【教科書に載っていない世界一周】〜2-5中国長江上流編(もてなしと過酷な鉄道)〜
🚢 【本人いなくても温かいおもてなし! 重慶】
5日間にわたる三峡クルーズの船旅が終わり、重慶(じゅうけい)に到着。
船で同室だったアメリカ人のスコットさんと意気投合し
彼の友人を訪ねることにした。
彼はシンガポール在住の30代。
長期休暇で中国を旅行している外資系の証券マンだ。
グローバルに活躍している彼は、たまたま東京で日本語研修を受けた際に
中国から派遣されてきていた同僚女性と親しくなり
「重慶に着いたら、ぜひ私の実家を訪ねて!」
と言われ、これから訪問するという。
「一緒についてきてくれないか?」と言われ
僕は全くの赤の他人だったので断ったものの
"旅は道連れ"と思い直し、二人で彼女の実家を訪ねることに。
結局、彼女は留守だったが
彼女の思いを受けていた彼女のお父さんが温かく迎えてくれた。
見知らぬ僕たちのために
高級レストランで重慶名物「火鍋」を振る舞ってくれ
その晩のホテルまで準備してくれる。
結構な金額の食事と宿泊代にもかかわらず
快くもてなしてくれた。
噂には聞いていたが、中国人の心意気(メンツ?)はすごいなぁと思った。
中国人の家族の絆とおもてなしの精神にジーンときて
心温まる一晩を過ごさせてもらった。
この時、予想外の体験をした。
スコットさんと僕の船内での共通言語は英語だった。
アメリカ人だから仕方ないと思い、英語でずっと話していたが
重慶に着いた途端、彼女と話すスコットさんの電話口から聞こえてきたのは
「ア、モシモシ、オゲンキデスカ」
なんと日本語だったのだ。電話の向こうの彼女(中国人)の言葉も日本語。
「なんだよ、日本語話せるのかい!」と僕は唖然とした。
そう、英語の話せない中国人の彼女と、中国語の話せない米国人の彼の
共通言語はまさかの”日本語”だった。
異国の地で日本語を使って話す異国人たちの会話を目の当たりにし、
「日本人のいないところでも、こんな風に日本語が使われているんだ!」
と驚いた。

🍜 【こんな奥地にも日本のスーパー】
次に向かったのは成都(せいと)。
三国志の舞台として有名なこの街は
「内陸の香港」とも言われるほど発展していた。
そんな成都で驚いたのは、「イトーヨーカ堂」があること。
あんパンやたこ焼きなど、ふだん中国大陸ではお目にかかれない"ご馳走"を
目当てに、日本人旅行者が集まる場所となっていた。
僕もさっそく足を運んでみた。
店内に足を踏み入れると、驚くほど日本とそっくりなレイアウトと外装。
レジでは現地店員が中国語で
「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」
と言って、なんとお辞儀までしてくれる。
中国ではお辞儀を日常的に目にする機会はほとんどなかったので、このていねいな光景はとても新鮮だった。
ぼくも自然とお辞儀を返し、異国で日本らしい所作を交わせたことに、ちょっとした喜びを感じた。
イトーヨーカ堂の店員教育は日本と同じように行われており
日本企業の力を改めて実感させられた。
🌶 【成都といえば麻婆豆腐】
四川料理の聖地成都。
四川は一年中温かく湿度も高いため、食べ物が腐りやすい。
そんな環境に適応して生まれたのが辛い四川料理だ。
辛さだけでなく、山椒のピリピリとした刺激が特徴。
四川の辛さは唐辛子だけでなく、山椒が効いているのだ。
代表的な料理「麻辣豆腐」(まーらーどうふ)は、日本で食べる麻婆豆腐とは全く違う。
舌の上にのせた瞬間、「ジュー!」と焼けるような辛さに舌が襲われる。
辛いのが得意な僕でも、数分で食べられなくなる。
結局、大半を残してしまった。
ここ成都で食べたのは、麻さんという店の麻辣豆腐。
この店が麻婆豆腐の発祥の地だと聞き、訪れてみた。
他の店より少し柔らかな味わいだったが、それでも十分辛かった。
テーブルには、一人一つずつ店名入りのポケットティッシュが
セットされていたのが、とってもありがたかった。
涙と鼻水が止まらない四川料理には必需品ともいえる
画期的サービスだった。

🚆 【中国人民の過酷な夜行列車】
中国は世界で最も鉄道が利用される国の一つ。
成都から西安を目指し、夜行列車に乗り込んだが、寝台列車は満席。
座席車で17時間を過ごすことになったのだが
狭くて硬い座椅子での夜行は、日本では考えられないほど
耐えがたい時間だった。
夜中にふと目を覚ますと、ショッキングな光景が広がっていた。
満室の車内では、まるで睡眠ガスでも吸ったかのように、
ほぼ全員が"普通ではないような姿"で意識を失っていたのだ。
ある者は天井に顔を向けたまま口を大きく開き
あるものは手すりに倒れ掛かるように体を投げ出して眠りこけている。
日本の車内のように上品に寝ている人はほとんどいない。
床にはゴミや、つば、痰が散乱。
ひまわりの種の食べカスが山のように積もっている。
(当時の中国ではどこでも床がゴミ箱だった)
そんな床の上で寝ている人もいる。
僕はまたもや耳栓に助けられたが、耳をつんざくいびきの大合唱に
バイタリティ溢れる中国民衆の生活の一部を垣間見た気分だった。
9/21 16重慶:“三峡クルーズ”(船)4泊5日
9/22 17成都:高速バス4時間
9/27 18西安:夜行列車17時間

🚌【次回からはついにもう一つの中国へ】
多くの日本人の知っている中国、つまり漢民族の中国の旅はここまでです。
このあとは、いよいよもう一つの中国(異民族の中国)へ向かいます。
なかでも今回の旅の真髄、チベット高原は
空気、景色、食文化、そして人々の生き様が全く違いました。
標高4000mを超す山々を越え、絶景に埋もれる秘境に足を踏み入れます。
過酷な環境で待ち構えていた高山病との戦いや、初めて見る雪景色、
そして苦難の末に到達したラサの感動をお伝えします。
これまでの旅が新たなステージを迎える瞬間でした。
この広大な大地を踏みしめることで、僕が見たもの、
感じたものを、お届けしたいと思います。お楽しみに!
