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季節の変わり目に空気の匂いが変わってエモくなる。そんな時に感情と思考が動く。

朝、出社する時、
夜、仕事を終えて、足早に帰る時、
普段通り、意図もせず呼吸しているだけなのに、
ふと、外の空気の匂いが脳と感情に飛び込んでくることがある。

たいていは、季節の変わり目のお腹が空いている時だ。

この感覚は、どれくらいの人と共有できるものなのだろうか。

私の好きな「季節の匂い」は、初夏と初冬。

初夏は自分にとっては6月だ。

6月の朝、前日に雨が降った、晴れの日は特に匂いが濃い。
雨の匂いと、夏の熱を帯びた陽で蒸発していく途中で、
自分の鼻の中にその空気が入ってくる感覚。

ああ、夏が来るな、と思う。
夏に特段良い思い出があるわけではない。
恋人と夏祭りに行った想い出も、花火大会に行った想い出もない。

でも、なぜか心がざわつく。
そんな、「良い想い出テンプレート」ではない私の初夏の想い出は、

サッカーの練習に向かう道、
就職先が決まっていなくて焦りながらOBOG訪問に向かう道、
あまり勉強に集中できなかった大学生活の日々、
全部まとめて、苦しかったな、とか、楽しかったよな、というより、

恋人と夏祭りに浴衣で行くってどんな感情なんだろうな、
恋人と花火大会とか行ってみたかったな、
あの夏の大会、勝ち上がりたかったな、
真夏の炎天下でバーベキューを友達とやるなんていうこともやってみたかったよな、

のような、自分の思い出に浸るよりも、
後悔や憧れの妄想の方が多い。

そんな自分のことを、気色悪いな、と思いつつ、
憧れるのもわかるよ、と諭す自分もいる。

そんな妄想をするくらい、何の楽しい予定も決まっていない夏は、なぜか自分をワクワクさせてくれる。

誰かと斜め上を向きながら未来を語る、
19時でも陽が沈んでいない夜に冷えたビールを飲む、
今年のうちに取り組んでみたい新たなチャレンジを思い描く、

そんな前向きな思考や感情になる。
オレンジレンジを聴きながら車を走らせたい。

過去を振り返ることなんて稀だ。

もちろん不安なこともある。
でも、どうにかなるだろう、って思える季節だ。

誰かの相談に乗る時も、
どうにかなるよ、って素直に言える季節だ。

なぜか寝るのも惜しくなる。
まだ何か今日やれることがあるんじゃないか?と思いながら、
1日を終える時の方が多い。

ジョギングでもして、体力を使い切ってからじゃないと、
気持ちよく寝れない。

なぜかわからないが、ポジティブな焦燥感で溢れる。
焦燥感なので、結局どこか満たされておらず、不安なんだ。

初冬は、12月の初めだ。
寒さの厳しい1月や2月ではない。

夏と同じように6時台に起きたいのに起きれない。
眠くないのに、身体が動かない。

目一杯、外の空気を吸い込んだ時に感じる、
あの乾いた空気、特にシンシンと冷え込む夜がとても良い。

ああ、冬が来るな、と思う。
特に冬に良い思い出があるわけではない。
恋人と歩いたクリスマスマーケットや、バレンタインのチョコレートの包みを剥がす夜の想い出に襲われて幸せな気持ちになるわけではない。

初夏のワクワク感と違って、
初冬の空気は自分を不安にさせる。

憧れた空想の夏の想い出テンプレートとは違って、

失敗しかなかった中学受験の塾からの帰り道、
締切に追われて毎日深夜まで苦しんだ修士論文、
明日の仕事も終えられていないなと思いながら帰る終電、

自分を不安にさせる想い出ばっかりだ。
キラキラしたイルミネーションでも、
好きな人からチョコレートもらえるかなと心配するバレンタインデーでもない。

初夏と違って、ポジティブな感情になれない。
ああ、冬が来るな、
には前向きな気持ちは含まれていない。

今年、何を達成できたかな、
また来年も嫌な出来事が起こるのかな、
また1年歳をとったけど、自分は成長できているのかな、

友達と語り合いたいという感情にもならないのに、
1人でいるのがとても不安になる、
そんな季節だ。

初夏も初冬も、感情が上にも下にも動くときに、
思考が進む。

30歳を超え、ようやく、この季節を感じる匂いを起点とした、
感情の揺さぶりへの対処法を扱えるようになってきた。

春からだんだんチャレンジすることを増やしていき、
秋からだんだんチャレンジすることを収束させていく。

単純だが、この方法が自分には合っている。

今まで冬に色々とチャレンジすることを増やして、
気持ちが季節とともに落ち込んで、
人に連絡を返せなくなって、
チャレンジし始めたことも手をつけきれなくなって、
信頼も自信も失っていく、
というループにハマり続けてきた。

逆に夏は目一杯、いろんなことに手を出したら良いと思っている。
駆け抜けられる自信がある。
何かを深く探究するよりも、横に広げていきたい。

残念ながら、社会人になって10年取り組んできた途上国の問題に、
こんな季節性はない。

みんなには、こういう初夏と初冬の感情の動きが影響しないのかな、と不思議な気持ちでいっぱいになることがある。

冬に活動的な人を見ると尊敬する。
頼むから冬眠させてくれよ、とすら思う。

我が家にこたつはないけれど、こたつで過ごさせてくれよと思う。

かといって、週末の2日間だけでも家に閉じこもっていたら、
どんどん気分が落ち込んでいく私にとっては、
「季節の変わり目の空気の匂い」が、感情と思考と行動のスイッチになっていて、
うまいこと自分の中でサイクルが生まれて、仕事を継続できているのかもしれない。

頼むから冬眠させてくれよなんて、一ミリも身体も心も思っていないんだな、
と、笑いたくなる。

自分の感情も思考も行動も変えてくれる、日本の四季に感謝しかない。

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矢野たいが|Taiga Yano 記事を読んでいただきありがとうございます!いただいたチップは今後の執筆活動に使わせていただき、また皆さんと考えを共有する場作りに使わせていただきます!