第四次産業革命と教育
□景色
AI,ロボット,IoT,ビッグデータに代表される第四次産業革命は、産業、社会、経済、文化、教育に根本的な変化をもたらしている。
ジーメンス社のスマート工場では、ビッグデータにもとづいて顧客に300種の香水のうち最適な商品を推奨してインターネット販売を行い、その顧客の注文によって工場が自動で香水を製造、現在は宅配で届けているが数年先にはドローンで届けることになり、そうなると宣伝、販売、製造、配達の全てが人の労働を介さない過程となる。
日本では現在の労働がAIとロボット、IoTに49%代替されるという予測を、メガバンク中心の金融労働者人員削減、スーパーや量販店で無人レジ増加を見て予感できる。
肉体労働のみならず頭脳労働が代替され、新たに創出されるほとんどの労働はより高度な頭脳労働であり、変化に対応する学びが追いつかない大量の人々は無用階級(useless class)に転落する危険性がある。
□本

『第四次産業革命と教育の未来 —ポストコロナ時代のICT教育』
佐藤 学 岩波ブックレット 2021年
目次
1 第四次産業革命による社会の変化
2 新型コロナ・パンデミックとICT教育
3 巨大化するグローバル教育市場
4 「人材=人的資本」の変化
5 ICT教育の現在と未来
6 学びのイノベーションへ
7 改革の展望
要約
教育市場は飛躍的に成長している。中等教育と高等教育の2市場だけで2030年に1000兆円を超える。

教育のICT化により一人ひとり学習者の詳細な情報を蓄積しビッグデータ化、AIが「個別最適化」された学習をコンピュータが実現し、8割が人件費を占め収益化の難しかった民営化された公立学校で、委託された教育企業は教員の多くを解雇してコンピュータに置き換え、収益化。デジタル教材、カリキュラム開発、学力テスト、教員評価、学校評価、教員研修などでも収益化している。
日本のICT教育を推進している経済産業省は、未来の教室で学校教育と教育産業と産業界・大学・研究機関を交差させ一体化する体制づくりを狙う。その中心をになう一人一台の端末を準備するGIGAスクール構想で一挙に現実化してきている。

ただし政策と学校の現実は乖離していて、パンデミックによる3ヶ月の休校期間に文科省はICT教育のよる学習支援を各学校に呼びかけたものの、ICT活用した小中学校は5%。家庭のコンピュータとwifi環境の格差が大きく、遠隔授業の実施は不可能だった。
また日本の学習「個別最適化」は海外諸国のようなビッグデータとAI制御を伴っていないため15年前のICT教育のレベルを超えない。
ICT教育の効果はどうかというと、2015年にPISA調査委員会は学校のコンピュータ活用が長時間になると、読解リテラシーと数学リテラシーにおいて学力が低くなると分析した。コンピュータは情報や知識の獲得や浅い理解に有効だが、深い思考や探究的な学びに有効ではないと解釈している。

第四次産業を生きる子どもたちに必要な学びについて世界の教育学者たちの見解はほぼ一致している。「創造性」「探究」「協同」の三つを挙げる。
創造性の基礎となる芸術的創造と批判的思考によって培われる想像力は、AIがどんなに発達しても人間固有の能力であり、これにコンピュータを教える道具(CAI:Computer Assisted Instruction)ではなく探究と協同のための学びの道具(CAL:Computer Assisted Learning)としてICT教育を接合し、学びを展開することが望ましいだろう。
□ひとりごと
後日、音声公開予定
