【教科書に載っていない世界一周】〜2-12最後に公安当局に捕まりました
いよいよヒマラヤ越えの最終日。目指すはネパール国境。
4000m級の高原を4WDでひたすら走ると、昼過ぎにニュラムという町に着いた。ここで事件は起こった。中国の警察組織、”公安”に捕まってしまったのだ!
ネパール国境に着く前に腹ごしらえをしようと、その町に立ち寄った。いくつかある食堂の中から、まずはガイドが薦める食堂に入ってみた。客のあまりいないうらさびれた食堂で値段も高い。どうもガイドは毎回キックバックをもらって懇意の食堂へ乗客を斡旋しているようだった(中国ではよくあることらしい)。
更にこの店主は応対もいいかげんで喧嘩腰だったので、別の食堂に移ろうと席を立った。すると店主がカッとなり、僕と口論(チベット人なので英語は話せる)に。胸ぐらをつかまれ、殴られそうになったので、店主を振り払い、隣の食堂に移った。
一転して平穏な普通の食堂で、安らかに皆で食事を楽しんだ。が、食事を始めて30分後、背筋の伸びたいかめしい二人組の中年男が店に。このあたりでは見慣れない漢民族だった。
「君達のリーダーは誰だ?」と聞いてきた。
「はい、僕です」
そう答えるやいなや
「この場所を動くな。君たちをしばらく拘束する!」
僕は耳を疑った。背筋が凍ったが、冷静を装い、言葉がわからぬふりをして、ガイドに事情を尋ねさせた。彼が言うには、この食堂は外国人の食事が許されていないらしく、法律に違反したため店と客を処罰する、とのことだった。
中国の食堂に「入っていい店といけない店がある」なんて、寝耳に水。百歩譲って店主や店員が捕まるのなら理解できるが、店の許しを得て食事をしている外国人が捕まることなど理解できない。中国はなんと異常な国なのか?
こんなことで捕まった外国人の話は聞いたことがないが、どうもさきほどの口論で気が収まらなかった店の店主が、嫌がらせのため公安を呼んだらしい。
まずいことになった。今日中に国境につかねば、皆のスケジュールが狂うだけでなく、ランドクルーザーのチャーター料やドライバーとガイドとの契約料でかなりの追加料金が発生してしまう。ぎりぎりの予算でやってきている僕らにとりそれはかなりきついことだ。そして何より僕ら5人は今からどこへ連れて行かれるのかわからない。不安と緊張で足ガクガク震えた。
まずは町の派出所へ連れて行かれ、事情聴取。まずガイドが呼ばれた。待っている間、どうすべきかを冷静に考えた。事前に法律を説明すべきだったガイドに非があるように思えるが、そのことを公安はわかってくれるのだろうか。
遠くから見ていると、ガイド自身も、自分の仕事がかかっているため一歩も引かず、悪いのは勝手に食堂を探して入った僕らだと必死に訴えているようだった。まずい、これまで一緒だったガイドが敵にまわってしまったようだ。しっかりした中国語が話せないだけ、こちらの分が悪いような気がした。
いよいよ僕の事情聴取。こんなときこそ感じよく接しなければ。そう思い、つとめて笑顔を心がけ、フレンドリーな態度を装った。不安を隠して、自信あるそぶりで誠実そうに振舞った。五分くらい話した後、再び彼らは奥へ入っていった。その後、再び事情聴取のためガイドと運転手が奥に呼ばれた。
不安な気持ちで僕らはそのまま待たされた。1時間近く経ったころ、ようやく“お沙汰”があった。結果は・・・ガイドが罰金刑、僕らは無罪。後になってみれば、こんなことで捕まるはずはないと思うのだが、僕らはみな生き返った心地だった!
思えば、もともと今回のトラブルを招いたのは僕に責任があったと反省した。最初に入ったお店で、店主の態度を諌めようと最初に楯突いたのは、他ならぬ自分だった。僕がメニューをテーブルに叩きつけ、席を立たなければ彼はこれほど怒らなかったはずだ。悪態をついた店主をたしなめるためとはいえ、僕の取った行動のためにメンバーのみんなを窮地に入れてしまったことをひどく反省した。
他のメンバーは気にしていないようだったが、旅では必要以上に人と対立するのは避けた方がいいと学ばされた事件だった。(役人にはどんな時もフレンドリーに振る舞わないと後悔することを、ひと月後インドの出国管理でも学ぶことになる。)
(トップ写真は「チベットの辺境の地」で途方にくれる筆者)
写真を撮る余裕のない回でした。
