「昭和 vs Z世代」― Nontitleシーズン6で気づいた、どちらも正しい理由
まず番組の構成を簡単に。
昭和世代チーム(3人)
- 浜ちゃん(浜本真規):営業・経理を経て公認会計士として独立。会計事務所を経営。
- 工場長(尾崎隆之):製造業の現場叩き上げ。明治大学出身。現場力と経験値が武器。
- せお丸(田中淳介):42歳。システムエンジニア歴20年以上。AI駆動開発協会の代表理事・サイバーフリークス株式会社代表取締役。新規事業を10個以上立ち上げてきたIT経営者。
Z世代チーム(3人)
- かんちゃん(井上幹太):不登校の経験を経てAI起業家へ。Regalis Japan Group株式会社代表取締役社長。「JCI JAPAN TOYP 2026」入賞。昭和世代を冷めた眼差しで観察するクールさが印象的。
- ゆい(堀由依):大阪大学卒の彫り師。自分のタトゥースタジオを持つ。「阪大卒のタトゥーアーティスト」という異色の経歴がSNSで話題に。
- :新卒で鉄道車両メーカーの営業職を経験した元会社員。ノンタイトル出演のために転職先の内定を辞退して参加。番組内でカミングアウトし話題に。
この6人が同じ屋根の下で事業を立ち上げる。面白いのは、「昭和世代=お金持ちの中年」でも「Z世代=SNS慣れした若者」でもなく、6人全員がそれなりにリアルな人生を背負ってきている点だ。
-----
昭和世代の3つのペルソナ
ペルソナ①「とにかく動く男」浜ちゃんタイプ
プロフィールイメージ:*営業・経理を経て公認会計士として独立。努力と根性で今の地位を作り上げた叩き上げ。
**口グセ:**「やってみなきゃわからない」「まず動け、考えるのは後だ」
行動パターン
初日の「30万円を元手に4日間で稼ぐ」ミッションに、迷わず飛び込む。緻密な計画より「とにかく足を動かす」を優先。アポなし営業、値切り交渉、泥臭い人海戦術を何の迷いもなく選ぶ。
なぜそうなったか
バブル崩壊後の就職難を体力で乗り越えてきた世代だ。「分析より実行」「会議より現場」が、成功体験として全身に刷り込まれている。スマホもSNSもない時代、足で稼いだ情報と人脈こそが最大の武器だった。「考えてから動く」のは、「行動を避けるための言い訳」にすら聞こえる。
Z世代がドン引きする場面
「まず見積もりを出してから動きましょう」と言うZ世代に「んなもん動きながら考えろ!」と一喝する。Z世代には「感情的」「怖い」に映るが、本人にとっては正真正銘の成功メソッドの伝授だ。
昭和世代同士には刺さる言葉
「俺も最初は何も持ってなかった。持ってないから動くしかなかったんだよ」
この言葉、Z世代には「自慢」に聞こえる。昭和世代には「励まし」に聞こえる。同じ言葉が、こんなにも違って届く。
-----ペルソナ②「現場を知れ」工場長タイプ
プロフィールイメージ:製造業で20年以上キャリアを積んだ現場叩き上げ。モノづくりへの誇りと職人気質が強い。
口グセ:現場を知らないとダメだ」「そんな理屈だけじゃ通らない」
p行動パターン
Z世代がAIや自動化ツールを使って業務効率化を提案すると、「でも最終的には人の目で確認しないと」と必ずブレーキをかける。自分の経験に根ざした判断に絶対の自信がある。データや数字より「感覚と経験」を信頼している。
なぜそうなったか
実際に「現場知らずの企画」が何度も失敗するのを目撃してきた。オーバーエンジニアリングで使い物にならなかったシステム導入、データだけ見て現場が混乱した改革——その苦い経験が「知識より実務」という信念を固めた。「理屈は後からついてくる」という哲学は、体験から生まれた本物だ。
Z世代がズレを感じる場面
「Notionで全部管理できますよ」と提案するZ世代に「俺には紙のほうがわかりやすい」と言う。Z世代は「ツールの問題」と思う。でも工場長には「俺の20年の経験が通用しなくなる怖さ」が根底にある。ツールの話ではなく、アイデンティティの話なのだ。
実は超有能な側面
トラブルが起きたとき、経験則から即座に「原因と対策」を出せる。「こういう失敗、昔も見た。あのときはこうした」という引き出しは、どんなデータベースにも代替できないリアルな強みだ。
-----
ペルソナ③「テックと経験を両方持つ」せお丸タイプ
プロフィールイメージ:42歳。システムエンジニア20年以上のキャリアの上にAI経営者へ転身。昭和の泥臭さとテックの知識を両方持っている、ある意味最強のハイブリッド。
**口グセ:hf俺の時代はこうだったけど、今はこうすべきだ」「実績を見ろ」
行動パターン
技術的な提案はZ世代より詳しいこともある。AIの話ではZ世代に負けない知識を持ちながら、コミュニケーションスタイルは昭和のまま。自分の実績と知識への自信が強く、Z世代の意見を「経験が足りない若者の話」と無意識に格下げしてしまうことがある。
なぜそうなったか
20年以上の現場経験の中で、「知識だけあって実行できない人」を山ほど見てきた。だから「言うなら実績を見せろ」という姿勢が染みついている。自分自身がそのハードルを乗り越えてきたから、若者にも同じ基準を求めてしまう。
Z世代がもどかしさを感じる場面
AIやSNSを使いこなす知識を持ちながら、Z世代との接し方は完全に昭和スタイル。「せお丸さんが昭和世代の中では一番わかってくれそう」と思ったZ世代が、気づくと「でも俺のほう実は最大の橋渡し役になれる人
技術もわかる、現場もわかる、昭和の文脈もわかる。どちらの世代とも話せる稀有な存在だ。ただ、「自分が正しい」という確信が強すぎると、その橋が機能しなくなる。
-----
Z世代の3つのペルソナ
プロフィールイメージ:不登校を経てAI起業家へ。20代で会社の代表取締役社長。表情が動かない、でも内側では常に計算している。
口グセ:**「それって再現性ありますか?」「感情論は一旦置いておいて」
#### 行動パターン
昭和世代が熱量で動くのを、少し引いた目で観察している。感情的な場面で無表情でいるのは「冷めているから」ではなく、「感情に引っ張られると判断が狂うから」という意識的な選択だ。ミッションでは最初に全体の構造を把握してから動く。
なぜそうなったか
不登校という経験が、「学校という”常識”の外でも生きていける」という確信を与えた。既存のルールや慣習より「本質的に何が正しいか」を重視する思考が自然と育った。感情的な圧力に屈しない耐性も、その経験の中で鍛えられた。
昭和世代がモヤる場面
「そんな細かい分析してる間に動けよ!」と言われたとき、「動いてから失敗するのが時間の無駄です」と淡々と返す。昭和世代には「覇気がない」「根性がない」に映る。でもかんちゃんにとっては「無駄を省くのが最速」という確信から来た言葉だ。
実は静かな負けず嫌い
「JCI JAPAN TOYP 2026」に入賞するような人が、勝負に興味がないわけがない。観察しているのは冷めているからではなく、「確実に勝ちたい」から無駄を省いているのだ。その熱さは外に出ない。だから誤解される。
-----
ペルソナ②「学歴×異端」ゆいタイプ
lプロフィールイメージ:大阪大学卒の彫り師。「普通のルート」を自分で降りた人。20代。
口グセ:私がやりたいことをやっているだけです」「なんで今さら”普通”に戻らないといけないんですか?」
行動パターン
「阪大まで出てなんで彫り師に」という周囲の目を何度も受けてきた。だから「世間の基準」に対して免疫がある。昭和世代の「常識」にも、同じ距離感で接する。自分のスタジオを持ち、実際に事業を動かしている自信が、その落ち着きを支えている。
#### なぜそうなったか
偏差値の高い大学を出た後に「やっぱりこの道じゃない」と気づいた。周囲に反対されながらも彫り師の道を選び、実際に自立した。「正しいレールより、自分が信じる道」という選択を、代償を払って実証してきた人だ。
#### 昭和世代との温度差が出る場面
「せっかく大学出たんだから、もっとスマートなビジネスができるだろう」という昭和世代の発言に、静かに「私にはこれが一番スマートな選択でした」と返す。昭和世代は「もったいない」と思うが、ゆいはすでにその議論を何百回もくぐり抜けてきている。
#### 実は誰よりも「事業をやっている」人
自分のスタジオを経営している。集客もブランディングも、一人でやってきた。昭和世代が「まず動け」と言う前に、すでに動いていた人だ。ただ、その実績が「彫り師」という仕事の見た目の珍しさで、最初は正当に評価されにくい。
-----
### ペルソナ③「安定を捨てた挑戦者」そうちゃんタイプ
**プロフィールイメージ:** 新卒で大手メーカーの営業職に就き、安定した将来が約束されていた。でもノンタイトルへの出演を決め、転職先の内定を辞退した。
**口グセ:**「このままじゃ嫌だなって、ずっと思ってたんですよね」「失うものがあっても、やってみたかった」
#### 行動パターン
場を明るくする力と、人と自然に距離を縮める能力が高い。昭和世代とも臆せず話せるし、Z世代の仲間の意見もよく聞く。ゲイバーでの接客経験が、多様な人と向き合う洞察力を育てた。
#### なぜそうなったか
「なんとなく安定を選んでいたら、自分が何者かわからなくなりそう」という恐怖があった。昭和世代の「レールに乗れ」という価値観の逆を生きてみたかった。番組でのカミングアウトも、「これ以上自分を隠したくない」という意志の表れだ。
#### 昭和世代が理解できない場面
「内定蹴ってまで来たの?」と驚く昭和世代に、「はい、後悔してないです」と答える。昭和世代には「もったいない」「リスクの取りすぎ」に映る。でもそうちゃんにとっては、「安定した不満足」より「不安定な挑戦」のほうが、ずっと本質的なリスクが低いのだ。
#### 実は誰よりも昭和世代に「刺さる」存在
コミュニケーション能力が高く、昭和世代ともちゃんと関係を作れる。Z世代の中で、最も昭和世代の「言いたいこと」を理解しようとしている。「理解できる」と「賛成する」は別物だと知っているから、反発もしない。
-----
## 衝突の本質は「合理性の定義の違い」
この6人を見ていて気づいたのは、昭和世代もZ世代も、**それぞれの時代における「合理的な行動」を取っている**ということだ。
|場面 |昭和世代の合理性 |Z世代の合理性 |
|------|-------------------|------------------------|
|営業 |足で稼ぐ → 信頼関係が生まれる |SNSで広げる → スケールが違う |
|意思決定 |経験から直感で決める → スピードが命|データで検証してから動く → 失敗コストを下げる|
|失敗への姿勢|やってから修正する → 行動量が正義 |事前に検証する → 無駄を省くのが最善 |
|休息 |働いた後に休む → 達成感が先 |整えてから働く → 質を上げるための投資 |
|キャリア |会社に尽くす → 安定と信用を得る |自分を磨く → どこでも生きていける力を得る |
どちらが正しいというより、**どちらが「今の文脈」に合っているか**、という話だ。
-----
## 昭和世代の私がZ世代に学んだこと
正直に言う。
「足を動かすことが美徳」という信念は、今でも本物だと思っている。でもNontitleを観て、**「動く前に整理する」ことの価値**を改めて認識した。
かんちゃんの「動いてから失敗するのが時間の無駄です」という発言は、最初は「覇気がない」に聞こえた。でも冷静に考えると、彼は不登校というゼロからの出発で、すでに会社を作っている。無駄を省いた結果が、その実績だ。
ゆいの「自分がやりたいことをやっているだけ」という言葉も、最初は「甘い」に聞こえた。でも彼女は阪大を出たうえで彫り師を選び、自分のスタジオを経営している。リスクを理解した上での選択だ。
そうちゃんの「内定を蹴った挑戦」も、昭和世代から見ると「無謀」だ。でも彼には、「安定した不満足を続けることのほうがリスクだ」という確信がある。
**「合理性」の定義が、根本的に違う。** それだけの話だ。
-----
## Z世代に伝えたいこと
一方で、Z世代にも届けたいことがある。
**昭和世代の「マウント」に見える発言の多くは、愛情の表現形だ。**
「俺はこうやって乗り越えた」という話は、自慢ではなく「あなたにも乗り越えてほしい」という裏返しだ。伝え方が古くて下手なだけで、想いは本物だ。
せお丸がZ世代を「経験が足りない」と見てしまう瞬間も、根底には「こいつらに成功してほしい、でも甘い考えで失敗してほしくない」という親心がある。コミュニケーションの取り方に問題があっても、動機は悪くない。
そして「根性」という言葉の中には、**「状況が変わっても諦めない意志」**という普遍的な価値が含まれている。AIがどれだけ発達しても、最後に踏み出す一歩は人間が出すしかない。その一歩を後押しするのが、昭和世代の「動け」という言葉の本質だ。
-----
## まとめ
昭和世代は「動いてきた実績」を持っている。
Z世代は「動き方を設計する知性」を持っている。
浜ちゃんの「まず動け」と、かんちゃんの「再現性はありますか」は、どちらも「勝ちたい」という同じ欲求から来ている。
工場長の「現場を知れ」と、ゆいの「自分が信じる道を行く」は、どちらも「本物を作りたい」という同じ誠実さから来ている。
せお丸の「実績を見ろ」と、そうちゃんの「このままじゃ嫌だ」は、どちらも「ちゃんと生きたい」という同じ真剣さから来ている。
Nontitleシーズン6が面白いのは、この化学反応がカメラの前でリアルに起きるからだ。
**衝突は終わりではない。衝突はスタートだ。**
そして、その衝突を通して、どちらの世代も少し成長していく——それがこの番組の、本当の見どころだと私は思っている。
-----
*この記事はNontitle シーズン6の視聴をきっかけに、世代論として考察したものです。番組内の個人の行動・発言に対する批評ではなく、それぞれのキャラクターをヒントにした「世代の視点」の考察です。*
-----
YouTubeの起業リアリティショー『Nontitle シーズン6』を観た。
昭和世代3人、Z世代3人が同じ屋根の下で共同生活を送りながら事業を立ち上げていく。第1話から価値観の衝突が起き、SNSでも「Z世代がドン引きしてる」「昭和世代の根性論が古すぎる」といった声が溢れていた。
私は昭和世代だ。だから最初は「昭和世代が正しい」と思って観ていた。でも観続けるうちに、どちらも間違っていないことに気づいた。正確に言えば、それぞれが「自分の育った文脈」に対して合理的に行動しているのだ。
この記事では、番組に登場する6人のリアルなキャラクターをベースに、「なぜそう考えるのか」という背景まで掘り下げてみたい。対立構造ではなく、相互理解のきっかけになれば嬉しい。
