6年前の50万が! 現在2026/8.10
【For Wealth #005 】
2020年8月31日、午前8時30分。
東京市場が開く30分前に、米バークシャー・ハザウェイは一つの発表を出しました。
伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事。
日本の5大商社を、それぞれ5%超保有しているという内容です。
情報は、一部の専門家だけに届いたものではありません。バークシャーは公式サイトで社名まで公表し、長期保有の方針も示しました。
ニュースを見た一般の読者も、その日のうちに知ることができました。
では、知った人のうち、実際に自分のお金を動かした人は何%いたのでしょうか。
「知っていた」と「持っていた」の間
この割合を示す信頼できる統計は確認できませんでした。
証券取引は匿名で行われ、ニュースを読んだ人と、その後に株を買った人を結びつけた公開資料がないからです。
ただ、2020年8月31日の時点で、次の事実は誰でも確認できました。
バークシャーが5大商社を各5%超保有したこと
約12か月かけて市場で買い進めたこと
長期保有を意図していたこと
これは後から作られた物語ではありません。当日のバークシャー公式発表に書かれています。
必要だったのは、未来を当てる力より、公開された情報を調べ、自分のお金で小さく所有する判断でした。
50万円を一社へ移していたら
今回は、条件をそろえて過去を検証しました。
2020年8月31日の終値で50万円を一括投資
2026年8月10日の終値で評価
配当は同じ銘柄へ再投資
株式分割を調整
Appleは購入時と評価時の為替を反映して円換算
税金、売買手数料、為替手数料は含めない
5大商社に加え、比較対象として東京海上ホールディングスとAppleを入れました。
東京海上は商社ではなく、バークシャーが公表した5社にも含まれません。日本企業の資本配分を考えるための参考比較です。

結果は次の通りです。
| 50万円を一社へ投資 | 2026年8月10日の評価額 | 元本比 |
|
| 丸紅 | 約486万円 | 9.72倍 |
| 三菱商事 | 約357万円 | 7.13倍 |
| 住友商事 | 約340万円 | 6.79倍 |
| 三井物産 | 約311万円 | 6.22倍 |
| 東京海上HD | 約295万円 | 5.90倍 |
| 伊藤忠商事 | 約227万円 | 4.54倍 |
| Apple(円換算) | 約185万円 | 3.70倍 |
この期間、この条件では、比較した日本株6社がAppleを上回りました。
ここから「丸紅を買えばよい」とは言えません。開始日、終了日、円相場、資源価格、企業評価が変われば、金額も順位も変わります。
このグラフが示すのは、次の有望株ではありません。
2020年に公開されていた情報から、日本株でも「持つ側」へ移る入口があったという事実です。
バフェットは、なぜ商社を選んだのか
商社は、食品、資源、機械、化学、物流、金融など、多くの事業を抱えています。
事業が多いだけで、企業価値が高くなるわけではありません。
稼げない部門へ資金を出し続けたり、事業ごとの価値が外から見えにくかったりすると、会社全体が割安に評価されることがあります。これが「コングロマリット・ディスカウント」と呼ばれる状態です。
バークシャーが見ていたのは、事業の多さだけではありませんでした。
2024年の年次報告書では、5社の過去の財務記録を見て株価の安さに驚いたこと、資本配分、経営陣、投資家への姿勢を評価したことが説明されています。
配当を増やす。価格が妥当なら自社株を買う。利益を成長する事業へ回す。
反対に、収益性が落ちた事業を抱え続ければ、資金はそこで止まります。実際に撤退や入れ替えが進んでいるかは、各社の決算資料や中期経営計画で確認する必要があります。
商社を見るときの中心は、「何の事業を持っているか」から「稼いだお金をどこへ動かしているか」へ移ります。
東京海上を加えた理由
東京海上を入れたのも、同じ視点を試すためです。
同社は配当を株主還元の基本とし、利益成長に応じて増配する方針を掲げています。2020年度の年間配当は、株式分割調整後で67円。2025年度は218円でした。
さらに、必要な資本、成長投資、M&A、ROEを見ながら、自社株買いを判断すると説明しています。これは東京海上ホールディングスの株主還元方針で確認できます。
業種が違っても、会社が稼いだお金の使い方は比較できます。
どんな条件なら、商社が検索結果に出るのか
身近な商品から企業を探すと、Appleは見つけやすい会社です。iPhoneと企業名が直接つながっているからです。
商社の名前は、商品の表面にほとんど出ません。食品や電力、金属、住宅の流れを後ろへたどることで、初めて存在が見えてきます。
Cause Graphへ入れるなら、最初から「商社」と指定する必要はありません。
例えば、次の条件から探します。
日本の大型株で、売買しやすい
複数の事業から利益を得ている
海外にも収益源がある
財務実績に対して株価が低く評価されている
配当や自社株買いを続けている
稼げない事業から撤退し、資金を動かせる
この条件を重ねた結果として「日本・商社」が候補に出るなら、銘柄名を先に決めるより、選んだ理由を説明しやすくなります。
検索結果は買いの答えではありません。
そこから決算、資本配分、負債、事業撤退、反対材料を一次資料で確認します。Cause Graphの役割は、当てることではなく、調べる範囲を絞り、判断の抜けを減らすことです。
次のニュースを、どう読むか
2020年8月31日、5社の名前は公開されました。
その日に株を買えた人が何%いたかは分かりません。ただし、情報を読み、調べ、少額から所有する道は開いていました。
知識を増やすだけでは、保有資産は変わりません。
次に似た情報を見つけたときは、銘柄名だけを記憶せず、会社が稼いだお金をどう使っているかまで確かめる。
その視点があれば、スマートフォンの向こう側だけでなく、生活を支える日本企業も投資候補として見えるようになります。
収入の一部を資産へ移す考え方と、Apple株の10年検証は、こちらにまとめています。
月4万円の行き先
注釈─*SAKURA Cause Graphは、一次資料をもとに企業・政策・市場の変化を「原因→影響」でつなぎ、銘柄を推薦せず、利用者の判断材料を整理する、現在開発・検証中のプログラムです。株式だけでなく様々なケースに対応可能な設計にできます。AI自社運用などのご相談もお受けします。───────────────────
さくら
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計算条件・参照資料
商社投資の評価理由:Berkshire Hathaway 2024 Annual Report
日本株とAppleの配当・分割調整後価格:Digrin Price History
2020年8月31日の米ドル/円:ExchangeRates.org.uk 2020 History
2026年8月10日の米ドル/円:日本銀行「外国為替市況」
東京海上HDの株主還元:Return to Shareholders
*価格は配当・株式分割調整後の月次価格データを用いています。2020年8月は月末の8月31日、2026年8月は8月10日時点です。
*端株購入と配当の全額再投資を前提とした概算です。税金、売買手数料、為替手数料は含みません。
*開始日または評価日を変えると結果は変わります。過去の実績は将来の運用成果を示すものではありません。
*東京海上ホールディングスは参考比較であり、バークシャーが公表した商社投資には含まれません。
*本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の購入を勧めるものではありません。
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