【教科書に載っていない世界一周】〜2-10ヒマラヤの扉が開くとき
🏔️「ドラえもんチーム」誕生!
せっかくラサまで来たんだから、次はエベレストを見に行こう!
そう盛り上がった僕ら3人。
でも、メンバーを5人集めるまではただの夢物語。残り2人を募集するため、思い切ってホテルの掲示板にこんな「秘境ツアー広告」を出してみることにした。
♨️湯けむり 秘境丸かじりツアー
ルート:ラサ → ヤムドク湖 → ラツェで温泉 → エベレスト・ベースキャンプ → 国境 → カトマンズ
日程:10/13~17(3泊4日)
金額:一人1000元(約1.4万円)
定員:5名(あと2人募集中!)
✨コンセプト✨
ランドクルーザーに乗ってヒマラヤを駆け抜け、温泉につかり、チベット人とも交流しながら、一緒にネパール国境を目指そう!
どうにかして気を引こうと、「湯けむり」「温泉」「交流」などみんなが興味をひく言葉を散りばめてみた。しかも、広告にはイラストの上手い仲間が描いた大きなドラえもん。青い体にまん丸の顔、四次元ポケット。これが各ホテルの掲示板でひときわ目立ったのだ。
そのインパクトは絶大だった。
旅行者たちのあいだで広告はすぐ話題になり、僕らはいつの間にか
「あ、あのドラえもんチームでしょ?」
と呼ばれるようになった。
ちょっと恥ずかしいけど、なんだか誇らしい。ぼくらのチームの愛称だけはしっかり浸透していた。
数日後、それまで迷っていた二人の旅行者が参加を決意。こうして5人のメンバーが揃い、名実ともにドラえもんチームが結成!
ラサに着いてから5日目、ようやくヒマラヤへの扉が開いた気がした。

🚙 闇業者の落とし穴
次に必要なのは、車・運転手・ガイドの手配だ。
ラサの旅行業者には「正規の国営代理店」と「闇業者」が存在する。値段は闇業者の方が3割安い。だけど公安に見つかれば即勾留のリスクつき。
正直、僕らは安さに惹かれた。みんな旅の予算は限られているし、まだ"公安の怖さ"もよくわからなかったからだ(中国に滞在すると度々思い知ることとなる)。一日中ラサの街を歩き回り、苦労してようやくある闇業者を探し出し、翌日契約というところまでこぎつけた。
ところが、その翌朝、事件が起きた。
その闇業者で早朝出発したチームが、ラサを出てすぐ交通事故に遭い、乗客は血まみれで病院へ運ばれたのだ。さらに、現場には公安が駆けつけ、業者は即日営業停止になったという。
もしぼくらが1日早く契約していたら、僕らがその血の海の中にいたかもしれない。そう思うと背筋が凍った。メンバー集めに手間取ったおかげで、出発が遅れ、結果として命拾いをしたことになる。
被害者の中には、標高5000mで「フレッシュエアが欲しい!」と叫んで窓を開け放ったあのオランダ人カップルも含まれていたらしい。偶然か、因果応報か……。
結局、僕らは「正規代理店」に申し込むしかなくなった。こちらはこちらでトラブルも多いと聞く。料金、車種、事故時の金額負担、ガイドの権限――すべて事前に交渉しなければならない。
辛抱強く交渉を重ね、なんとかこちらに有利な条件で契約を成立。ようやく念願のヒマラヤを抜けたネパール国境へ出発の朝を迎えることになった。

▶️次回予告
いよいよラサを発ち、ランドクルーザーはエベレストベースキャンプへ。
頭を締めつける高山病、夜空に大氾濫していた天の川、指先まで凍らせる冷気。
そんな苦しみの先に、ついにエベレストが姿を現す。凍ったペットボトルと眠れぬ夜を乗り越えて、いよいよ中国最後の夜を迎える。
(トップ写真はラサ郊外)
