記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

DEKALOG デカローグ ⑨ ある孤独に関する物語

デカローグ第九話 『ある孤独に関する物語』

ネタバレありで、詳しいストーリー紹介

ハッと目を覚ますハンカ(エヴァ・ブワシュチック)。「ロメク」と、つぶやき、鏡に映る自分を見る。

同僚医師ミコワイが「何が知りたい」と聞く。「真実だ。そのために君を選んだ」と答えるロメク(ピョートル・マチャリカ)は、中年にさしかかった心臓外科医。「今までの人生で何人の女性と寝た?」と聞かれ「8 … 15人くらい」と答える。「十分だな」「結婚して10年だぞ。本当に女性とはもう寝られないのか?」「性的不能の典型的症状だよ。奥さんは?」「魅力的だ」「離婚しろよ」と言われるロメク。

ロメクは、帰りの車で、路上の何かを轢きそうになり、急ブレーキで停まる。ハンドルを叩き、顔を伏せる。横を通り過ぎる自転車の、名前のない人物(アルテュル・バルシス/デカローグに毎回登場する超自然的存在。鍵となる瞬間、主人公を観察し、手出しせず、自由に行動させる)。ロメクは車のダッシュボードが、うまく閉まらなくなっているのに気付く。

ロメクの車が帰ってくる。雨の中、なかなか戻ろうとしないロメク。玄関からハンカが出てくる。「ロメク。車の音で分かったわ」

「私に飽きたの?」「まさか」「びしょ濡れね」 部屋で、ロメクをタオルで拭き、服を脱がす妻のハンカ。

食卓。「ザグレブでの話をして」「講演して、いくつか手術に立ち会った。執刀も三回… 手術代をもらったが、帰国時にレートは半分になっていた」「疲れてるの?」「別に。ハンカ、実は … 」 ハンカは手でストップのジェスチャーをする。「今はダメ、後にして」

ベッドの二人。「さっきの話、今なら聞けるわ」「ミコワイと会った。大学の同級生。前に話したろ。精密検査の結果をはっきり言われた。もうこの先、絶対治る見込みはない」「信じない」「事実だよ」「愛してる? どうなの? 愛してると言うのが怖い? ベッドの中だけが愛じゃないわ」「それも愛だよ」「本能よ。本当の愛は心の中 … 下半身じゃない。私には今あるものが大切なの」「君はまだ若い」「平気よ」「愛人を作るだろう。まだいなければ」「もちろんいないわ。話さない方がいい事もあるわ」「ないよ」「もう私を抱けないと話してくれた。でもそれは医者の言葉。私の言葉は、ずっとあなたといる。愛してる。くっついていい?」「ああ、もちろん」「強く抱いて」

「ハンカ、眠ってる?」「いいえ」「子供を望まなかったね」「お互いに」「慰めになったかもな」「たぶんね」

ロメクは車に乗り込み、上の窓へ手を振って、出かける。前方に若いブロンドの男マリウシュ(ヤン・ヤンコフスキ)がいた。彼はロメクに気付くと、横の道へサッと隠れ、姿を消す。

大学で車を停めるロメク。「やあ、手伝いましょうか?」「悪いね、これ持っててくれ」隣の車、燃料を入れる作業を手伝うロメク。ロメクは漏斗の先を燃料口に挿入させる。

廊下を歩くロメクと担当の女性患者。「先生」「決心しなさい」「致命的なの?」「ではないが。医長は、話が分からんと言ってたな」「簡単な事なんです。つまり、この声、声楽です。母は私を有名にさせたいの。でも歌うには心臓が弱すぎる。強引な母で」「得意な歌は?」「バッハ、マーラー、ヴァン・デン・ブーデンマイヤーを知ってます?」「知らんな」「難しい曲なの。母は彼の曲を望むけど、手術せず歌うのはムリ。外科部長かあなたに執刀を頼みたいって」「君の希望は?」「生きたいだけ。歌を捨ててもいい。怖いの。だから危険な手術じゃないと言って、安心させてほしい」「簡単じゃない。この手術は他の治療法がない場合だけ行うようなものだ」「私の場合は、あるんでしょ?」「素直に言おう。ある」「母との考え方が違うの。母は全てを望む。私なんか、これだけよ」と、彼女は、指を少しだけ開いて見せる。

部屋でレコードの歌声を聞くロメク。電話の呼び出し音。出ると、男の声。「ハンカはいます?」「いません」「伝言は?」「またかけます」 ハンカが帰ってくる。「誰の曲?」「ヴァン・デン・ブーデンマイヤー。美しいだろ」「とても。前にも聴いたわ」「電話があったよ」「買ってきたの、着てみて」とジャケットを渡すハンカ。電話の呼び出し。「君だ」「ハロー」「やっと捕まった。会いたかったのに、4時に来なかったね」「そうね」
となりの部屋へ行く妻。
「行くわ … その方が … 分かったわ … もちろんよ」 妻の声を聞く、ロメク。

小さな電池やコードをハンダ付けするロメク。イヤホンをすると、電話の音が盗聴できる。「ハロー。ママ」「あれをいつ送ってくれるの」「木曜か土曜」「私の家にあるショールと黒い傘も頼むよ」「分かったわ」

ロメクの診察室。「入って。先日偶然に、きみと話した後、レコードを買った」「ヴァン・デン・ブーデンマイヤー?」「素晴らしかった」「どんな曲?」ロメクが少し歌うと、彼女は、その歌を、特殊なハンドサインを出しながら、美しい旋律を歌ってみせる。「美しい。歌い続ければ?」「母と同じこと言うのね」「当然だよ」「若い時の先生の夢は?」「外科医になる事」「家庭や子供は考えませんでした?」 ロメクは首を振る「一度も」

車を出すロメク。バックさせると、ダッシュボードが開き、ノートが置いてあった。マリウシュ・ザヴィツキ物理学科3年。車を停め、ゴミ箱へノートを捨てるロメク。その後、老婆がバケツでゴミを捨てにくる。思い直し、汚れたノートを拾い上げ、またダッシュボードへ入れる。

帰宅するロメク。ハンカは寝ていた。妻のバッグを調べるロメク。メモ、11-23-45、という電話番号が気になる。

自転車に乗るロメク。急に、土手から川へ自転車で突っ込む。

ハンカの務める KLM(航空会社)店へ入ろうとして、引き返すハンカ。「忘れてた。ママにショールと傘を送るよう頼まれてたの」「向こうで買えるだろ」「自分のが良いのよ」「手術は午後だ。届けるよ」「ありがとう」「アパートの鍵を」「傘は帽子掛けの所。ショールは寝室のタンスの中」「分かった」

ハンカから預かったアパートのキーの合鍵を作るロメク。

アパートで、あのノートを発見する。

ハンカはマリウシュへ電話する「もう家に電話しないで」「どうしたの」「別に。するならココ(KLMのショップ)に」「6時までだね」「火曜と木曜は8時よ」「了解。アパートには行った? 愛してると書いたハガキを出した」「ハガキ?」「法王の写真付きだよ」「いつ?」「デートの後。見た?」「いいえ」

アパート。ロメクがマリウシュに電話をかける。「もしもし」と出るが、しかし、すぐに切る。電話がかかってくる。ロメクが取ると、ハンカの声「私よ、いたのね」「ああ」「話中だったわ」「今来たばかりだよ」「引っ掻き回さないで、嫌がるから」

ロメクは、ポストに来ていた「ローマ法王のハガキ」を見る。

ロメクが傘とショールを持って、KLM(航空会社)のショップへ来る。「良かった。まだ間に合う。6時に終わる」「車を使えよ」「あなたは?」「時間があるんだ」「そう、迎えに行く。9時には終わる。いい?」「ああ」「郵便来てなかった?」「電話で言ってくれれば見たのに」「思いつかなかった」「じゃあ」

アパートの、灯りのついた窓を見上げるロメク。

部屋ではハンカとマリウシュが浮気をしていた。

ピョートル・マチャリカ Piotr Machalica

ドアの前の階段に身を隠すロメク。ドアが開き、マリウシュが出てくるのを確認するロメク。ドアに近づくが、音がして離れる。ハンカがドアから出てきて、鍵を閉める。

ハンカは車に乗り、ライトを点滅させ、クラクションを何度も鳴らす。

エヴァ・ブワシュチック Ewa Błaszczyk

「眠れない。なあ、物理は得意だろ。この法則。液体中の物体の質量は、この続きは?」「軽くなる。物体が押しのける液体の重さに等しい。でしょ?」「やっぱり」「嫌な事でもあったの? 手術で?」「ああ」「死んだの?」「やめてくれ。触るな!」「ごめんなさい」

テレビをつけてから、電話をするハンカ。ロメクは盗聴する。「私よ。会いたいの」「この一週間断ってたのに?」「今は違う」「嬉しいよ」「木曜はどう?」「いつでも」「木曜の6時に」「どうしたの?」「6時よ」

アパート。ハンカは来たばかりのマリウシュに言う。「脱がないで、急いでるの」「寂しかった」「やめて」「分かった」「お別れよ。今日で最後。それを言うために会ったのよ」「ハンカ」「帰って」「話すだけだ。追い出さないで」「ええ。でも帰って」「愛してる。話し合おう」「その気はないわ」「バレたの?」「夫の話はしないで。気づくはずないわ。さぁ帰ってちょうだい。今すぐ帰って」 出ていくマリウシュ。

ハンカはクローゼットに隠れていた夫ロメクに気づく。「出てきて。外に出てよ! 何故こんな事を? どうして? セックスを見るため? 一週間前なら見られたのに残念ね」「いたよ。階段で盗み聞きしてた」 ドアのブザー音。「開けろよ」「君が望むなら結婚しよう」と言うマリウシュ。「離婚が成立して…」 マリウシュを追い出し、ドアを閉めるハンカ。

いなくなっているロメク。ハンカが探すと、彼はバスルームにいて落ち込んでいた。ハンカは彼を抱きしめる。「抱きしめて。抱いて」「できない」「抱きしめてったら。お願いよ。私を捨てないでしょ。ただの浮気なんだから。分からなかった。こんなにあなたを苦しめるなんて」「僕には嫉妬したり、要求する権利などない」「あるわよ。あなたにはあるの。全てを話すべきなのね。これからはもう二度と嘘はつかないわ」「合鍵を作った」「もう必要ないわよ」「言ってたわね。養子をとりましょう」「お互い、少し離れよう」「そうね。休暇を取れば? 養子のことは調べとくわ」「君が休め」「分かったわ」

スキーの店。ハンカにスキー板を選ぶロメク。

KLM(航空会社)のショップにマリウシュが現れ「メルボルンまで。いくらですか?」とハンカに言う。「帰って」「いくらなのか知りたいだけだよ」「ヤヌッシュ、この者が代わってお聞きします」「何でしょう?」

スキーへ向かうハンカ。駅で見送るロメク。「女の子の方が簡単だって。いい弁護士だし、口は堅そうよ」「待つ期間は?」「女の子なら数ヶ月なの。不妊の証明も必要」「もらうよ」「ロメク、本気で養子を?」「ああ」「毎日電話してほしい?」「いいよ」「私を信じて」電車が発車する。

ロメクの診察室。「元気かい?」「嫌いよ」「承知しただろ」「イヤイヤね」「何があったの?」「ただ、生まれ変わっただけ。歌うわ。みんなの前で歌いたいの」

キッチンで、牛乳を鍋に入れるロメク。窓から外を見る。地上の、人形で遊ぶ女の子を見て、微笑む。電話の呼び出し音。無言電話だった。

車を停めるロメクは、偶然に、スキー板を積んだ車に乗り込むマリウシュを見る。慌てて、マリウシュの家に友人だと言って電話をかけると、母親はマリウシュはスキーへ行ったと言う。彼女の後を追ったとわかり、悲嘆に暮れるロメク。

ハンカはスキー場で追いかけて来たマリウシュに会い、驚く。胸騒ぎがして、ハンカは急いで、病院へ電話する。「家内です。主人は?」「お休みです。先ほどお電話がありました」「また電話があったら伝えて。すぐにワルシャワに帰るからと。今夜着くわ」「分かりました。伝えます」 入れ違いでロメクに電話は繋がらず、ハンカはバスに乗り込む。

ロメクは自転車で出かける。名前のない人物の自転車を追い抜くロメク。涙を流しながら、工事中の道路を全速力で突進し、道の無いつきあたりから転落するロメク。

夜。帰宅したハンカは、電話の上に置いてあった、置手紙を見つける。

病室。ナースがロメクのベッドへ近づく。「聞こえますか? もうチェックアウトしていて、今朝発ったそうです」「32-56-36 に電話をかけてくれ」

手紙を読んで、泣くハンカ。電話がかかってくる。「ハンカ」「良かった!生きてたのね」「ああ」

ヴァン・デン・ブーデンマイヤーの曲で、女性の美しい歌が流れる。

邦題:デカローグ、原題:Dekalog、英題:The Decalogue

監督・脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ

脚本:クシシュトフ・ピエシェヴィッチ

音楽:ズビグニエフ・プレイスネル

製作:1989年〜1990年

第九話撮影監督:ピョートル・ソボチンスキ

ポーランドのテレビドラマ・シリーズ。1時間 X 全10話構成。聖書の十戒をモチーフにしている。ポーランドに住む人々が直面する道徳的・倫理的問題が各話で扱われる。各話は独立しているが、大半がワルシャワの公営団地の住人という設定で、人物の何人かはお互いに知り合い。キャストの多くは有名・無名の俳優で、多くが他のキェシロフスキの作品に出演している。それぞれのタイトルは数字で表された。ロジャー・イーバートの解説によると、キェシロフスキは「十戒に正確に即しているわけではなく、十戒に言及したことはない」とされている。

いいなと思ったら応援しよう!

takacova よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!

この記事が参加している募集