【教科書に載っていない世界一周】〜4-7🇮🇳日本のパスポートが突然通用しなくなった日(前編)
(この記事はこれまで110ヶ国を訪問した筆者が、2001年から1年かけて行った世界一周🌏を、現在の目線で振り返ったものです)
「パスポートは最強の身分証明書」
ずっとそう思っていた。
あの日、空港で“Cancel”のスタンプを押されるまでは。
🌄夜明け前、世界はまだ静かだった
まだインドにいる。本来なら、今ごろ中近東バハレーンにいるはずだった。
夜明け前の空港は、いつも独特の静けさに包まれている。眠気をまとった旅行者に、いつものように無愛想な係官。この空間で“事件”が起きるとは、想像もしなかった。旅はすべて順調。あとは「飛ぶだけ」だった。
インド南端のティルバナンタプーラム(トリバンドラム)国際空港にタクシーが着いたのは出発2時間前。余裕を持って出国審査を終え、パスポートには出国スタンプも押された。搭乗券も受け取り、あとは搭乗口へ向かうだけ。
旅人にとって、もっとも安心できる瞬間だ。
「もう、何も起きない」
誰もがそう信じるタイミングだ。
👂背後からの一言
搭乗口へ向かって歩いていると、背後から声がかかった。
「ちょっと、こちらへ来てくれますか?」
振り向くと、さきほど出国スタンプを押した係官だった。
彼はもう一度パスポートを求め、それを手にすると
「しばらく待っててください」
そう言って奥へ消えた。理由は告げられない。説明もない。ただ、パスポートだけが取り上げられた。
⏳不安に満ちた15分間
陸路の国境越えで問題が起きることはまずない。だが、空路で第三国へ向け国境を越えるときは、何があるかわからない。胸の奥がざわめく。
もちろん、後ろめたいことは何ひとつない。だが15分経っても、係官は戻ってこない。
「搭乗時までには返してくれるだろう」
そう自分に言い聞かせた。
🔨目の前で下された決定
やがて係官は戻ってきた。恰幅のよい上司らしき男を伴って。
「搭乗券も見せてもらえますか?」
券面を確認した上司は、淡々と部下に告げた。
「この男の搭乗をキャンセルしたまえ」
一瞬、時間が止まった。意味が理解できなかった。
彼は続けた。
「そして、これもキャンセルだ!」
パスポートに押されたばかりの出国スタンプの上に
“Cancel” の赤い文字が叩きつけられた。
🕵️日本人であることが確認できない!?
上司は、事務的に言い放った。
「君が日本人であるという確証が持てない。
確認が取れるまで、インドから出国させるわけにはいかない」
本来パスポートはその国の政府が発行する身分証明書。
それが通用しないとはどういうことか。
🪪日本人であることの証明
「そんなはずはない。僕は正真正銘の日本人だ。これが証拠だ」
クレジットカード、写真付ライセンス、これまでの渡航歴。思いつく限りの材料を差し出し、言った。
「バハレーンで知り合いが待っている」
「今日、どうしても飛ばなければならない」
「宿もチェックアウトした。もう戻れない」
だが、彼は一切取り合わなかった。
「とにかく、今日のフライトは諦めなさい」
そう言い残し、背を向けて去っていった。
✈️目の前で飛び立つ飛行機
出発まで残された時間は1時間半。諦めきれず、別の係官や航空会社のスタッフにも掛け合った。だが、結論は同じだった。
その”上司”が言う以上、
「日本大使館の確認が取れない限り、出国は不可能です」。
そして大使館が開くのは、飛行機が飛んだ後。
結局、搭乗するはずの飛行機は、
目の前で、何事もなかったかのように、悠々と空へ吸い込まれていった。
これまで順調にきた旅は、突然暗礁に乗り上げた。
▶︎ 次回予告🔜
果たしてインドからは出国できるのか?
そもそも、ぼくの出国はなぜ取り消されたのか?
それは個人の問題ではなく、インド側の“事情”だった。
後編では、ぼくが“危険人物”とみなされた本当の理由を明かします。

(トップ写真は南インドの朝焼け)
