勧めない。孤独は1日15本の喫煙に匹敵する健康リスクという話がある。セミリタイアは自分の好きな仕事や意義を感じる仕事だけできる権利ととらえ、社会とのかかわりはゼロにしないようにしよう。

半分が独身の国で、金も体も知識もない独身になるのか、それとも金と体と知識を持った独身になるのか。俺たちに選べるのはそこだけだ。後者の理想形はセミリタイアして金と時間に余裕があり自分の好きな仕事だけして生きていくこと。時間の余裕を活かして市営ジムで筋トレしたり、自炊をして生活習慣を正し、図書館に通って読書や勉強を行い、知識やスキルを高めていけばいい。この理想を叶えられればその辺の既婚者より独身でも割と幸福な人生を送れるんじゃないだろうか。

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