ナガセ決算を読み解く|高校生部門が好調で増収も先行投資で営業赤字、次の焦点は下期の収益化
ナガセ 2027年3月期1Q 決算ハイライト
今回の決算を一言でまとめると、
「主力の高校生部門が好調で増収となった一方、広告宣伝費や人件費などの先行投資が増加し、全社では営業赤字となった決算」です。
営業収益は前年同期比3.6%増の142.1億円となりましたが、営業損益は前年同期の0.3億円の黒字から、0.9億円の赤字へ転落しました。
ただし、ナガセは生徒募集が本格化する第3・第4四半期に収益が集中し、第1・第2四半期は費用が先行しやすい事業構造です。
会社側も第1四半期の業績は概ね計画通りとしており、通期の増収増益予想は据え置いています。
全体の業績
まずは、2027年3月期第1四半期の全体業績を確認します。

・営業収益:142.1億円(前年同期比3.6%増)
・営業損失:0.9億円(前年同期は0.3億円の利益)
・経常損失:1.0億円(前年同期は0.9億円の利益)
・親会社株主に帰属する四半期純損失:3.1億円(前年同期は1.4億円の利益)
営業収益は前年同期から4.9億円増加しました。
一方で、営業原価と販売費及び一般管理費を合わせた費用の増加が売上の伸びを上回り、営業利益以下は赤字となっています。
特に純利益については、営業赤字だけでなく、創立50周年記念関連費用を特別損失として計上したことも影響しました。
売上が増えたのに、なぜ赤字になったのか
今回の決算では、営業収益が増加したにもかかわらず、営業赤字となりました。
その理由は、売上の増加額以上に費用が増えたためです。

・営業収益の増加額:4.9億円
・費用の増加額:6.2億円
・当第1四半期の費用総額:143.1億円(前年同期比4.5%増)
費用が増加した主な要因は、次のとおりです。
全国統一小学生テストのテレビCM
高校生部門の夏期生徒募集に向けた広告
学力向上に向けた教育施策
賃金のベースアップによる人件費の増加
ナガセは、夏期講座や下期の生徒募集に向けて、テレビCMなどの広告投資を積極的に行っています。
今回の営業損失0.9億円には、テレビCM広告費などの戦略投資費用3.7億円が含まれています。
会社の説明では、この戦略投資費用を除いた場合の営業利益は2.8億円です。
つまり、本業が大きく悪化して赤字になったというよりも、今後の生徒獲得に向けた費用を先に投入した結果、表面上の営業利益が赤字になったと考えられます。
一方で、純損失には創立50周年記念関連費用1.3億円の特別損失も影響しています。
ナガセはどのような会社なのか
ナガセは、教育とスポーツを中心に事業を展開する企業です。
代表的なサービスとして、大学受験予備校の東進ハイスクールや東進衛星予備校、中学受験向けの四谷大塚、スイミングスクールのイトマンなどがあります。
主な事業は、次の5つです。
高校生部門:東進ハイスクール、東進衛星予備校、早稲田塾など
小・中学生部門:四谷大塚、木村塾、東進四国など
スポーツ事業部門:イトマンスイミングスクール、イトマンスポーツスクエアなど
ビジネススクール部門:大学生・社会人向けの語学、ビジネス、IT・DX研修
その他部門:出版、オンライン学校、こども英語塾、国際事業など
主力は高校生部門ですが、近年はスポーツ、社会人教育、IT・DX研修などにも事業領域を広げています。
セグメント別の業績
続いて、事業別の業績を確認します。

高校生部門
・売上高:65.2億円(前年同期比7.4%増)
・セグメント利益:8.7億円(前年同期比21.0%増)
高校生部門は、今回の決算で最も好調だった事業です。
売上高は7.4%増、セグメント利益は21.0%増となり、売上以上に利益が伸びました。
前期末時点の在籍生徒数が増加していたことに加え、4月から6月までの新規入学数が前年同期比109%と好調に推移しました。
前年同期比109%というのは、前年の約1.09倍となったことを意味するため、新規入学数は約9%増えたことになります。
さらに、在籍生による夏期学習用講座の追加取得も大きく増加しました。
主力の高校生部門が、今回の全社増収を牽引しています。

小・中学生部門
・売上高:28.1億円(前年同期比0.6%減)
・セグメント利益:2.2億円(前年同期比30.8%減)
小・中学生部門は、売上高がほぼ横ばいだった一方、利益は約3割減少しました。
同部門の利益には、株式会社ヒューマレッジに関するのれん償却費0.6億円が含まれています。
ただし、のれん償却費を考慮しても利益の減少幅は大きく、今後の収益回復が課題です。
スポーツ事業部門
・売上高:44.5億円(前年同期比0.4%増)
・セグメント損失:0.5億円(前年同期は1.3億円の利益)
スポーツ事業部門は、売上高がほぼ横ばいだった一方、前年同期の黒字から赤字へ転落しました。
ナガセは2024年12月にイトマンスポーツウェルネスをグループ化し、スポーツ事業の規模を拡大しています。
自治体や学校からの水泳授業の受託、大人・シニア向けのフィットネス、ピラティスの新規出店などにも取り組んでいます。
事業の成長に向けた投資を進めている段階ですが、今後は売上の拡大だけでなく、利益を生み出せる体制を構築できるかが重要です。
ビジネススクール部門
・売上高:1.6億円(前年同期比5.0%増)
・セグメント損失:1.6億円(前年同期から0.5億円改善)
ビジネススクール部門は、引き続き赤字となりましたが、赤字幅は前年同期から縮小しました。
企業向けの語学・ビジネススキル研修に加え、新たな成長分野としてIT・DX研修を強化しています。
売上規模に対して赤字額が大きいため、今後は事業の成長と同時に、収益性の改善が求められます。
その他部門
・売上高:5.7億円(前年同期比2.4%増)
・セグメント利益:1.2億円(前年同期比28.4%増)
その他部門には、出版、オンライン学校、こども英語塾、国際事業などが含まれています。
規模は大きくありませんが、売上・利益ともに伸びており、増収増益となりました。
財政状態
続いて、財政状態を確認します。

・総資産:926.4億円(前期末から52.4億円減少)
・純資産:268.4億円(前期末から101.0億円減少)
・自己資本比率:29.0%(前期末は37.7%)
・現金及び預金:153.6億円(前期末から54.9億円減少)
総資産だけでなく、純資産と現金及び預金も大きく減少しています。
純資産が減少した主な要因は、次のとおりです。
・配当金の支払い:39.5億円
・自己株式の取得:53.8億円
・四半期純損失:3.1億円
・その他の包括利益累計額の減少:4.6億円
純資産の減少は、今回の赤字だけが原因ではありません。
創立50周年記念配当を含む配当金の支払いと、大規模な自己株式取得による影響が大きくなっています。
一方で、短期借入金は前期末のゼロから83.8億円へ増加しました。
株主還元を積極化している点は株主にとって前向きですが、現金の減少や借入金の増加、自己資本比率の低下には注意が必要です。
キャッシュフロー
ナガセは、第1四半期のキャッシュ・フロー計算書を作成していません。
そのため、営業活動、投資活動、財務活動のそれぞれで、どれだけ現金が増減したのかは今回の資料から確認できません。
ただし、貸借対照表を見ると、現金及び預金は前期末から54.9億円減少しています。
主な要因として、配当金や法人税の支払い、自己株式の取得などが挙げられます。
なお、第1四半期の減価償却費は8.2億円、のれん償却額は1.3億円でした。
通期業績予想
会社は、第1四半期の業績が概ね計画通りに推移しているとして、通期業績予想を据え置きました。
・営業収益:671.2億円(前期比4.6%増)
・営業利益:65.5億円(前期比9.6%増)
・経常利益:64.4億円(前期比10.5%増)
・親会社株主に帰属する当期純利益:43.8億円(前期比10.0%増)
第1四半期は営業赤字でしたが、通期では増収増益を見込んでいます。
ナガセは第3・第4四半期に収益が集中しやすいため、今後の夏期講座や生徒募集によって、第1四半期に先行した費用を回収していく計画です。
配当予想
2027年3月期の年間配当予想は、1株当たり120円です。

・中間配当:60円
・期末配当:60円
・年間配当:120円
前期の年間配当は150円でしたが、このうち50円は創立50周年の記念配当です。
普通配当だけで比較すると、前期の100円から今期は120円となるため、実質的には20円の増配です。
また、株主への利益還元機会を増やすため、今期から中間配当を実施する予定です。
今回の決算で良かった点
今回の決算で良かった点は、大きく4つあります。

1.主力の高校生部門が好調
高校生部門は、売上高が前年同期比7.4%増、セグメント利益が21.0%増となりました。
新規入学数や夏期講座の追加取得も好調で、ナガセの主力事業は堅調に成長しています。
2.全社の営業収益は増加
利益は赤字となりましたが、営業収益は前年同期比3.6%増加しました。
教育サービスへの需要そのものが大きく落ち込んでいるわけではありません。
3.戦略投資を除けば営業黒字
営業損失には、テレビCM広告費などの戦略投資費用3.7億円が含まれています。
会社の説明では、戦略投資費用を除いた営業利益は2.8億円です。
今回の赤字が、主に将来の生徒獲得に向けた費用の先行によるものだと分かります。
4.通期予想を据え置き
会社側は、第1四半期の業績を概ね計画通りと評価しています。
現時点では、通期の増収増益計画に変更はありません。
注意点
一方で、注意点もあります。

1.スポーツ事業が赤字転換
スポーツ事業は、前年同期の1.3億円の利益から、0.5億円の損失へ転落しました。
事業規模の拡大を進めている一方で、収益性は悪化しています。
今後は新規出店や事業拡大を、どのように利益につなげるかが課題です。
2.小・中学生部門の利益が約3割減少
小・中学生部門は、売上高がほぼ横ばいだった一方、利益は前年同期比30.8%減少しました。
高校生部門が好調な一方で、同じ教育事業の中でも業績に差が生じています。
3.広告費と人件費が増加
テレビCMなどの広告費や、賃金のベースアップによる人件費が増加しています。
これらの費用が今後の生徒数や売上の増加につながれば問題ありませんが、投資効果が十分に表れなければ、利益率の低下要因となります。
4.自己資本比率が低下
自己資本比率は、前期末の37.7%から29.0%へ低下しました。
主な要因は、配当や自己株式取得による株主還元ですが、現金も減少し、借入金は増加しています。
株主還元と財務の安定性を両立できるかに注意が必要です。
今後の注目ポイント
今後の注目ポイントは、大きく4つあります。

1.高校生部門の成長が続くか
今回の決算では、高校生部門が全社の増収を牽引しました。
今後も新規入学数や講座の追加取得が伸び、主力事業の成長が続くかが最大の注目ポイントです。
2.広告投資を回収できるか
第1四半期には、夏期講座や下期の生徒募集に向けて広告費を積極的に投入しました。
この投資が、今後の入学者数や売上の増加につながるかを確認する必要があります。
3.スポーツ事業が黒字に回復するか
スポーツ事業では、イトマンスポーツウェルネスのグループ化や新規出店を進めています。
売上規模を拡大するだけでなく、運営効率を改善し、黒字へ回復できるかが重要です。
4.株主還元と財務状態を両立できるか
ナガセは、増配や自己株式取得など、積極的な株主還元を行っています。
一方で、現金の減少、借入金の増加、自己資本比率の低下も起きています。
今後は株主還元を継続しながら、十分な財務余力を維持できるかが注目されます。
まとめ
今回のナガセの決算は、主力の高校生部門が好調で増収となった一方、広告宣伝費や人件費などの先行投資によって営業赤字となった決算でした。
営業赤字だけを見ると厳しい印象がありますが、戦略投資費用を除けば営業黒字となっています。
また、ナガセは第3・第4四半期に収益が集中しやすいため、第1四半期の赤字だけで通期業績の悪化を判断する段階ではありません。
会社側も業績は概ね計画通りとしており、通期の増収増益予想を据え置いています。
一方で、スポーツ事業の赤字転換、小・中学生部門の減益、自己資本比率の低下には注意が必要です。
今後は、高校生部門の好調を維持しながら、先行投資を第3・第4四半期の利益増加につなげられるかが、通期計画達成の鍵となります。
※本記事は、公開されている決算資料をもとに内容を整理・分析したものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

