見出し画像

「だし」と「みそ」のお話など。

 12月になり、勤務先で忘年会の予定がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。お酒の席で「おっ、いける口やね」とおじさん達は盛り上がります。「いける口」とは結構な量のお酒を飲める人を指します。今回はこういったよく用いられる言い回しを紹介しますね。

 そもそもこの場合の「口」は「物事を分類したときの同じ種類に入るもののひとつ」という意味での使われ方で中学入試問題頻出作家さんの作品にもよく出てきます。

例えばこんな感じです。

うちの父ちゃんも、その口。結婚直後に、いまでいう『リストラ』されてね。

出典「生きるぼくら」原田マハ(徳間文庫)

ちなみにオレは『暴れん坊将軍』で江戸時代に興味を抱いたクチである。

出典「日曜日の夕刊」重松清(新潮文庫)

俺もその魅力にノックアウトされた口で、誰かが新しいカセットを買ったと聞くと家に押しかけ、うまいことを言って取り入っては、楽しませてもらったものだ。

出典「花まんま」朱川湊人(文春文庫)

それぞれ、だいたい「人」みたいな意味合いで小学生にも感覚的に理解できると思います。ただ、授業で習うことはないですね。(「口」を用いた慣用句は習いますが。「口がかたい」など)

引用部分にある「暴れん坊将軍」「カセット」などのことばも小学生には「何それ?」です。小学生も、たまには時代劇も観たほうがいいのになと思ってます。

では続きまして「愛しの座敷わらし上(荻原浩)」より

なんだかタク君をだしにしてしまった感じ。今度会ったら、謝らなくちゃ。

出典「愛しの座敷わらし上」荻原浩(朝日文庫)

「だし」です。「何かの目的を達成するための手段にするもの」という意味で、「だしにする」で「自分のために他人を利用すること」です。食物の味をよくするために「煮だし」を利用することからできたことばらしいです。
類義語は「口実にする・踏み台にする」など。

次に「天の瞳少年編Ⅰ(灰谷健次郎)」より

ただ、その五十万円という金額がミソで、それを受け取った秘書は、シャネルの時計を買ってきてほしいと頼まれたといっている

出典「天の瞳少年編Ⅰ」灰谷健次郎(角川文庫)

「みそ」です。「ポイント。要点。工夫をこらした所。」を表します。味噌は隠し味としても用いる所から、肝心な点や重要な点を例えることばになったそうです。類義語は「~が肝(きも)」です。

それではその他【小学生が「何それ?」って思うことば】第33回「決まり文句に関することば②」を紹介させてください。

~がおるす

他のことに注意を奪われて、その方に気が回らないこと。
(例)テレビに夢中で手元がおるすになる。

漢字の練習中にぼーっとしていると、親から「ほら、手元がおるすやで」と。そんなときは「今日耳日曜」と返すのがパターン!日曜は休日を意味するたとえで、「耳日曜」で聞く気がないことを表します。1980年代、漫才コンビのザ・ぼんちさんのネタで用いられました。ご存じでしょうか。


~よろしく

前に付くことばを受けて、いかにもそれらしくという意味を表す。
(例)彼はコーチよろしく走り方のアドバイスをした。(「いかにもコーチのように」という意味になります。

「そこんとこヨロシク」「夜露死苦」なんかも小学生には「何それ?」でしょうね。


草(「お笑い草」や「言い草」の草)

もともとは「種」と書いて「くさ」と読んでいたが、その読み方から「草」も用いられるようになった。物事を生み出すもと。たね。材料。原因などを表す。

接頭語として用いられると、名詞について本格的でないものという意味になります。「草野球」など。


潮(しお)

事をする、もしくはやめるのによい機会のこと。しおどき。

「ものごとの終わり」というイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。本来はちょうどいい時期という意味だそうです。

物語の単元の授業で、山場(=クライマックス)の説明をする際に、「クライマックス=最後」のことだと思っている生徒さんが多かったことも思い出しました。


魔(「散らかし魔」の「魔」)

接尾語として用い、異常なほど熱心な人を表す。(例)メモ魔・電話魔

「散らかし魔」の反対は「片づけ魔」でしょうか。「片づけま魔」だとちょっとプラスの意味で熱心だと感じるのですが、「散らかし魔」の「魔」はマイナスの意味で用いられているのかなと思います。そもそも「魔」はすべてマイナス・皮肉の意味なんでしょうけれど。皆さんどう思われますか。

今回は中学入試問題頻出作家さんの作品から見つけた「決まった言い回し」を紹介しましたが、父親が「ガソリン切れや」と言ってお酒を飲んでいたのを思い出しました。お酒や食べ物など、原動力になるものを「ガソリン」と表現するんですね。「懐かしいな(もしくは現役で使用しているで)」とほっこりしてくださった方がいらっしゃったら幸いです。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

子どもたちの読書量が豊かになり、家族の会話が増えますように。

次回は「パ行がつくあやしげなことば」を書こうと思います。「ペテン」「パトロン」などなど…。

よろしければ前回の記事です。「顔に関することば」をどうぞ!


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集