🇺🇸:今週の相場総括:2026/08/10の週おさらい
今週の米国市場は、ひと言で言えば 「インフレ鈍化で最高値を更新したものの、消費減速・原油高・AI株の高すぎる期待がブレーキをかけた週」 でした。
CPIとPPIは市場にとって良い数字でした。S&P500は史上最高値を更新し、AIインフラ株にも再び資金が入りました。
ただし金曜日には小売売上高が予想外に減少。
さらにホルムズ海峡をめぐる緊張で原油価格が上昇し、株価は最高値から少し押し戻されました。
■ 今週の市場まとめ
・NYダウ / 53,732.41 / 週間 -0.6%
・S&P500 / 7,785.76 / 週間 +0.4%
・Nasdaq / 26,729.16 / 週間 +0.1%
・Russell2000 / 3,068.42 / 週間 +1.1%
・VIX / 14.25
・米10年債利回り / 4.70%前後
・米2年債利回り / 4.17%前後
・ドル指数 DXY / 99.67
・ドル円 / 159.37円前後
・WTI原油 / 82.40ドル
・Brent原油 / 88.52ドル
・金現物 / 4,380ドル前後
・Bitcoin / 63,000ドル前後
・AAA全米ガソリン平均 / 1ガロン4.08ドル前後
■ 1. CPIはかなり良かった。9月利上げ観測が後退
・7月CPI / 前月比 +0.1%
・前年比 / +3.4%
・コアCPI / 前月比 +0.2%
・前年比 / +2.5%
・ガソリン価格 / 前月比 -2.9%
・9月利上げ確率 / CPI後に大きく低下
市場が最も警戒していたCPIは、比較的穏やかな数字でした。
特にコアCPI前年比2.5%は安心材料です。
原油価格が大きく動いていた割に、消費者物価への波及は今のところ限定的。これを受け、9月FOMCでFRBが利上げするとの予想は後退しました。
ただし注意も必要です。
7月CPIには、その後の原油高が十分反映されていません。
つまり今回のCPIは良かった。でも、8月も良いとは限らない。
ここは分けて考えた方がいいと思います。
■ 2. PPIも前月比0%、インフレ再加速懸念はいったん後退
・7月PPI / 前月比 0.0%
・市場予想 / +0.2%
・前年比 / +4.7%
・6月 / +5.5%
・サービス価格 / +0.2%
・財価格 / -0.7%
PPIも予想より弱い数字でした。
CPIに続いてPPIも落ち着いたことで、「FRBが急いで利上げする必要はない」という見方が強まりました。
S&P500が木曜日に史上最高値を更新した理由の一つです。
ただ、前年比4.7%という数字はまだ高い。
さらに7月後半に急騰した原油価格は十分反映されていません。
今週のインフレ指標は良かった。
でも、インフレ問題が終わったわけではありません。
■ 3. S&P500は最高値。それでも相場全体はそれほど強くない
・S&P500 / 週間 +0.4%
・Nasdaq / +0.1%
・Russell2000 / +1.1%
・NYダウ / -0.6%
・S&P500 / 3週連続上昇
・予想PER / 約20倍
S&P500は木曜日に最高値を更新しました。
しかし、週間で見ると上昇率は0.4%程度。Nasdaqもほぼ横ばいです。
一方、Russell2000は1%以上上昇しました。
これは少し良い変化です。
大型AI株だけではなく、小型株にも資金が動いているからです。
ただしS&P500の予想PERは約20倍まで戻っています。
決して安い相場ではありません。
好材料が出れば最高値を更新する。
でも、少し悪い材料が出れば売られる。
かなり期待値の高い相場だと思います。
■ 4. CoreWeave、Super Microが急騰。AIインフラ需要はまだ強い
・CoreWeave / 一時+19%以上
・Super Micro Computer / +13%以上
・Nebius / +23%
・Dell / +5%
・CoreWeave受注残 / 1,042億ドル
・今四半期にさらに250億ドル超の新規契約
AIインフラ需要は依然として強いです。
CoreWeaveは年間売上高、営業利益、設備投資見通しを引き上げました。しかも近い将来の計算能力は、ほぼ売り切れている状態です。
ここは重要です。
「AIデータセンターは作りすぎではないか」という懸念があります。
でも少なくとも現時点では、計算能力への需要は供給を上回っています。
価格交渉力もCoreWeave側に出ています。
AI投資の勢い自体は、まだ止まっていません。
■ 5. Applied Materialsは好決算でも売られた
・売上高 / 91.2億ドル
・前年比 / +25%
・調整後EPS / 3.50ドル
・市場予想を上回る
・次四半期売上高見通し / 約102.5億ドル
・株価 / 金曜日に約5%下落
これが今のAI相場の怖いところです。
売上も良い。
利益も良い。
ガイダンスも良い。
それでも売られました。
Applied Materialsは今年すでに大きく上昇していたため、市場の期待が非常に高くなっていました。
今は「Beat & Raise」だけでは足りない場合があります。
良い決算を出すことは前提。
さらに市場の非常に高い期待まで超えなければならない。
BroadcomやIntelなど半導体株も金曜日は売られました。
AI相場は強い。
でも、期待値もかなり危険な水準まで上がっています。
■ 6. 小売売上高-0.6%、米国消費に黄色信号
・7月小売売上高 / 前月比 -0.6%
・市場予想 / +0.1%程度
・9カ月ぶりの減少
・コア小売売上高 / -0.4%
・ミシガン大学消費者態度指数 / 51.0
・市場予想 / 54.5
金曜日に相場の空気を変えたのが、小売売上高です。
前月比0.6%減。
米国経済を支えてきた消費に、少し変化が出てきました。
雇用も弱くなっている。
実質賃金も伸びにくい。
ガソリン価格は4ドルを超えている。
住宅ローン金利も高い。
株式市場が上がっていても、一般家庭の生活が楽になっているわけではありません。
ただ、これも株式市場には少し複雑です。
消費が弱い。
景気が弱くなる。
FRBは利上げしにくい。
だから金利低下にはプラス。
でも、消費が本格的に崩れれば企業利益にはマイナス。
Bad News is Good News が、Bad News is Bad Newsへ変わる境界線には注意したいです。
■ 7. 最大のリスクは再び原油。Brentは週間約+6%
・Brent原油 / 88.52ドル
・週間 / 約+6%
・WTI原油 / 82.40ドル
・週間 / 約+5.4%
・ホルムズ海峡 / タンカー攻撃が再発
・米国 / イランへの海上封鎖長期化を警告
今週最大の不安材料は、やはり原油です。
せっかくCPIとPPIが落ち着いても、原油が再び上がれば8月以降の物価に影響します。
ホルムズ海峡ではタンカーへの攻撃が再び発生。米国とイランの和平交渉にも進展がありません。
原油価格は単なるエネルギー株の話ではありません。
原油高
↓
ガソリン高
↓
輸送費上昇
↓
物価上昇
↓
FRB利上げ
↓
長期金利上昇
↓
高PER株に逆風
この流れが一番怖いです。
■ 8. 金利は短期低下、長期高止まりという少し嫌な形
・米2年債 / 4.17%前後
・米10年債 / 4.70%前後
・30年債入札利回り / 約25年ぶりの高水準
・9月FOMC据え置き確率 / 約67%
CPIとPPIを受けて短期金利は下がりました。
それなのに10年債利回りは4.7%前後。
ここが少し気になります。
市場は「FRBは当面利上げしない」と考えている。
一方で長期債市場は、財政赤字、インフレ、原油、国債供給を警戒している。
つまり、FRBが利上げしなくても、長期金利が下がるとは限らない。
AI株にとっては、ここが重要です。
10年債が5%へ向かうようなら、PERの高い銘柄は業績が良くても評価が厳しくなると思います。
■ 9. ドル円159円台、日銀9月利上げ観測も
・ドル円 / 159.37円前後
・週間 / 円は約1%下落
・DXY / 99.67
・日本7月企業物価 / 前年比 +7.2%
・日銀 / 9月利上げ観測が上昇
7月末の為替介入で156円台まで円高になりましたが、再び159円台まで戻りました。
円安の根本的な流れは、まだ変わっていません。
一方、日本の企業物価は前年比7.2%。
円安、原油高、金属価格高騰が日本企業のコストを押し上げています。
日銀が9月にも追加利上げするとの観測も強まっています。
160円を超えれば、再び為替介入への警戒が強まりそうです。
■ 10. 金は4,380ドル、Bitcoinはやや弱い
・金現物 / 約4,380ドル
・2週連続上昇
・ドル安と利上げ観測後退が追い風
・Bitcoin / 63,000ドル前後
・週初の65,000ドル前後から下落
金は再び強くなりました。
インフレ指標が落ち着き、FRB利上げ観測が後退。ドル安も追い風です。
さらに中東情勢の不透明感も残っています。
一方Bitcoinは、それほど強くありません。
金利低下期待があるのに上値が重い。
暗号資産市場では規制関連の期待後退もあり、株式市場のリスクオンに完全には乗れていません。
■ 11. ガソリン4ドル超えは、米国消費を見るうえで重要
AAAによる全米レギュラーガソリン平均は、1ガロン約4.08ドル。
1カ月前は約3.86ドル。
前年同期は約3.16ドルでした。
アメリカは車社会です。
ガソリン価格の上昇は、実質的には家計への増税と同じような効果を持ちます。
小売売上高が弱くなり始めたタイミングで、ガソリン価格が4ドルを超えている。
ここは今後の個人消費を見るうえで、かなり重要だと思います。
個人的意見
今週は一見すると良い週でした。
CPIは落ち着いた。
PPIも落ち着いた。
FRBの利上げ観測も後退した。
S&P500は史上最高値を更新した。
AIデータセンター需要も強い。
それでも私は、少し慎重です。
理由は3つです。
原油がまた上がっている。
長期金利が下がらない。
米国消費が弱くなり始めている。
この3つです。
さらにAI株は「良い決算」では上がらなくなっています。
Applied Materialsがその典型です。
AI需要は強い。
業績も良い。
それでも株価は下がる。
株価がすでに将来の成長をかなり織り込んでいるからです。
今後は「AIが成長するか」ではなく、
その成長が今の株価を正当化できるか。
ここを見る必要があります。
来週に向けて見るポイント
・FOMC議事要旨 / 8月19日 / 7月会合で3人が利上げを主張した理由
・Home Depot決算 / 住宅市場と高所得者消費
・Lowe's決算 / 高金利による住宅関連需要への影響
・Walmart決算 / 米国消費を見る最大の材料
・Target決算 / 中間所得層の消費動向
・TJX決算 / 節約志向が強まっているか
・Deere決算 / 農業、設備投資、原材料価格
・日本GDP / 日銀9月利上げの判断材料
・米住宅着工 / 高金利でも住宅供給が増えるか
・米鉱工業生産 / 製造業の強さを確認
・米10年債 / 4.7%から5%へ向かうか
・米30年債 / 5%台の定着
・原油 / Brent90ドル突破か
・ホルムズ海峡 / タンカー通航が正常化するか
・米国とイラン / 和平交渉進展の有無
・ドル円 / 再び160円を突破するか
・日銀 / 9月利上げ観測
・AI株 / Applied Materials売りが他の半導体に波及するか
・CoreWeave / 急騰後もAI需要を評価できるか
・Nvidia / 8月後半の決算に向け期待がさらに高まるか
・VIX / 14台という低水準が続くか
・AAAガソリン価格 / 4ドル台が定着するか
なお、ジャクソンホール会議は8月27〜29日です。
市場は来週後半から徐々に警戒を始めると思います。
■ 総括
今週の米国市場は、「インフレ鈍化で最高値。でも安心するにはまだ早い週」でした。
S&P500は最高値。
AI需要は強い。
CPIとPPIも良い。
ただ、
原油は上昇。
長期金利は4.7%。
小売売上高は減少。
ガソリンは4ドル超え。
良い材料と悪い材料がかなり入り混じっています。
今後もっとも注意したいのは、景気の弱さです。
雇用が少し弱い程度なら、利上げ観測が後退して株にはプラス。
消費も少し弱い程度なら、やはり金利にはプラス。
でも、それが本格的な景気減速へ変われば話は別です。
今はまだ「悪いニュースが良いニュース」です。
それがいつ「悪いニュースは本当に悪いニュース」へ変わるのか。
そして、AI企業の株価が今後の成長をどこまで織り込んでいるのか。
最高値だからこそ、私は無理に追いかける必要はないと思います。
決算を見る。
キャッシュフローを見る。
金利を見る。
原油を見る。
為替を見る。
そして、私は現金を残しておく。
相場は強いですが、強い相場ほどリスク管理が大事です。
本ブログは、投資に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の商品や取引を推奨するものではありません。
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