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弁当箱専門店で買った弁当箱が、思ってた未来にならなかった話

平日、私はだいたい弁当を持っていく。

自分専用の弁当箱もある。

昔、弁当箱専門店なるところで買った、わりとちゃんとしたやつだ。

専門店というだけあって、狭い店内に、いろんなタイプの弁当箱がぎっしり並んでいた。

二段。曲げわっぱ。スリム。汁漏れしない系。

私はその中から、けっこう真剣に選んだ。

「これからの弁当人生、こいつと歩んでいくんやな」

くらいの気持ちで選んだ。

今もその店があるのか調べたら、ちゃんとあった。

京都発らしい。

さすが京都。何でも極めにくる。


妻の弁当をやめた日


ちなみに用意するのは、私一人分だけだ。

娘は給食。
妻の分も、前は作っていた。

でもある日、こう言われた。

「たまには、出来立ての温かいご飯が食べたい」

それを聞いて、私は妻の弁当作りを自発的に作るのをやめた。

潔く、引いた。

もちろん、明日また「作って」と言われたら、

「はい、喜んで!」

と秒で答える。

我が家では、こういうことは日常茶飯事である。


ある朝、私は魔が差した


そんな弁当生活を送っていた私に、最近とんでもない発見があった。

ある朝、急いでいた。

弁当箱を出すのも、詰めるのも、なんか面倒だった。

そのとき、ふと冷蔵庫の横に積まれた、あいつらが目に入った。

プラスチックのタッパである。

昨晩の残りを、夜のうちにそのまま詰めておいたやつ。

私は、魔が差した。

「これ、このまま持っていったらええんちゃう?」

朝、軽く一品だけ足して、白米を詰める。

完成。

弁当箱、使ってない。


タッパ、強い


正直、最初は「まあ非常手段やな」と思っていた。

ところが、これがめちゃくちゃ良かった。

まず、洗うのがラク。

フタもパッキンの溝もない、ただの四角。

油汚れはちょっと面倒だが、洗えば落ちる。

そして私は、冷えたご飯でもいける派だ。

レンジでチンもしない。
冷たいまま、わしわし食べる。

気をつけるのは、冷めたときに油が白く固まる料理を避けるくらい。

味と食感が崩れないものだけ選べば、何の問題もない。

マイクロプラスチックも、温めない分、最小限のはず。

知らんけど。


気づけば私は、毎朝タッパに手を伸ばすようになっていた。

朝の数分が、ふっと軽くなった。


どうでもいいが、気になることがある


ここまで読んで、お気づきだろうか。

私は、弁当箱専門店で、真剣に選んだのだ。

京都で、極められた店で。

二段だの曲げわっぱだの、さんざん悩んで。

「こいつと歩む」と誓ったのだ。

それが今、どうなっているか。

棚の奥で、静かに眠っている。

一度も「お前が悪い」とは言われていないのに、出番だけがない。

完全に、タッパに席を奪われている。


なぜ人は、ラクなやつに勝てないのか


人は、ちゃんと選んで手に入れたものほど、それを「正解」だと思い込みたくなる。

せっかく専門店で選んだんやから、これがベストなはず、と。

でも実際の毎日を救ってくれるのは、立派なやつより、ただラクなやつだったりする。

弁当箱は、間違いなく良い品だ。

でも、私の朝に合っていたのは、タッパだった。

「良いもの」と「自分に合うもの」は、たぶん別物なのだ。

しかも厄介なことに、一度ラクを知ると、もう戻れない。

立派な弁当箱を見るたび、申し訳ない気持ちになる。

でも手は、タッパに伸びる。

人間、最後はラクなやつに勝てないのである。


P.S. 先日、妻に言われた。

「その四角いやつ、タッパやんな?お弁当箱、どこいったん?」

私は答えた。

「、、、引退した」

妻は少し考えて、こう言った。

「ふーん」

、、、あの「ふーん」には、たぶん私の知らない情報が詰まっている。



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